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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    無題

    梨本Pの「死にたがり」があまりに好きすぎて、勢い余って小話を書いてみた。
    愛が暴走した結果です、はい。
    わたしのぶんそうだからアレだが、しかしものすごい尊敬をこめて捧げます!


    この「死にたがり」。
    すっごいなんか、ちくしょぉおってなるけど潔い曲です。


    聴いたことがない人はぜひとも聞いてみてください。
    なにかの宣伝のようだが(笑)

    たたんでおきまーす。





    「死にたがり」

    目の前の白い顔が笑った。
    にぃ、とつり上がった口の端。
    醜悪な顔で笑うそれは、しかし目は笑っていない。

    「死んでもいーよ?死にたいんでしょ」

    「構ってほしがり、死にたがり。死にたいんなら死んだらいいよ」

    「死にたいんでしょ?なんでまだ生きてんの」

    くすくす、くすくす。
    目の前のそれは笑い声を上げて、怨念のような言葉を吐き続ける。

    反論する言葉なんてない。
    だってその通りだ。
    あたしは弱虫、死にたがり。
    そのくせ死ぬ勇気すら持ってないんだ、その事実に――絶望するよ。

    「絶望したって結局生きるんでしょ?這いつくばってさ」

    「どうせみじめなんだ、どっちに転んだって」

    「わざわざ御苦労サマ、不幸を気取るのも大変だね?」

    囁く声は、悪意に満ちている。

    あぁ、そうだよ。
    生きてしまうんだよ、どんなに不幸を嘆いたってさぁ。
    生き続けてしまうんだよ、今日も明日も明後日も。
    醜い嘘を吐き続けて、叫び続けて。
    ――生きて、しまうんだよ。

    「ほら、はやくしなよ」

    はっとして顔を上げると、いつの間にか足下には深く暗い穴がぽっかりと口を開けていた。
    ひゅるひゅると吹き上げる風、恐ろしくそこが深いんだと知れる。
    ここから落ちたら――考えるまでもない。

    「死んでもいいよ」

    にっこりと。
    すがすがしいほどの笑顔で、それは笑った。
    あたしと同じ顔をして。
    虚ろな黒い瞳、それが歪んで、淀んで。

    「死にたがり。死んでも、いいよ?」
    「…っ」

    その言葉に、喉が震えた。
    それでも容赦なく、『あたし』の声は鼓膜を刺す。

    「つべこべ言わないでさぁ。生きるか死ぬのかさっさと決めたら?」

    死にたがり、死にたがり。
    あたしはそうだ、死にたがり。
    ねぇ、だけど。
    だけど、本当は――。

    「…い、やだ、」

    呟いた声は、みっともないくらいに弱くて。
    気づいたら顔をぐしゃぐしゃにして、泣いていた。

    「いや、だ…いやだ、死にたく…死にたく、ないよ」

    死にたがり、生きたがり。
    ほんとうは、そうだあたしは生きたかったんだ。
    足掻いてもがいて、それでも必死に生きていたかったんだ。

    「ごめ…ごめん、ごめんね…でも、あたし、まだっ……」
    「――知ってるよ」

    不機嫌そうな、声が呟く。
    振り返れば、それはあたしを見つめたまま。
    小さく、わらった。

    「知ってるよ、それくらい」
    「え…」
    「死にたい死にたいって叫び続けて、その裏で必死に生きたい生きたいって喚いてるの。それくらい…あんたのことくらい、知ってるよ」

    足下の穴は消えていた。
    思わずその場に崩れ落ちて、喉を突きあげたのは激しい慟哭。

    何がしたいのかも、どうしたらいいのかも分からないよ。
    分からないけど、それでも生きるよ。
    叫んでみっともないくらい両手振り回して、そうやって生きるさ。

    「せいぜい生き延びなよ。これでよかったって胸張れるくらいにさ」

    『あたし』は、そう言って。
    哀しそうに嬉しそうに、笑う。
    ひらりと背を向けて、高らかにうたった。

    「じゃあね――生きたがり」

    生きたがり、生きたがり。
    あたしはただの生きたがり。
    弱いままで、ちっぽけなままで、惨めなままで。
    それでも生きるさ、生きてやるさ。
    この足だけで、立って走って。

    せいぜい――生き延びて、やるよ。

    泣きながら笑った顔。
    絶望しながらそれでも希望を祈って、願って。

    前に、進むよ。



    (梨本P 「死にたがり」)
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    1990/10/10
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    学生。
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    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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