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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    04 待つことを選びとった細腕。

    ※捧げもの。
    椎さんとこの、楚夜と藍。

     


    「…鳥海君?」
    「上田さん」

    オレンジ色の光を浴びながらも、少しずつ仄暗くなりはじめた廊下。
    見知った顔が振り返る。
    四角い眼鏡越しに私を見て、彼は穏やかに笑った。

    「どうしたの、上田さん。もう遅いよ」
    「…鳥海君こそ。それに私、上田じゃないってば」

    お決まりのやりとり。
    だけど今日はそれに、少しの違和感。
    いつもうるさいくらいに溌剌としている彼が、なんだか今日は落ち込んでいるように感じた。

    私の気のせいかもしれないけど。
    そもそも私は、他人に踏み込むのが得意じゃない。
    だから相手の繊細な心情に気付けるスキルに長けてるとも思えないし。

    これが、と夢想する。
    これが、桃花さんだったら。
    あの柔らかな春のような笑顔で、頑なな心も、不安も拭いさることが出来るのだろうけれど。
    生憎私には、そんな甘やかな笑顔は浮かべられない。

    「…上田さん?」

    俯いた私を気遣うように、鳥海君がこちらに向かって歩いてくる。
    どうして君は、こんな時にまで私を気にかけるんだろうね。
    分からなくて、すこし笑う。

    「どうしたの」
    「なんでも、ないよ」

    廊下にのびる影。
    世界は、ゆるゆると落ちていく。

    不意に、彼が手を伸ばした。
    一瞬身構えた私の頭に、その手がぽん、と当たり前のようにのる。

    「え、」

    くしゃくしゃと。
    かき乱されて撫でられて、来たときと同じようにその手は唐突に離れていった。
    意味が分からず見上げると、彼はこぼすような笑みを灯して。

    「…大丈夫だよ」

    そう、言った。
    私が見たかった、屈託のない明るい笑顔で。

    「上田さんにそんな顔されたら、迷ってなんかいられないしね」
    「…私?迷う?」
    「そ」

    くるり、と背を向けられた。
    私を見ないままひらひら手を振って、彼は廊下を歩きだす。

    「鳥海君、」
    「また明日ね、上田さん」

    何が何だか分からない。
    追いかけようかと足を踏みだしたけど、なんだか違う気がしてすぐにやめた。
    ゆっくり遠くなる、背中を見つめる。

    私はこの人のことを、何も知らない。
    この人が何を抱えて笑うのか、何の為に歩いているのか。
    分からないけれど、それでも。

    「…また、明日」

    待っていることくらいは、できるよ。
    ここで、君を。
    そうしてまた明日、おはようと言うことくらいなら。
    私にも、できるよ。

    「ねぇ、おれさ」

    急に振り返って、鳥海君はにっこりと笑う。

    「全然柄じゃないけど。でも、上田さんが居るから」
    「…えーと、」
    「だから――行ってきます」

    そう言って。
    今度こそ振り返らないで、彼の姿が遠ざかる。

    「…行ってらっしゃい」

    呟いて、窓の外に目を向けた。
    いつの間にか暗くなっていた世界。
    雲ひとつない藍色の空に、月が浮かぶ。

    明日また、ここで。
    なんでもない日常をひとつ、重ねよう。

    (戦う人よ、君を待つ)

     

    椎さんが月曜日に何やら頑張ってくるようなので。
    せめてものエールに椎さん家のふたりを書いてみた。

    藍と楚夜だけを書いたのって実は初めてだよ…!
    こんな雰囲気でよいのかどうか激しく不安です。
    でも淡々とした感じがとても楽しかったです。

    椎さんのみお持ちかえり可です!
    あ、でもいつでも返品は受け付けてます、はい。
     

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    集う、春のうた。

    ※仮想世界に捧げもの。
    次男と少年。
    詳しくは椎さん宅でチェック!



    食事は、イキモノを食べることに等しい。
    イキモノ、生きていた、モノ。
    それが死んで、殺されて、食卓に並ぶ。
     
    「――っ」
     
    食えない、と思ってしまったのはどうしてか。
    一度そう思ってしまったら、今まで普通に食べられていた肉が、突然恐ろしいものに変わった。
    色彩を奪い、世界をぐらぐらと揺らして。
    俺を、人を殺すことを生業とする俺を、苛む。
     
    これは、イキモノだった、もの。
    それが、死んで――ころされ、て。
    食べ物とか、そういう話じゃない。
     
    俺は、イキモノを、食っている。
    そうして、俺が昨日殺したのは――。
     
     
     
    「…ねぇ、」
    「…んだよ」
     
    いつもの朝。
    相変わらず、能天気な声。
    けれどその声に、少しだけ現実を思い出す。
     
    「おはよー」
    「…あぁ、」
     
    小さく返す。
    ようやく「ひと」に見えるようになり始めた顔を、少しだけ横目で確かめながら。
    感じたのが安堵だなんて、気付かないフリで見逃した。
     
    「…どうしたの?」
     
    普段ならば、うすらぼけた笑顔で勝手に喋っていくくせに、今日ばかりは勝手が違って。
    奴は俺の顔を覗き込むように見つめて、首をかしげた。
    その様子は弟がやる仕草に少しだけ似ていて、だから油断したのかもしれない。
     
    「…なんか、おかしいか」
    「うん」
     
    縋るように問うてしまったのは、計算外。
    そして、あっさりと返されたのも、予想外だった。
    笑顔を引っ込めたまま、奴はじっと俺を見つめる。
     
    「顔色が悪いね。それに少し、痩せた?」
    「…寝てねーから」
    「そっか」
     
    寝てないのは、本当。
    だけどそれ以外にも、ロクに食事を取っていないのも、原因。
    分かっちゃいたけど、どうしようもなくて足掻きようもない。
    自分の神経がこんなにも細かったなんて、と自嘲がもれる。
     
    「…君さ」
    「あん?」
     
    振り返る。
    奴は少しだけ、笑う。
     
    「結構無茶するタイプだよね」
    「…うっせーよ」
    「でもたまには、休憩しなきゃ」
    「!?」
     
    そう言って、いきなり放り投げられたのはいわゆるゼリータイプの携帯食糧。
    買ってから時間がたつのだろう、少しぬるくなっている。
     
    「…なに、」
    「あげるよ。それ飲んで、ちょっと栄養つけなよ」
    「おい、」
    「それじゃ、僕行くね」
     
    返事も待たずに向けられた背中。
    黄緑の髪が遠くなる。
    一瞬迷ったけれど、追いかけるのも億劫だ。
    諦めて、もらったばかりのゼリーのキャップをひねる。
     
    「…あま、」
     
    舌に広がる、人工的な甘さ。
    これは、イキモノとは無縁だ。
    疲れきった胃に、ゆるゆると落ちていくのが分かる。
     
    小さく息を吸って、吐いて。
    それから、ようやく目を伏せる。
     
    開いた時、もしかしたら世界は少しだけ色を取り戻しているのかもしれない。

    (春の邂逅)




    椎さんのとこで新しく出てきた男の子に、思わずときめいて勢いだけで書き上げました。
    快く受け取ってくれるということなので、椎さんのみお持ちかえり可です!

    昨日はミーティングでいっぱいネタが出ました。
    ので、書くぞー!
    夏休みの宿題ですからねっ

    皆さん是非椎さんのとこに行ってチェックするべきだと思うんだ、うん←

    葬送の音を。

    相互リンク記念に椎さんトコの三兄弟を書かせていただきました!
    彼らのビジュアルは椎さんのサイトに行ってチェックするべきです(笑)
    捏造万歳、なんかいろいろ趣味はいりまくりですが、どうぞ!



    例えば命を燃やすようなスリル、とか。
    或いは背骨がぞくぞくするような快感は、そう滅多に味わえるものじゃない。

    だから、そう俺たちは。
    まるで削るように焦がすように、存在を刹那だけに宿して。
    世界でたった三人きりの、兄弟。
    それは最強の味方で、最強の好敵手にだってなるから。

    今日も響くは彼らの奏でる『音』。



    ギン、と耳につく音とともに、一閃。
    彼が刀を抜いた瞬間、腰まである長い髪が合わせて舞った。

    「っぶねー…」
    「…遅いな」

    そう言って長男は刀をしまう。
    三兄弟のまとめ役である長男は、咄嗟にそれを受け止めた弟に小さく微笑みかける。
    貴公子めいた美貌、けれどそれに騙されてやるほど彼の弟は疎くない。
    それを見て、ふる、と次男の肩が震えた。

    「遅いな、じゃねーだろっ!?なんだよいきなりっ」

    肩ほどまでの髪を払いのけ、いきり立つ。
    それを見て可笑しげに兄は笑い、ぐしゃぐしゃと弟の髪をかき交ぜた。
    怒ったように彼はそれをも払おうとするが、すぐに思いとどまって手を下ろす。
    笑顔一つで騙されてやるほど疎くはないが、どうしたってこの手には弱いのだ。
    それも自覚済みだから、彼は膨れるしかなく。
    その横顔は、幼い時から変わっていないと兄は想う。

    たとえこんな世界に居ても、それだけは。
    彼らが兄弟であることだけは変わらないのだと。
    それは誇りで、自信で、愛情だと自負している。

    背後で軽い足音が響いた。

    「兄さんにーさん、なーに楽しそうなことしてんんだよっ」
    「おわっ」
    「あぁ、お帰り」

    駆け寄ってきたのは、二人の弟。
    こちらは髪も短く、少しばかり幼げな印象を与える。
    眼鏡の奥、好奇心旺盛そうに瞬いた瞳。
    それに向かって、長兄は肩を軽くすくめた。

    「いや、コイツがぼんやりしてるからちょっと気を引き締めてやろうかと…」
    「気を引き締めるとかじゃなくて、一歩間違ってたら死んでるから!」

    気つけにしてはかなり重い一撃。
    自分か弟でなかったら確実に死んでいた――もちろん、兄が自分たち以外にこんなことをするはずはないのだけれど。

    「…(あぁ、違うか)」

    そこで、ふと彼は笑う。
    自分たち以外にも、兄が刀を向ける相手が居たことに思い至る。
    だって、自分たちの生業は――。

    「にーさん?」
    「ん?あぁ悪い、なんだ?」

    弟の声に微笑んで、すぐに弟が手にしている見なれたノートパソコンに目が行った。
    それを察したらしい、弟がにっこりと笑う。

    先ほどまでの無邪気さを潜めた、狡猾そうな瞳。
    もしかしたら、いちばん凶悪なのはこいつかもしれないと兄らは考える。

    二人の、弟。
    一見しただけでは人好きのする青年にしか見えないというのに。
    丁寧に丁寧に張り巡らせた罠に、相手がいつ落ちるかを狙う。
    そんな強かさを少年めいた顔の下に隠しているのだから末恐ろしい。

    今だって、ほら。
    にこやかにノートパソコンをこちらに向けて、お伺いを立てるように首をかしげている。
    くるりくるりと自身の刀をもてあそびながら、長兄が画面を覗き込んだ。

    「…今回は?」
    「八人」
    「武器は?」
    「とりあえず銃は人数分あるみたいだよ。あと、この背の高い方の人は空手の有段者」

    画面に映るのは、相手の詳細なデータ。
    読み解くうちに、兄らの目が細くなる。

    「…難易度は?」
    「Bかな?ま、人数少ないからね」
    「ふーん…で、今回の仕事は?」

    問うと、末弟はそれは綺麗に笑って。
    そうして高らかに声をあげる。

    「――八人の殺害、及び証拠の隠滅」

    …望んだものは、何もかも。
    消し去ってくれる掃除屋が存在するという。

    「彼らがこの世に居た証明を、消去せよ…だってさ」

    情報、人、物。
    それが何であるかは問わない。

    「「了解」」

    素性は一切不明の、恐ろしいくらいに正確無比な殺し屋たち。
    残酷で冷酷でうつくしい、殺し屋。
    それが――彼らだ。

    「正面はだめ、封鎖されてる」

    手早くノートパソコンを操り、三男が指示を出す。
    膨大な知識の詰まった彼の頭脳は、的確な侵入経路や所要時間などを割り出していく。
    もちろん、セキュリティの解除も抜かりない。

    「兄さんは東側のドアから」
    「分かった」
    「にーさんは屋上ね」
    「ん、りょーかい」
    「俺は西から侵入しようかな」

    目処がたったらしく、三男がパソコンを閉じる。
    それを合図に、兄らが立ち上がった。
    どこか楽しそうに口の端を上げて、鼻歌でも歌うように。

    その様子はあまりに不釣り合いすぎて、とても殺し屋には見えない。

    「終わったら連絡しろ」
    「はーい」
    「分かってる」
    「…それじゃ、」

    中央で合わせたのはそれぞれの武器。
    拳の代りに自分の生命線をかざして、互いの幸運を祈る。
    何よりもそれは雄弁で、三人は一瞬、触れ合わせた武器を下ろすことを躊躇う。

    「…無事で」
    「もちろん」
    「危なくなったら呼べよ」
    「そっちこそ」

    武器を下ろして、笑い合って。
    そして――強く、地面を蹴った。

    (燃やせ焦がせ、打ち鳴らせ)

    (命を想いを、鐘の音すらも)




    あわわわわなんか色々間違ってる気が…!!
    でも書いてるのすごい楽しかったです、ありがとう。

    椎さんのみお持ちかえり可です。
    返品はいつでも受け付けてますんで…!!

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    HN:
    祈月 凜。
    年齢:
    33
    性別:
    女性
    誕生日:
    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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