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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    甘い気持ちにリボンをかけて!

    ※仮想世界。
    今が何日かってことは忘れてくださいお願いします←



    とろりとろけるチョコレート。
    甘い香りを振りまいて、君への想いを閉じ込めよう。
    さぁさ召しませ、あいのうた。


    「そ、楚夜さーん…!助けてー!」
    「氷雨さんなんでそんな無茶な角度…!?」

    「うーんと、風姫ちゃん。チョコレートはそこまで細かく砕かなくてもいいと思うわ?」
    「そうなの!?」

    日頃はたいそう殺風景な風姫のマンションは、今日は珍しい華やかさに満ちていた。
    明日のバレンタインのために、みんなで集まってお菓子を作っているのだ。

    「こんな感じで良いかなぁ」
    「うんうん、上出来」

    細かく刻んだチョコレートをボウルに移した。
    それぞれ好みが違うため、ボウルの中身も少しずつ色合いが異なっているのがなんだか楽しい。
    にっこり笑って、風姫が振り返った。

    「蒼さーん、チョコ刻んだ!」

    そう、呼ばれたのは――蒼だ。
    この男子禁制(であるはずの)集まりに、なんの違和感もなく混じっているところが恐ろしい。

    「じゃあ湯せんで溶かすから…やけどはするなよ」
    「はーい」

    てきぱきと指示を与え、おぼつかない手つきの氷雨には丁寧にレクチャーまでしている。
    ナチュラルすぎて怖いよ、と弟である青が見たら間違いなくツッコミを入れるところだろう。

    「溶けたか?」
    「こんなもんで良いの?」
    「十分。そのまま湯せんにかけといて良い」

    どうして蒼がここに参加する羽目になったのか、というちょっとしたエピソードがあったりなかったりするのだけれど、今日の蒼は彼女らの先生として招かれている。
    蒼自身、甘党でそれなりの頻度でお菓子を作ってしまう、という腕前の持ち主。
    そのため、女子だけでは少々不安な今回の計画に、半ば強制的に引っ張り出されたのだ。


    そして肝心の彼女たちの腕前は、というと。

    年頃の女の子らしく、楚夜は問題なさそうだ。
    お菓子作りの基本的な考え方は身に付いているし、細やかな性格も幸いしている。
    彼女らしいと納得するくらいに、作り方は丁寧だ。


    桃花もそれなりに数はこなしているらしい。
    双子みたいな妹と一緒に、こういったイベント事の時には店先でクッキーやチョコレートを配っているのだと言っていただけあって、手際も良い。
    ただ本人も量産型の方が得意だとこぼしていた通り、少量ずつのレシピはまどろっこしい、らしい。


    風姫はさすがに有名校に通う優等生だけあって、包丁の使い方や『家庭科で習う一般的なこと』はほぼ完璧。
    しかし絶対的な経験値が足りないよう。
    料理をする上でのカンがまだまだ身についていないのだろう。


    まぁつまるところ問題は一人だ。
    さっきから氷雨は困ったような顔のままだ。
    本人いわく「なんかもういろいろスキルが足りなさすぎる」というだけあって、彼女の手つきはものすごく危なっかしい。

    「…氷雨ちゃん、大丈夫?」
    「えぇ…」

    そんな彼女には当然蒼がほぼつきっきりで教えたので、まぁなんとか形にはなりそうだ。
    ………おそらくは。

    「桃花、もっと力入れないと泡立たない」
    「うぅ…明日はきっと筋肉痛ね」
    「楚夜も。ちょっと貸してみろ」

    メレンゲを作ったり、生地を混ぜ合わせるのはけっこうな重労働だ。
    ハンドミキサーを持ってきてやればよかったな、と蒼は考える。
    見るからに筋肉の少なそうな、ほっそりとした腕を見やって申し訳なさそうな面持ちをした。


    「…ねぇ氷雨ちゃん。適量って何グラムだろう…?」
    「グラムって言うか…ちょこっとで良いんじゃないでしょうか…」
    「少々、とか適量、とかって困るからやめてほしいよねぇ」

    そんなことを話しながらも、おおよそは完成したらしい。
    あとは型に流し込んで、オーブンに入れるだけだ。
    氷雨が覗き込んで、不安そうな顔をする。

    「上手く焼けますかねぇ…」
    「大丈夫だよ、氷雨さん頑張ってたもの」

    楚夜に微笑まれて、氷雨もようやくほっと笑みをこぼす。
    なんとなく照れくさそうな顔をして笑いあったふたりの間に、チョコレートのうんと甘い香りが割り込んだ。
    振り返ると、桃花がマシュマロの袋を片手ににっこりと笑った。

    「氷雨ちゃん楚夜ちゃん、余ったチョコでチョコフォンデュしようよって、風姫ちゃんが」
    「チョコフォンデュ?」
    「良いですね、おいしそう」

    とびきり甘く、優しいにおい。
    こんなに頑張ったご褒美に、贅沢なおやつタイムも良いだろう。
    ダイエット、と囁く自分に目をつぶる。

    「みんなー、はやくはやくっ!チョコ溶けたよー」
    「はーいっ」

    ――この幸福な気持ちで、魔法をかけよう。

    (聖戦を前に!)



    ガッツリバレンタインなんて過ぎ去ってますが何か問題が?(開き直った)
    …あ、嘘ですすみません、予想外に遅くなりすぎて自分でもびっくりです。

    今回の見どころはナチュラルに混じる長男です。
    それを知った男どもにうらやましいようななんか微妙な感情を抱かれればいいよ!(えー)

    特に明記しなかった気もしますが、彼女らが作ってるのはチョコレートケーキです。
    ガトーショコラ的な?
    凜さんは当然作ったことがないのでよく分かりませんが(笑)

    なにはともあれ、はっぴーバレンタイン!
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    この身だけで、

    ※仮想世界。
    みんなで特訓いたしましょう。



    「どーしたの?ひーちゃん。浮かない顔だね」
    「藍さん…」

    鳥海家に遊びに来ていた氷雨が、なんだか憂鬱そうな顔をしているのが気になって。
    藍が小首をかしげると、彼女は困った顔をする。

    「いえね、この前軍部でちょっとしたテストがあったんですよ」
    「テスト?」

    早い話が体力テスト軍人バージョンです、といって氷雨は笑った。
    武器の使い方、身の守り方。
    基礎体力やその他の能力が向上しているかどうかをチェックするのだ。
    そういえばこの前筋肉痛がどうのって言ってたなぁ、と藍は思い起こしてうなずいた。

    「そのテストがどうかしたの?」
    「氷雨は前回より結果が落ちてたんだよねー」
    「うぐ、」

    にっこりと、氷雨の代わりに答えたのはもちろん優だ。
    タチの悪い笑顔を浮かべて、彼女の頬をぷすぷすつつく。

    「体力落ちてたしねー?駄目だよ氷雨、ちゃんと訓練しなきゃ」
    「うぅ…ごもっともです…」
    「それ氷雨ちゃんの?見せて見せてっ」

    風姫にねだられて、素直に用紙を差し出した。
    中央に書かれたグラフや数値、平均値やコメントなどを記したそれは、あますます体力テストのようだ。

    「へー…すごい、こんなこともするんだ」
    「なんだそれ?」
    「お嬢のか?」
    「………軍人のデータを堂々と君たちが見ていいものなのだろうか…?」

    わらわらと集まってきた青と蒼に、蓮が呆れたようにつぶやく。
    もう最近じゃほとんど思い出さないけれど、一応彼らの立場は正反対にあるといっても過言ではない。

    軍人と、殺し屋。
    裁く立場と、裁かれる立場。
    正と邪、善と悪、光と闇。
    一般的な見方をすれば、彼らは間違いなく敵同士だ。

    『正義のヒーローになりたかったんだ』

    それでも、彼らは。
    きっと笑って、きれいに笑って言うのだろう。
    勝手なことを言うな、と。
    自分たちのことを知りもしないで、正義だ悪だと判断を下されるのは心外だ、と。

    だって彼らこそが、紛れもない正義のヒーローなのだから。

    「…この結果を見るに、お嬢はあんまり戦闘が得意じゃないんだな」

    蒼がぽつりとつぶやいた。
    氷雨のグラフは見事にガタガタで、特化したものと苦手なものの差がものすごい。
    長所は短時間での情報処理、的確な判断力。
    短所は戦闘能力と、体力の低さだ。

    「まぁ女子だし、こんなもんじゃねぇの」
    「ひーちゃんの場合は武器が武器だしねー」
    「そうかもしれませんけど…でもやっぱり悔しいというか」

    呻いて顔を伏せた氷雨に、よし、と唐突に蒼が手を打った。

    「兄さん?」
    「どうしました?」

    問われて彼はあっさりと、至極当然に答える。
    めったに見られない、穏やかな笑みさえ浮かべて。

    「…じゃあ、ちょっとみんなで訓練するか」
    「ちょっと待てだから君たち以下略!」

    蓮の渾身の突っ込みもむなしく、こうして本来ならばやっちゃいけない特訓が行われることになった、らしい。

    (高らかに奏でてみせよう)



    久々更新仮想世界。
    珍しく次男じゃなくて蓮がツッコミに回りました。
    たまには常識的なこともできるんだよ、と主張したい(たまに?)

    次回はきっと特訓シーンを書きます。
    頑張ろう…!

    蜜色キッス。


    ※仮想世界。
    女の子達のお買いもの。


    だんだんと夜が長くなり、空気も冷たさを増していき。
    気の早い店先には、赤と緑のデコレーションが目立つようになった。
    ぽつりぽつりと灯りはじめたイルミネーションに、ふわりと心が浮足立つ。

    その中でもとりわけ鮮やかで、甘い香りを漂わす店先で氷雨が足を止めた。

    「ね、ちょっとだけ寄っても良いですか?」
    「あら、ラッシュ」

    色とりどりの石鹸が並ぶ、小さなお店に桃花が微笑んだ。

    「すごーい、可愛い」
    「えー、あたしも見たいっ」

    楚夜と風姫も目を輝かせて、軽やかに足を踏み入れた。
    ふんわりと、鼻をくすぐるのは独特の甘い香り。
    たちまち女の子スイッチが入って、風姫がはしゃいだ声を上げる。

    「うわー、うわー…!すっごい可愛い…!!」
    「ね、可愛いよね」

    控え目に笑う楚夜に何度も頷き返し。
    可愛らしい石鹸を手に取って眺めた。

    「あ、ハンドクリームもあるのね」

    珍しい固形のハンドクリーム(ジンジャーマン型やハート型、イチゴ型など様々)を手に取って、桃花が呟く。
    お花屋さん、と言えば可愛らしく優雅なイメージが浮かぶけれど、実際は力仕事で水仕事。
    年中無休で冷たい水にさらされる彼女の手は、似合わないあかぎれや、切り傷でいっぱいだ。

    「あぁ、乾燥しますもんね…これからは特に」
    「そうなのよねー。ひとつ買っていこうかしら」

    そう言って桃花が手にしたのは、『とろけてハニー』というはちみつの香りのマッサージバー。
    神様の食べ物と謳われた金色のそれは、なるほど彼女によく似合う。

    冷たくなった指先を魔法のように操って、それでも辛いとも言わない彼女の強さには、何度触れても目をみはる思いがする。
    こっそりと、おまじないでも唱えるように目を閉じて、氷雨は自分も何か見繕おうと棚に目を向けた。

    「んー…どうしようかなぁ」

    オフィスの乾燥や睡眠不足、ストレスにあてられた肌は明らかに疲れ気味。
    本格的な冬を迎える前になんとかケアをしなければ、恐ろしいことになりそうだ。
    フルーツをたっぷり使ったカラフルなフェイスパックや、良い匂いの保湿クリームを見比べる。

    「氷雨さん、これは?『クリスマスのご褒美』だって」
    「ふふ、可愛いピンク色」

    楚夜が持ってきてくれたのは、クリスマス限定発売と書かれたピンク色のフェイスパック。
    濃く香る花の匂いに、思わずうっとりと目を細めた。

    「乾燥にも良いんだって」
    「じゃあ、これにしようかな」

    氷雨の無邪気な笑顔に、楚夜も嬉しそうな顔をした。

    氷雨はサンタクロースなんて信じない現実主義。
    軍人である彼女には、クリスマスだって関係ないけれど。
    たまにはその名前のとおり、たっぷりのご褒美をあげたって罰は当たらないだろうから。

    「楚夜ちゃんは何か買わないの?」

    ひょ、と風姫が横から顔を出した。
    彼女の桜色のくちびるを見ながら、楚夜はリップクリームを買わなくちゃ、と呟く。

    「あ、乾いてる」

    風姫にちょんとつつかれた。
    ついつい横着して、リップクリームを塗り忘れることが多い楚夜のくちびるは、時折皮がむけてしまうくらいにカサカサだ。
    レジのすぐ傍にならんだ、小さなケース入りのリップクリームに近づいた。

    「名前も可愛いね」
    「ね」

    ラッシュの特徴の一つは、石鹸に付けられた可愛い名前。
    読むだけで楽しくなるようなセンスには脱帽だ、そんなことを思いながらテスターで香りを確かめていく。

    「…これにしようかな」

    無香料のリップについ手が伸びたけど。
    キラキラとした雰囲気に酔ったせいか、いつもだったら選ばないものをチョイスした。

    「『おしゃべりアップル?』」
    「…うん、」

    アップルパイみたいな良い匂いにも惹かれたけれど、いちばん彼女の心を捉えたのはその名前。
    お喋りが苦手な自分でも、これをつけたら少しは軽やかにくちびるを動かせるだろうかと考えた。

    「…似合わないかな」

    そんな子供じみたことを考えた自分が照れくさくなって、無香料のものに取り変えようかと手を伸ばす。
    けれど風姫はふるふると首をふって、華やかに笑った。

    「そんな事ないよ、すごく似合う」
    「…そう、かなぁ」
    「だって楚夜ちゃん、白雪姫みたいだもの」

    風姫はにっこりと笑った。
    しろい頬に、くろい髪、あかいくちびる。
    ほら、君は白雪姫みたい。
    林檎の香りを纏ったら、きっと誰より可愛いよ。

    「…あり、がと」
    「うん?どういたしましてー」

    真っ直ぐすぎる風姫の言葉に、楚夜の頬が赤く染まる。
    それこそ林檎のような色。
    ほら、やっぱり可愛いと風姫はにっこりして、いよいよ自分の買い物をしようとスカートを翻した。

    「でも風姫ちゃんお肌も髪も綺麗だし、特にトラブルってなさそうだけど…」

    彼女の真っ白な肌やさらさらのストレートヘアを見て、桃花が小首を傾げた。
    それに対して風姫は苦笑を返す。

    「ううん、隠れてるけど肘とか踵はがさがさなんだよ」
    「あらあら、確かにそれは乙女として由々しき問題ね」
    「だよねぇ。フットローション、どれがいいかなー」
    「ね、これは?」

    桃花が持ってきたのは、『桃色キック』という名前のついたフットローション。
    甘そうな桃色に反して、ペパーミントの香りがするから不思議だ。
    見た目は恐ろしくクールなドール、なのに中身は無邪気に子供っぽい風姫とは、ある意味バランスが取れそうな一品である。

    「ん、これにするっ」

    潔いくらいに即決して、風姫が頷いたところで。
    それぞれ芳香を放つ自分へのギフトを手に、レジに向かう。

    「久しぶりだわ、こんな風に自分へのご褒美を買うなんて」
    「たまには良いですよね、こういうのも」

    くすくす、と。
    男子禁制のひそやかな楽しみに、自然とこぼれるのは笑い声。
    花のように笑って、小鳥のように歌って。
    嗚呼君は、そう誰よりうつくしい。

    「…使うのがたのしみ」
    「なんだかドキドキしちゃうよね」

    包みを開けるのすら勿体ないくらい。
    だけど早く開けてみたくてうずうずする。
    プレゼントを目の前にした、幼い女の子のような気持ちだ。

    「すみません、お会計お願いしてもいいですか?」

    まだまだクリスマスまでには時間があるけれど。
    とっておきの甘い香りを纏って、とびきりの聖夜に向けて支度をしよう。

    サンタクロースはもう来ないけど。
    透明な気持ちを持つ君たちは、それより幸福なプレゼントを知っている。

    (こっちを向いて、マイレディ!)



    …登場人物を絞ったのにちっとも短くならなかった件について←
    もう良いよ…仮想世界はこういう宿命なんだよ…(諦めた)

    今日は帰りに友人とラッシュに寄ってきました。
    手持ちがなくて何も買えなかったけど、幸せだった…!!
    ショップのお姉さんがカタログをくれたので、それを見ながら書いてました。

    いろいろ名前を出しちゃったけど大丈夫だろうか…(今更)
    でもどれにしようか考えるのはすっごい楽しかった!

    ラッシュは名前がいちいち可愛すぎると思うんだ…あと説明文?みたいなのも。
    きゅんきゅんする!
    そんなわけで今回のタイトルはラッシュをイメージしてみました。

    今度ラッシュに行ったときは、今回四人がどれを買ったのか探してみてください(笑)

    真夜中にワルツを。

    ※仮想世界。
    ハロウィンパーティのはじまり、はじまり。

     


    「「とりっく おあ とりーとー!!」」
    「相変わらずお前らテンション高いなオイ!!」

    10月31日、ハロウィン。
    本日は有沢邸にて、いつものメンバーによるハロウィンパーティが開かれていた。
    ドレスコードはもちろん仮装をしてくること。
    それぞれがハロウィンにちなんだ格好で、お菓子を片手に集まってきた。

    「ほらほら青くん、お菓子をお寄越し!」
    「風姫、お前はカツアゲでもする気か?」
    「あおくーん、はいこれチョコレート!」
    「鶴見、お前はハロウィンの概念をまず理解しろ」

    テンション三割増しではしゃいでいるのはもちろん風姫と晃。
    風姫は黒のワンピースにとんがり帽子で魔女の仮装を。
    晃は全身にぐるぐると包帯を巻きつけて、ミイラ男に扮している。

    「えっと…とりあえず、落ち着かない?二人とも…」

    それから風姫に半ば引っ張られるようにして連れてこられたのは、カボチャのお面を斜めに被った楚夜だ。
    楚夜は騒々しい二人のテンションについていけないのか、目を白黒とさせている。

    「とりあえずお前ら落ち着け。上杉が困ってるぞ。ほら深呼吸、それから『待て』」
    「「わふ、」」

    もうだいぶツッコミが板についてきたのは鳥海家の次男坊、青。
    しかし彼はラフな私服で、とくに仮装はしていない。
    …ただ、ポケットからキラキラしたハートのついたステッキが、にょん、と顔を出している。

    「青も仮装すれば良かったのに」

    ひょい、と三人を覗き込むようにして現れたのは優だ。
    三角のくろい耳に、首には大きな鈴。
    ふよん、と長い尻尾を揺らす、彼は黒猫の格好をしている。
    ……イイ歳した大人が、こんなコスプレまがいの格好をして恥ずかしくはないのだろうか、と全員が同じことを考える。

    「できるかよ…!」

    優の言葉に、青がふるふると拳を震わせた。
    ところで今日の仮装は前回風姫の家にみんなで集まった時に、くじ引きで決めたものだったりする。
    それぞれがひとつずつ案を出し合って、くじを作ったのだ。
    そして残念なことに、青の仮装は――

    「妖精の格好なんて、誰が出来るか!」

    なんとも似合わない、可憐なフェアリーだったのだ。
    さすがに可哀想だし、野郎の妖精コスなんて見たくはないので、青は仮装を免除されたという次第だ。
    その名残のように、可愛らしいステッキだけが装備されている。

    「えー、でも髪の色的に、ありなんじゃないの」
    「やめてくれ優、お前は俺の妖精が見たいのか?」
    「ううん、別に?」

    しれっと答える優に若干の殺意を覚えつつ、青はぐるりと辺りを見回す。
    茶色い三角耳を視界の片隅に捕らえて、青は呟く。

    「…だいたい、妖精が似合うのって桃花さんくらいじゃねーの、うちのメンバーだと」
    「あはっ確かに」

    ふんわりとまぁるい雰囲気、少女めいた笑顔。
    可愛い妖精の格好は、彼女にこそ似合いだと思うのだが、残念ながら彼女は狼人間に扮しているのだから嘆かわしい。
    会話が耳に入ったのか、ぴょこんと耳を揺らして桃花は振り返ると、楽しそうに手を振ってきた。
    それに手を振り返しながら、改めて友人のお坊ちゃま加減に舌を巻く。


    有沢邸の、広々とした一室を借りたパーティ。
    テーブルの上にはカラフルな輸入菓子やら、美味しそうな料理が所狭しと並べられ。
    焼き上げられたばかりのカボチャのパイの香りに、ぐるるる、とお腹が鳴った。

    「蓮、これ食って良いの?」
    「うん、もちろん。熱いうちにお食べよ」

    ヴァンパイアに扮した蓮が、にっこりと笑って料理を勧める。
    …彼の手の中にあるグラスに注がれた、赤い液体はぶどうジュースだと信じたい。
    未成年のくせに妙にアルコールに強い彼のことだから、望み薄だとは思うけれど。

    じゃあ遠慮なく、とパイを小皿に取り分けてぱくついていると、ふ、と傍に影が落ちた。
    横目でそれを見上げると、神父の格好をした蒼が感慨深そうに遠くを眺めている。
    涼しげな顔立ちの彼には、黒の衣服はよく似合う。

    ただし蒼は扱う武器が表すとおり、頭の中は純和風。
    ぱちぱち、と男にしては長い睫毛を瞬かせ、眩しそうに目を細める。

    「おぉお…ハロウィンとは、なんとも目に痛い行事だな…」
    「……頼むから兄貴、微妙にずれたコメントを発するのはやめてくれ」

    オレンジに黒に、紫。
    場合によっては金色に彩られるハロウィンは、確かに目に痛いけれど。
    それでも改めて発言することではあるまいと、心の中で脱力した。


    「あ、にーさん何食ってるの?美味しそーっ」
    「カボチャのパイですか?良い匂いですね」

    そこに揃って現れたのは、藍と氷雨だ。
    白と黒、対照的な色を身にまとって、青の左右からそれぞれ顔をのぞかせる。

    「ひーちゃん、そっちの小皿とって」
    「あ、藍さんわたしにもくださいな」

    仲良さげに話す二人は、本来であれば仲良しではいけない仮装をしている。
    真っ白な上着に、同じ色のパンツ。
    背中には輝く純白の翼をはやしている藍と。
    真っ黒な上着に、同じ色のスカート。
    背中に、コウモリのような黒い羽をつけた氷雨。
    天使と悪魔はきゃいきゃいと、カボチャのパイを頬張っている。

    「…なんで悪魔も真っ青なくらいに性格悪いお前が天使やってるんだよ、藍」
    「え?だってくじ引きだしー。それに似合うだろ?おれ」

    兄のツッコミに、少しも悪びれた様子なく藍は笑った。
    助けを求めるように青は氷雨に目を向けるが、彼女は軽く肩をすくめるだけだ。
    彼女も彼女でいろいろ思うところはあった、らしい。

    「お似合いですし、良いんじゃありませんか」
    「似合う似合わないじゃなくて、コイツが天使なのが問題なんだよ…」
    「えー、フェアリーよりマシでしょ」
    「てっめ…!!」

    俄かに騒がしくなる空気。
    反撃の為に無理やり飲み込んだカボチャのパイは、やけに甘い気がして目を見張る。

    夜が主役のパーティの熱は、まだまだ冷めそうにもない。

    (夜を歌え)

     


    ギリギリ間に合った仮想世界のハロウィンパーティ。
    椎さんとこでハブられてた次男をメインに据えてみた。
    …というわけではなくて、彼は書き易かったので…(えー)

    可愛いハロウィン絵は椎さんとこで見られますよ!!(宣伝)

    鮮やかな夜の隙間。

    ※仮想世界。
    もうすぐハロウィンです。



    「じゃんっ」

    全員がそろった平日の夕方。
    風姫のマンションでテーブルを囲んでいる最中に、明るい笑顔とともに、彼らの目の前にオレンジ色の物体が差し出された。

    普段こういうアクションを起こすのは大抵風姫なのだが(そして全力で周りを巻き込んでいく)、今回ばかりは少々事情が違った。
    そのオレンジ色の物体――両手に載るくらいの、小さめなカボチャ――を持ってきたのは、我らがミューズ、桃花さん。
    ころ、と白い手の上でそれは揺れ、風姫が目を輝かせる。

    「わぁ、カボチャだーっ」
    「ふふー、可愛いでしょう?うちのお店で出してるのよ」
    「あぁ、もうすぐハロウィンかぁ」

    楚夜が呟いて、それから全員が納得する。
    10月31日、ハロウィン。
    日本ではあまり馴染みのない行事だけど、最近はずいぶん賑やかに迎えられるようになってきた。
    ふむ、と記憶を手繰るように蒼が空を仰ぐ。

    「なんか…あの、お菓子貰いに行くやつか?『お菓子をくれなきゃ呪い殺すぞ』とか言う…」
    「確かに雰囲気は間違ってませんが、蒼さんそれはあまりにも物騒です」

    呪ってどうする。
    氷雨にきっぱりと否定され、残念そうに蒼は頷いた。
    ころころと手の中で、受け取ったカボチャをもてあそぶ。

    それを嬉しそうに眺めながら、桃花は後ろに置いてあった紙袋を引きよせた。

    「なぁに?それ」
    「うふふ、見てみて」

    逆さまにした袋。
    中からごろごろと転がり出てきたのは、蒼が手にしているのと同じくらいの大きさの、カボチャだ。

    「どうしたの?すごいねこんなに」
    「せっかくだから、みんなでジャック・オー・ランタンを作ろうと思って」

    とは言っても、いわゆるお化けカボチャではないので、シールを貼って顔をつけるだけなのだが。
    それでもパーツはいろいろあるから、選ぶだけでも楽しそうだ。

    「えー、すごい、かわいいっ」
    「好きなの選んでね」

    オレンジと紫と黒。
    夜色に彩られた、不思議な祭り。
    仮装なんてするような年齢じゃないけれど、それでもクリスマスなどとは違う盛り上がりに、この時期はなんとなく浮き足立つような心地がする。

    めいめいがシールを選んでいる最中に、ふと思い出したように藍が顔を上げた。

    「なんだっけゆーくん、何のお祭り?」
    「えー…万聖節の前祝いじゃなかった?」
    「ばんせーせつって何?」
    「晃、お前ね…。あー蓮くーん、パス」

    優に投げやられ、蓮が明らかに困惑したような顔をした。
    こめかみの辺りを軽くたたいて、何とか説明を試みる。

    「えー…確かケルト人の一年の終わりが31日で、この日って日本のお盆みたいに死者の霊とかが出てくるんだよ…そりゃあもう、うようよと」
    「えぇえその言い方やめろよ…」

    うようよ出てくる死者の霊(しかもゾンビ的な方)を想像してしまったらしく、青が顔をしかめた。
    それに少し笑って、蓮は続ける。

    「それから身を守るために仮面をかぶったり、火を焚いたりしてたんだけどね。それがキリスト教に取り入れられた、って言うのがおおまかな話じゃなかったっけ?」
    「へぇー…」

    ふむ、と納得したあたりで、それぞれ完成したらしい。
    シールの選び方にも個性というか、その人らしさがにじみ出るようだ。

    「青くん…なんでシール平行に貼れないの」
    「そう言えばお前小さい時から絵描くのヘタだったな」
    「う、うるせー!」

    「うわ、蓮くんのこわ!おどろおどろしい!!」
    「あはっ、そんな事ないってー。あ、楚夜さんの可愛いね」
    「あ…ありがとう…?(なんでこの人のカボチャこんな禍々しいんだろう)」

    個性豊かすぎるカボチャたち。
    それでも部屋を暗くして、アロマキャンドルを周りに並べて火を灯せばたちまち秘密めいた雰囲気を醸し出す。

    「…なんか、楽しーね」
    「そうですね」

    ジャック・オー・ランタンではないけれど。
    ゆらゆら揺れる灯りは影を濃く映して、一瞬ここが非日常であるような気にさせる。

    くるりと昼夜は反転して、祝福されるのは暗い闇。
    灯りを手にして進みましょう、亡霊に微笑みかけて夜を往く。
    くすり、と誰かが笑った。

    「…いっそ、ハロウィンする?」
    「何、仮装するの?」
    「そう。みんなで」

    イイ歳した大人だっていて、そうでなくても十代の後半で。
    いまさらハロウィンなんて、子供じみて仕方ないけれど。

    「…それも、良いね」

    誰かが笑い声に、応えた。

    (僕らの夜を祝いましょう)




    そんなわけで仮想世界のハロウィンです。
    相変わらず長いです。
    でも最近はもうこれがデフォなんだと思ってる(えー)

    椎さんに「楽しみにしてる」と言われたので頑張ってみた!
    個人的に今回いちばん楽しかったのは、若干ハロウィンの知識が間違ってる長男と、それに冷静にツッコミをいれる氷雨さんです。

    なんかみんなできゃいきゃいしてれば良いよ、うん。


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    1990/10/10
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    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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