くすくすと、ひそやかな笑い声が聞こえた。
声のほうを見ると、彼と彼女が頭を寄せ合って何かを見ている。
この二人は、よく似ている。
構成するパーツが似ている、というせいももちろんあるだろう。
けれどそれよりももっと、纏う雰囲気がとても近い。
たとえばはりつめた真冬の空気みたいな、凛とした様だとか。
そしてそれが、ふたりで居るときにはふわりとゆるむ瞬間だとか。
仲睦まじい、というのはこういうことを言うのだろう。
「…似てるね」
わたしの考えを悟ったみたいに、隣で先輩がつぶやく。
「えぇ、とても」
「なにがー?」
うなずくと、聞こえたらしく彼と彼女が振り向いた。
いいえ、とわたしは微笑んで首を振る。
自分のことは、自分では見えない。
見た目ではなく雰囲気なんて、もっと解らないものだ。
きっと彼と彼女は互いを似ているだなんて認識していないだろう。
ただそれが当たり前に寄り添って、手をつないで、そうして今のように笑いながら。
――どうか、そのまま。
「…おふたりが、ほんとうに仲が良いんだなって」
「そうかな」
「そう?」
ふたりがいちばん幸福な形で、在り続けてほしいと。
そう思ったのだ、彼らの間に不用意な言葉なんていらない。
やわらかなふたりの横顔を眺めて、誰に充てるでもない祈りを寄せた。
(聖女のレプリカ)
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