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※彼と彼女。
滑り込みアウトな彼の誕生日祝い。
「じゃーんっ!!」
『今すぐうち来て』のメールに従って、彼女の部屋のドアを開けて。
奥から飛び出してきたのは、満面の笑みの恋人だ。
ただしその恰好は、良く知ってるのに違和感を覚えるもので。
「…それ、どうしたの」
沈んだモスグリーンのジャケット、同じ色の膝丈タイトスカート。
中は白のワイシャツで、ご丁寧に黒のタイツまではいて――これは、軍服?
僕の疑問を悟ってか、彼女はそれはもうにこやかに答える。
「氷雨ちゃんに借りましたーっ」
「あぁ…どうりで見覚えが…」
背中で弧を描く、チョコレート色の髪をした彼女の顔を思い出す。
今は夏服だから、必要のない冬服をあっさりと貸し出したんだろうな…それで良いのか軍人。
ちょっと僕はこの街の未来が心配ですよ、と。
「どうどう?可愛い?」
彼女はにっこりと笑って、一回転をしてみせる。
パリッとした印象の軍服は、なかなかに新鮮でちょっと良い。
…けど、なんで、この日に、この服?
「…ねぇハニー」
「はいダーリン?」
「今日は僕の誕生日ですよね」
「そうですねあたしの愛しい彼氏の誕生日ですねおめでとう!」
「うんありがとう。…その日に、なんで軍服?」
敢えて軍服をチョイスする意味が分からないよ、ハニー。
まぁ誕生日に何を着るべきかなんて、イマイチよく分からないけれど。
でも軍服ってどうなの…逮捕でもされるんだろうか僕は。
「えー、だってコスプレ好きでしょ?」
「ちょっと、止めてよ人を変態みたいに言うの」
「え、でも好きでしょ?メイド服とか」
「………(君が着るから、とかそういう情緒をどうして理解してくれないのかなこの子は)否定はしないけど」
じゃあ良いじゃない、と彼女は屈託なく笑う。
その笑顔はとても可愛いけれど、教育が間違ってる気がするのはなんでかな。
「あ、大丈夫だよちゃんとケーキもプレゼントも用意してあるから!」
「あぁうん…そう、嬉しいよありがとう」
「ふふー♪」
…まぁ、彼女が楽しそうだから、良いけど。
ご機嫌な君に連れられて通されたリビングには、ささやかな飾りが施されていて。
テーブルの上には、小さなケーキとシャンパンも用意されている。
「ケーキはねー、甘さ控えめのチョコレートケーキにしてみました」
「良いの?君は甘いヤツの方が好きなのに」
「んー?だって今日の主役はきみだもの」
どうぞ、と示された椅子。
座ると、君がシャンパンを注いでくれる。
華奢なフルートグラス。
キラキラと泡が揺らめいて、星屑のように消える。
「…一応、未成年なんだけどね」
「いまさら気にする?」
「いや、全く。…っていうか、そっちこそ軍服のくせに」
軍人(恰好だけだけど)が酒勧めて良いものなのか。
意地悪く問えば、けれど彼女はそれすら予想していたらしい。
つんと澄ました顔で笑ってみせる。
「ほら、タブーって燃えない?」
「どこで覚えてきたのそんな台詞…」
「さぁね?ほらほら、諦めて早く降参すると良いよっ」
降参って何に。
ツッコミどころは多々あれど、可愛いから良しとしましょう。
…まぁ、でも。
最初からこちらは降伏してるようなもの、僕に勝ち目なんてない。
彼女が軍人なら、捕まるのも一興、なんて思うあたり相当僕だってやられてる。
「…はいはい、降参です。手錠でもなんでも、好きにしてください」
「逮捕しちゃうぞー、ってなんかあったよねー」
言いながら僕の手首を捕らえた君を、捕まえるのはもう少し先。
(ハッピーバースデイ ディア サラマンダー!!)
はい、間違いなく間に合ってない誕生祝い。
お話の中で彼女が一回もまともにお祝いをしていないっていうww
ぐだぐだな二人が好きです、すみません。
誕生日だしちょっとくらい甘いの書こうかなぁ、と思ったけどなんか違った。
っていうか「コスプレ好きでしょ?」のくだりが書きたかっただけ(笑)
あとちょいちょいカノジョが登場するのは御愛嬌。
こういうの好きなんですよ…!
このネタを仮想世界で拾いたいと目論んでます(笑)
なにはともあれ、おめでとうでした。