「はい、もしもし」
『あぁ、僕だよ』
「…オレオレ詐欺ならお断りだよ」
『仕方ないでしょ名前出さないルールなんだから』
「ちょ、こんなトコで大人の事情をバラさないでよ」
『大人の事情なの?』
「いや別に。…それにしても、久しぶりだね」
『そうだね、久しぶりだ』
「うん、っていうかどうしたの?珍しいね電話してくるなんて」
『どうしたの、とはまた随分だねお姫様?』
「ん?」
『…君の声が聴きたくなったんだ、って言ったら、信じる?』
「…信じ、ないよ」
『だと思ってた』
「だって、声が聴きたくなったら逢いにくるじゃない」
『そうだね』
「あたしの都合なんてお構いなしに、逢いにきちゃったって」
『…うん、そうだね』
「…それに、あたしは逢いたくないもの」
『うん?』
「あたしは逢いたくない、だからあなたも逢いたくないでしょう?」
『コピーの法則?』
「そう。あなたが逢いたいならあたしも逢いたい、あたしが逢いたくないならあなたも逢いたくない。そうでしょう?」
『…そうだよ、その通りだ』
「…珍しいのは、電話だけじゃないね」
『…うん』
「こんなに、長いこと離れてるのも、だよね」
『ずっと、一緒だったからね』
「…逢いたく、ないよ。だから、逢いたくないって、言ってよ」
『…』
「…なにか、言って」
『…』
「もしもし?」
『…逢いたいよ』
「…っ」
『君に、逢いたい』
「な、に…」
『…逢いたくて、仕方ないよ。声だけじゃ、足りない』
「…さ、」
『さ?』
「…さい、ていっ…!」
『…なに、今頃知ったの?』
「逢いたくないって言ってよ…そしたら、まだ我慢できた、のに、」
『我慢?』
「そう、だよ…そしたら、逢いたくないって思っていられた、のに」
『…うん、』
「頑張ってるの知ってるから言わなかった、のに…わか、らず屋…!」
『…君のことなら、分かってるつもりだけどね』
「…うそつき、」
『おや、心外だな』
「…ふふ、あたしの、嘘吐き王子様。そんなこと、思ってないくせに」
『なら、言い当ててみせようか?君の思ってること』
「…なに?」
『…逢いたいよ、君もでしょう?』
(だからねぇ、マイガール。君の声で僕に告げて)
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