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※仮想世界。
ハロウィンパーティのはじまり、はじまり。
「「とりっく おあ とりーとー!!」」
「相変わらずお前らテンション高いなオイ!!」
10月31日、ハロウィン。
本日は有沢邸にて、いつものメンバーによるハロウィンパーティが開かれていた。
ドレスコードはもちろん仮装をしてくること。
それぞれがハロウィンにちなんだ格好で、お菓子を片手に集まってきた。
「ほらほら青くん、お菓子をお寄越し!」
「風姫、お前はカツアゲでもする気か?」
「あおくーん、はいこれチョコレート!」
「鶴見、お前はハロウィンの概念をまず理解しろ」
テンション三割増しではしゃいでいるのはもちろん風姫と晃。
風姫は黒のワンピースにとんがり帽子で魔女の仮装を。
晃は全身にぐるぐると包帯を巻きつけて、ミイラ男に扮している。
「えっと…とりあえず、落ち着かない?二人とも…」
それから風姫に半ば引っ張られるようにして連れてこられたのは、カボチャのお面を斜めに被った楚夜だ。
楚夜は騒々しい二人のテンションについていけないのか、目を白黒とさせている。
「とりあえずお前ら落ち着け。上杉が困ってるぞ。ほら深呼吸、それから『待て』」
「「わふ、」」
もうだいぶツッコミが板についてきたのは鳥海家の次男坊、青。
しかし彼はラフな私服で、とくに仮装はしていない。
…ただ、ポケットからキラキラしたハートのついたステッキが、にょん、と顔を出している。
「青も仮装すれば良かったのに」
ひょい、と三人を覗き込むようにして現れたのは優だ。
三角のくろい耳に、首には大きな鈴。
ふよん、と長い尻尾を揺らす、彼は黒猫の格好をしている。
……イイ歳した大人が、こんなコスプレまがいの格好をして恥ずかしくはないのだろうか、と全員が同じことを考える。
「できるかよ…!」
優の言葉に、青がふるふると拳を震わせた。
ところで今日の仮装は前回風姫の家にみんなで集まった時に、くじ引きで決めたものだったりする。
それぞれがひとつずつ案を出し合って、くじを作ったのだ。
そして残念なことに、青の仮装は――
「妖精の格好なんて、誰が出来るか!」
なんとも似合わない、可憐なフェアリーだったのだ。
さすがに可哀想だし、野郎の妖精コスなんて見たくはないので、青は仮装を免除されたという次第だ。
その名残のように、可愛らしいステッキだけが装備されている。
「えー、でも髪の色的に、ありなんじゃないの」
「やめてくれ優、お前は俺の妖精が見たいのか?」
「ううん、別に?」
しれっと答える優に若干の殺意を覚えつつ、青はぐるりと辺りを見回す。
茶色い三角耳を視界の片隅に捕らえて、青は呟く。
「…だいたい、妖精が似合うのって桃花さんくらいじゃねーの、うちのメンバーだと」
「あはっ確かに」
ふんわりとまぁるい雰囲気、少女めいた笑顔。
可愛い妖精の格好は、彼女にこそ似合いだと思うのだが、残念ながら彼女は狼人間に扮しているのだから嘆かわしい。
会話が耳に入ったのか、ぴょこんと耳を揺らして桃花は振り返ると、楽しそうに手を振ってきた。
それに手を振り返しながら、改めて友人のお坊ちゃま加減に舌を巻く。
有沢邸の、広々とした一室を借りたパーティ。
テーブルの上にはカラフルな輸入菓子やら、美味しそうな料理が所狭しと並べられ。
焼き上げられたばかりのカボチャのパイの香りに、ぐるるる、とお腹が鳴った。
「蓮、これ食って良いの?」
「うん、もちろん。熱いうちにお食べよ」
ヴァンパイアに扮した蓮が、にっこりと笑って料理を勧める。
…彼の手の中にあるグラスに注がれた、赤い液体はぶどうジュースだと信じたい。
未成年のくせに妙にアルコールに強い彼のことだから、望み薄だとは思うけれど。
じゃあ遠慮なく、とパイを小皿に取り分けてぱくついていると、ふ、と傍に影が落ちた。
横目でそれを見上げると、神父の格好をした蒼が感慨深そうに遠くを眺めている。
涼しげな顔立ちの彼には、黒の衣服はよく似合う。
ただし蒼は扱う武器が表すとおり、頭の中は純和風。
ぱちぱち、と男にしては長い睫毛を瞬かせ、眩しそうに目を細める。
「おぉお…ハロウィンとは、なんとも目に痛い行事だな…」
「……頼むから兄貴、微妙にずれたコメントを発するのはやめてくれ」
オレンジに黒に、紫。
場合によっては金色に彩られるハロウィンは、確かに目に痛いけれど。
それでも改めて発言することではあるまいと、心の中で脱力した。
「あ、にーさん何食ってるの?美味しそーっ」
「カボチャのパイですか?良い匂いですね」
そこに揃って現れたのは、藍と氷雨だ。
白と黒、対照的な色を身にまとって、青の左右からそれぞれ顔をのぞかせる。
「ひーちゃん、そっちの小皿とって」
「あ、藍さんわたしにもくださいな」
仲良さげに話す二人は、本来であれば仲良しではいけない仮装をしている。
真っ白な上着に、同じ色のパンツ。
背中には輝く純白の翼をはやしている藍と。
真っ黒な上着に、同じ色のスカート。
背中に、コウモリのような黒い羽をつけた氷雨。
天使と悪魔はきゃいきゃいと、カボチャのパイを頬張っている。
「…なんで悪魔も真っ青なくらいに性格悪いお前が天使やってるんだよ、藍」
「え?だってくじ引きだしー。それに似合うだろ?おれ」
兄のツッコミに、少しも悪びれた様子なく藍は笑った。
助けを求めるように青は氷雨に目を向けるが、彼女は軽く肩をすくめるだけだ。
彼女も彼女でいろいろ思うところはあった、らしい。
「お似合いですし、良いんじゃありませんか」
「似合う似合わないじゃなくて、コイツが天使なのが問題なんだよ…」
「えー、フェアリーよりマシでしょ」
「てっめ…!!」
俄かに騒がしくなる空気。
反撃の為に無理やり飲み込んだカボチャのパイは、やけに甘い気がして目を見張る。
夜が主役のパーティの熱は、まだまだ冷めそうにもない。
(夜を歌え)
ギリギリ間に合った仮想世界のハロウィンパーティ。
椎さんとこでハブられてた次男をメインに据えてみた。
…というわけではなくて、彼は書き易かったので…(えー)
可愛いハロウィン絵は椎さんとこで見られますよ!!(宣伝)
※階段の神様。
「そういえば、セツキ先輩はこの寒いのになんで屋上に?」
ふ、と。
思い出したように掠めた疑問。
顔をあげると。少し困ったような顔に出逢って驚いた。
「えっと~…」
「なんですか急に…っくしゅ!!」
言いたくないなら無理に言わなくても。
そう言おうとした矢先、情けないくしゃみが飛び出した。
…忘れてたけど、寒い。
指先が、今にもデジカメを取り落としそうなくらいに冷えていることに気付く。
「あぁあぁ…もー、そんな格好で屋上でるからー!」
「いや…でも俺セーター着てるし、」
「ほらほら、風邪ひく前にはやく戻りなさい」
でも、と言いかけた言葉を飲み込む。
確かにこのまま外に居たら、ほんとに風邪を引きそうだ。
「…ねぇ、絆くん」
「はい?」
扉の前まで来たところで、肩を突かれた。
「…また、来てくれる?」
振り返らないまま聞いた声が、なんだか妙に淋しそうで。
頭で考えるよりも先に、俺は答えを出していた。
「また来ます、絶対」
背中で、ふわりと微笑がほどける気配がする。
「嬉しい。ありがとう」
「今度はちゃんと、あったかい格好で来ますよ」
「そうだね、それが良いよ」
「先輩も、セーターくらい着た方がいいですよ?風邪ひきます」
この時期にセーラー服だけという苦行みたいな格好の彼女。
クラスメイト達はすでに上にカーディガンを着こんだり、マフラーに顔をうずめたりしているのに、その恰好はものすごく寒そうだ。
けれど彼女はふふ、と笑う。
「女の子は中にいろいろ仕込んでるのよ」
「そういうもんですか?」
「そういうものです。さ、早く戻らないと」
ぐ、と背中を押されて、扉の向こうに押し出される。
けれど、それは俺だけで。
「先輩は?」
「私は、もう少しだけ」
「でも、」
ゆるりと首を振って、彼女は笑う。
このまま中に戻る気はないらしい。
「…風邪ひかないでくださいね」
諦めて、苦笑した。
彼女が残ると言うならば、俺にどうこういう権利はないし。
あっさりした引き際に彼女はすこし驚いたような顔をしたが、すぐにありがとう、と言って扉を細くする。
妙に白い光の中、姿は影のようになり、声だけが鮮明に響く。
「またね、絆くん」
「…えぇ、また」
短いやり取りの後、灰色の重たい扉がばたん、と閉まった。
急に暗くなった視界に、翻る濃紺がだぶる。
「…中学生かよ」
肩をひとつすくめて、階段を駆け降りた。
(影法師の恋)
階段の神様。でした。
最初の出会いにどんだけ時間かけるんだ…。落ち着けわたし。
なんとなく屋上って憧れがあります。
高校のときはよくお弁当食べたりとかしてました。
でもなんていうか、屋上ってちょっと特別な感じがします。
普段はそんなに出ないからかな。