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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    ケース1、カノジョの場合。

    ※カレとカノジョ。
    お題固定のモノローグ。


    『命題:ただひとりの愛しい人の命と、その他ひゃくにんの命。天秤にかけるならば、どちらをその手に?』


    え?えぇ…と。
    またずいぶんと、唐突な質問ですね…?
    唐突で、脈絡もなくて、とても難しい。
    …これって答えを出さなくちゃ、いけないんですか?

    うーん…ここで『愛しい人の命に決まってる』って即答できないわたしは、不誠実なのかしら。
    あぁ、だけどどうしよう困ったな、やっぱり難しい。

    救えるものなら、もちろんあの人の命を救いたい、けど。
    でも、わたしは…ごめんなさい、失う百人の命の重みに、耐えきれない。
    自信がないんです。
    百人と、それを愛してた何百人って人の涙を、受け止められる自信が、ない。

    …そして、たぶん。
    自分の保身のために、あの人を捨ててしまうかもしれない、わたしを。
    恐ろしいことに、きっとあの人は赦してしまう。
    それを理解していてなお、…理解しているからこそ、かしら。
    わたしはその決断を、してしまうと思うんです。

    …酷い恋人ですね、わたし。
    だから、せめて。
    わたし自身は誰より痛烈に辛辣に、これ以上ないくらいの自己否定を含めて。
    あの人を失うことを許した自分を、呪って恨んで憎んで嫌って、そうして生きることを続けたいんです。
    例えあの人が、それを望んでなくたって、そんなのわたしには関係ない。
    失ったのは事実で、それを赦したのはわたしなんですから。

    …いやだ、ごめんなさい。
    変なことを言ってしまいましたね。
    忘れてください。

    えぇと、だから、そうですね。
    結論を出すのであれば、『ひゃくにんの命を救う』になるのかしら。
    ヒーロー的な答えにならなくって、申し訳ないけれど。

    だけど救われなかった側に、きっとわたしも含まれる。
    …ねぇ、あの人はそれを、わらってくれるのかしら?





    同じ命題でそれぞれの答えを書いてみよう!と思い立ってみました。
    うだうだとそんな話が続きます、あんまりおもしろくなくてすみません。
    もしかしなくてもシリアスです。
    でも彼女はちょっと面白い答えを考えてくれるかも、と期待しています(えー)

    トップバッターはカノジョでした。
    次はだれにしようかなー。

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    蜘蛛と雛菊。

    ※カレとカノジョ。



    「あ、」
    「なに?」
    「枝毛」

    呟いて彼女は、自分の髪をつまむ。
    少し眺めて、けれどすぐに指を離した。
    しゃん、と髪が元の位置に戻るのを、なんとなく眼で追ってしまう。

    「ほんとは、見つけたらマメに切った方が良いんですよね、たぶん」

    興味がなさそうにそう言って、髪の毛を後ろに流す。
    柔らかに背中で弧を描く、茶色い髪。
    実は彼女のその髪に触れるのがひそかなお気に入りだというのは、未だ伝えたことがない。

    きっと告げたら、ひどく複雑そうな顔をして。
    困ったように微かに首をかしげて、それからそっと微笑うのだろう。
    当り前のようにその光景が目に浮かぶあたり、俺はもうだいぶ彼女にやられているのだと苦笑した。

    「伸びたよね」
    「そう…ですね。この前切ったのが、もう三カ月くらい前になるのかな」

    後ろから抱きしめて、髪を掬った。
    猫っ毛で絡まりやすいそれは、確かにすこし傷みが目立つ。

    「うーん…やっぱり羨ましいです」
    「何が…誰が?」
    「真っ黒で艶々で、さらさらのストレート」
    「…あぁ」

    言われて、彼女が羨む髪の持ち主の姿を思い浮かべた。
    神様の子供。
    血が通っていることが信じられないくらいの、人形じみた美貌の少女。
    彼女の見事なロングヘアは、確かに驚くほど綺麗だ。

    「よし、やっぱり切ってこよう」

    ひとつ頷いて、思い定めたらしい。
    何かを決めた後のどこか晴れやかな表情で、彼女は俺を振り返る。

    「美容院行くと、なんとなく気分が変わるんですよね」
    「…そういうものなの?」
    「なんとなく、ですけど。まるでお姫様みたいに丁寧にシャンプーとか、ブローをしてもらって。女の子気分が上がるというか…」
    「へぇ…」

    そこで彼女はくすっと笑って、楽しそうに言う。

    「それに、担当の美容師さんが格好いいんですよー」
    「…ふーん?」

    抱きしめる腕に、ほんの、ほんの少しだけ力を込めた。

    「どんな人なの?」
    「爽やか好青年、って感じの、明るい人ですよ」
    「…君爽やかキャラって苦手とか言ってなかった?」
    「その人は良いんです、なんか許せちゃう感じだから」

    俺が嫉妬しないからか、割合彼女はこういう話を素直に聞かせてくれる。
    進んで話すことはあまりないが、問えば教えてくれることがほとんどだ。
    『先輩は妬いてくれないからつまらない』と拗ねたように言う彼女は、俺の独占欲の強さを知らないのだ。

    見せてないだけ、言っていないだけ。
    その方が余裕を取りつくろえるし、何より油断した彼女から多くの情報を引き出せるから。
    笑顔で必要な情報を集めて、そこから計算と戦略を立てていること。
    君はずっと、知らないままで良い。

    「ついでだからトリートメントもしてもらってこようかな」
    「良いんじゃない?つやつやになるよきっと」

    …まぁ、流石にね。
    職業でそれをする相手を攻撃したりは、しないけれど。

    「いつ行くの?」
    「そうですね…次の土曜かな…」
    「よし、じゃあその後はデートしようか。いちばんに俺に見せて?」
    「ふふ、分かりました」

    だけど、切った髪を口実に。
    甘やかされるのが下手くそな彼女を、思う存分甘やかして可愛がってあげようかな。
    きっと困り果てた顔で、恥ずかしがるに違いないから。
    そんな君に、さらに甘い言葉を告げてあげる。

    それくらいの意地悪は、許されるだろう?

    「…楽しみだな」
    「えぇ、可愛くしてもらってきますから」
    「ん、期待してる」

    おどけたように笑った彼女の指先に、キスしてちいさく微笑んだ。

    (罠は気付かせずに張るものだよ)




    髪切りてぇえ…!!(お前か)

    わたしのゆっるい天パは、伸びてくるとわっさー!ってなるから鬱陶しくてたまらんのです。
    でもがっつり梳くと髪が好き勝手はしゃぎまくるので困るのです。
    いまでこそ「ゆる巻きですが何か?」みたいな顔してますけどね(髪が)、これあと10センチ切ったら縦横無尽に跳ねまわるよこいつ…!!
    でも髪切りたい。

    どうでも良いことをぐだぐだ語ってしまった…。
    あ、ちなみにこの後カノジョは美容師さんに遊ばれて、ふたつ結びとかにされてちょっと落ち込む、というネタがあります(笑)
    で、終わる時間に迎えに来てくれてたカレに見つかって笑われます。
    そしてカレはしばらく拗ねたカノジョに口を利いてもらえなくなります(長い)

    劇的回転木馬。

    ※仮想世界の仮想現実、ラスト。
    無駄に長いので注意!



    べん、べしょり。

    つんのめって思いっきり手をついて、ついでに膝を強打。
    …これは、痛い。
    しばらくはその体勢のまま、声も出さずに痛みをこらえていたのだが。

    「…ほん、っと…なんでわたしの周りの人間って地味に人の話を聞かない上に俺様ばっかなのっ…!?」

    せめて類友じゃないと思いたい、というか思う事にする。
    氷雨はひりひり痛む膝をさすって、orzのポーズから起き上がった。
    見渡す限り一面の黒で、自分の居る場所がどのくらいの広さなのかもさっぱり分からない。
    もっとも、さっきまでいた場所だって永遠に思えるくらいに広かったのだから、あまり状況としては変わらないかもしれないが。

    おそるおそる、視界を奪われた人間がやるように、彼女もそっと前方に手を突き出した。
    ふれるものは、ない。
    ゆっくりと、確かめるようにじりじりと右足を前に滑らせていく。

    「…(蓮さんは、ここに蒼さんたちが居る、って言ってたけど)」

    本当に、居るのだろうか。
    こんな、暗い黒い場所に、彼らが。
    こんな、あの人たちに似合わないような、世界に。

    考えてみれば、氷雨は彼らに黒が似合うと思った事がなかった。
    連想するのは、いつだって彼らの名前である「ブルー」。
    喪服の黒も、血の赤も、穏やかに笑う彼らからは想像がつかない。

    ひたりひたりと足を進めて、けれど歩み続けることがなんとなく怖くなる。

    「お嬢、」
    「蒼さん?」

    不意に、伸ばしたままの腕をとられた。
    一瞬肩が揺れたが、聞き覚えのある愛称に氷雨は知らず微笑む。
    自分のことを「お嬢」と呼ぶのは蒼だけだ。

    「良かった」
    「あぁ、探させたか?」
    「そう、ですね…探した、と言えば探したのかな」

    腕を引かれるまま、蒼について歩く。
    たぶんこの先に蒼の弟二人もいるのだろうという、根拠のない思いがあった。
    さっきの、蓮の言葉のせいかもしれない。

    「…ねぇ、蒼さん」
    「どうした」
    「ここ、結局どこなんでしょう?みんな…風姫さんと蓮さんは、仮想世界の仮想現実って言ってましたけど」
    「その通りだよ、ひーちゃん」

    応えたのは、藍の声だ。
    ただし、姿は見えない。
    けれどさほど驚かなくなっているあたりが、自分がこの世界に馴染み始めてしまった証かもしれないと氷雨は苦笑した。

    「こんにちは、藍さん」
    「ようこそ、ひーちゃん」

    笑う声には、あぁ覚えがある。
    安堵した氷雨の手に、唐突に何かが載せられた。

    「…?なんです?これ」

    指先に触れるのは、硬く冷たい何か。
    素材自体はなめらかだが、物体にはなだらかな凹凸がある。
    大きさは、両てのひらに乗るくらいで、軽い。
    爪で弾くと、かつ、と硬質な音がした。

    「…つけて」
    「つける?」

    聞こえたのは青の声。
    つける、というキーワードを手繰り寄せて、氷雨は自分が何を手にしているかを理解する。

    「これ…仮面?」

    おそらくは、風姫がつけていたような。
    氷雨はゆっくりと仮面を持ち上げて、顔にあてた。
    まるで誂えたようにしっくりとはまった仮面は、指で触れていたときと同じく冷たい。

    「…あれ、」

    仮面を付けて、氷雨は眉を寄せた。
    別に明りが在るわけではないのに、自分の腕の先に居る、蒼の姿が見えた気がしたのだ。
    数度瞬きをすると、それはさらに鮮明になる。

    「(…仮面の、せい?)」

    どんな技術だろう。
    首をかしげて、視線をスライドさせた。
    蒼とは逆の、ちょうど対角線にあたるくらいの場所に居るのは青。
    藍は向かい側、少し離れたところに居るようだ。

    「…」

    けれど、ひとつだけ違和感。
    どうしてか三人が着ているのは、真っ黒な喪服。
    この暗い空間で何故一瞬でそう思ったのかは、氷雨にも分からなかったが。
    それでも、三人が纏っているのは死者を弔うための装束だと、すぐに理解した。

    「…どうして、」

    貴方たちには、似合わないのに。
    悲しい気持ちで、氷雨は思った。

    貴方たちに、そんな色は似合わない。
    纏うべきは、もっと鮮やかな、目を奪う世界の始まりの色。
    なのに、どうして――。

    「…俺たちは」
    「殺し屋、だからな」

    見透かしたような言葉。
    それを聞くのが、怖かったのかもしれないと彼女は思う。
    本来であれば重なることのなかった世界。
    その理を捻じ曲げてここに居るのだ、事実を突き付けられるのが、怖かったのだ。

    それを、聞きたくなくて。
    だから、この世界を作り上げたのかもしれない。
    仮想世界の、仮想現実。
    狂ったように巡る、奇妙なこの国を。

    「…、」

    氷雨の腕の中。
    いつのまにか抱えていたのは、みっつの仮面。
    腕を真っ直ぐに伸べて、囁くように言う。

    「…つけて、ください」

    仮面を。
    この世界を、存在させるために。

    笑った声は、すぐ近くで聞こえた。

    「…りょーかい、」

    軽くなる腕。
    おぼろげな視界で、三人がそれをつけたのが見えた。
    誂えたようにはまる仮面は、綺麗に彼らの表情を隠す。

    「!」

    その時だ。
    突然真っ暗だった部屋に、明かりが灯される。
    眩しさに強く目を閉じた。

    「…な、んですか…?」
    『ようこそ、仮想現実へ!』

    届いたのは、華やかな声。
    薄く眼を開けると、自分が居たのは拾いパーティー会場だったことを知った。
    飾り付けられたホール、壁際のテーブルに並んだ豪華なごちそう。
    そしてその場所に居るのは、三兄弟と、さきほど別れた風姫と蓮。
    それから――優だ。

    みんながそれぞれ、仮面をつけて。
    見えない顔で、それでも笑っている。

    「ここ…」
    「行こうよ、ひーちゃんっ」

    藍が駆け寄って、氷雨の腕をとった。
    動く景色、一層明るさを増して、そこはひどく楽しげな色を映す。
    はしゃぐような音楽、この世界に居るのは、氷雨が愛した彼ら。

    ――あぁ、大丈夫。
    だって、世界はここに在る。

    「…なんなんですか、もう」

    言いながら、氷雨は笑った。
    くすくすと零れた笑いは、その場所を満たして。
    あぁどうしてだろう、どうしてこんなにも、幸福だと思ってしまうのかしら?
    自分でそう思うくらいに、氷雨は楽しかったのだ。

    「遅かったね、氷雨」
    「…優さんこそ。どちらに居たんですか?」
    「氷雨のすぐそば、だよ」
    「わたし?」

    その言葉に、安堵の気持ちがこみ上げる。
    そうか、傍に、そばに居たんだ。
    わたしの、近くに、いてくれたんだ。

    仮想世界。
    ここは歪で、不安定で、けれど彼らが望み愛した場所。
    それがきっと、願った答え。

    「…ねぇ、わたし『マルスの君』ですって。可笑しいでしょう?わたし体力には全然、自信なんてないのに」

    笑ってこぼした言葉。
    藍が振り返り肩を揺らす。

    「ひーちゃんに軍神は無謀だよねぇ」
    「でしょう?」

    向こうの方では、蓮と青が何かを言い合っては風姫と蒼にたしなめられている。
    いつの間にか馴染んですらいる光景は、心を撫でて広がっていくようだ。

    きっと、目が覚めたら。
    忘れてしまう、この鮮やかな愛おしい光景を。
    だけど、それでも。
    祈るこの瞬間は、嘘じゃない。

    「…ねぇ、氷雨」
    「はい?」

    優がわらう。

    「俺の役割はね、『人工王子』なんだって」
    「なんていうか…そのままと言うか…」
    「失礼なこと言うなぁ。…でもね」

    近づけた顔、音楽は遠ざかる。
    ぴしり、と微かな音を立てて、見つめた優の仮面に小さなひびが入る。

    「え、」
    「御伽噺なら、王子様が目覚めさせたお姫さまは幸せに暮らすはずだけど。俺は紛い物なんだ、氷雨を現実に返さなきゃいけない」

    仮想現実ではない、ただの現実へ。
    優の仮面のひびが、広がっていく。

    「…それで、人工?」
    「うん、ごめんね」

    すでに音楽は鳴りやんでしまった。
    さざめくように聞こえていた、青たちの声も聞こえない。
    温度が下がった気がして、氷雨は身震いする。

    ぱりん、と優の仮面が割れた。
    彼の頬には、王冠を逆さまにしたような絵が描いてある。
    逆さまの紛い物である、人工王子だからだろうか?

    優の指が伸びて、彼女の仮面を外した。
    合わせた剥き出しの額は、酷く冷たい。

    「おはよう、氷雨」
    「…おはよう、優さん」

    そして。

    「…おやすみなさい(そしてさよなら)仮想現実」

    呟く言葉。
    そこで意識は、闇に沈む。



    「…」
    「あ、おはよひーちゃん」
    「目が覚めたか?」
    「珍しいな、春日が寝るのって」

    ぼんやりした意識、聞き覚えのある声は、三兄弟のもの。
    ゆっくり頭をめぐらせれば、蓮や風姫の姿も見える。
    ついでに、自分に肩を貸してくれていたのは優だ。

    「…おはよう、ございます」
    「疲れてたんだねぇ、気付いたらうとうとしてたから、寝かせといたの」

    風姫がそう言って差し出してくれらミネラルウォーターを、ゆっくりと飲む。
    掠れた喉にそれはひりひりと染み込んでいく。

    「…わたし、寝てましたか」
    「うん、眠り姫みたいだった」

    笑う蓮の顔を、どこかで見たような気がした。
    ゆめを見ていたのかしら、そう考えるけれど、夢の欠片も思い出せないことに気付く。

    『忘れてしまうから』
    『丁寧に――』

    それは、誰の言葉だろう。
    だけど、幸福な夢だった気がするのだ。
    思い出せないのに、不思議なことだと思うけれど。

    「…かそう、げんじつ」
    「何か言った?氷雨」
    「いえ、何も」

    わらう、微笑む、ほどけるように。
    理解したのだ、ようやくすべてを。

    だってここは、いつまでも仮想世界だから。
    重なり合った世界の、筋書きのない物語。

    紡がれる物語が、くるくると廻り続ける世界に愛を告げよう。




    「ドラマチック・メリーゴーランド」をタイトルにしたかったけど長過ぎた件。

    久々の更新…?や、そんな久々ではないんですが。
    ここちょっとの間パソコンに触れもしないという、凜さんにしてはあり得ないことしてました(笑)
    これもね…ほとんど書けてたんですよ…(言い訳)

    仮想現実、は一応これがラストです。
    いろいろ詰め込んだ感満載ですが、個人的には満足!
    楽しかったです、こういうお話を書くのは。

    …書きたいことは多々あれど、パソコンさまがフリーズしそうなので、この辺で。

    妖精の欠片たち。

    ※仮想世界の、仮想現実。
    蓮と氷雨。



    ぺたぺた、ぺたり。
    さらに足を進めていくと、前方に知った後姿を見つけた。
    良かった、今度はいきなり現れたりしなくて。
    微かに安堵しながら、その背中に近づく。

    「蓮さん」

    声をかけると、彼――有沢 蓮はぱっと振り返った。
    けれどその瞳を見て、おや、と思う。
    普段は黒い彼の瞳が、今日は血のような紅色。
    何かあったのだろうか、と思ったが、先ほど出逢った彼の恋人の言葉を思い出して、こういうこともアリなのだろうと思いなおす。

    「こんにちは」
    「こんにちは」

    互いに微笑んで、挨拶を交わす。
    その背後で、床が色を変えていくのにはもう慣れた。
    今度は黒と白のボーダーだ。
    それを横目で見ながら、ゆっくりと言葉を押し出す。

    「さっき、風姫さんに逢いましたよ」
    「風姫…あぁ、『プリンセス』、ね」
    「プリンセス?」

    でてきた不可解な単語に、氷雨は数度瞬きをした。
    時折蓮が風姫のことを「僕のお姫様」などと称すことがあるけれど、プリンセスとはまた斬新だ。
    …というか、蓮が容姿の整った美少年だからいいものの、普通の状況では間違いなくサムイ発言だ、と内心で考える。
    もっとも、氷雨だって命は惜しいので口にはしないが。

    「何か、可笑しなことを考えているんでしょう」
    「え、」
    「冗談だよ、『マルスの君』」

    マルス、えぇと、それは確か軍神の名だ。
    火星の象徴、戦の天才。
    けれど雄々しい武勇伝を持つ彼は、ひ弱で非力な自分とは最も縁遠い神であろうと思われた。

    「…なんですか?それ」
    「だって君の腕に在るそれは、マルスと関連があるだろう?」

    そう言って蓮が示したのは、『Fe』の文字。
    しかし彼女には相変わらず、その文字の意味は分からない。

    「ただ、妖精には嫌われるね?彼らは冷えたそれが嫌いなんだってさ」
    「…あの、蓮さん…一応わたし一般人なんで…電波な会話には付いていけないんですが…」

    一応自分は普通の、一般人なのだ。
    ファンタジーとは縁のない場所で生きている…はず。
    ただ、神様の子供や稀代の暗殺者兄弟を友人にしている辺り、あまり普通とは言い切れないかもしれないけれど。
    でも、彼女自身はただの軍人だ。

    けれど、蓮はくすくすと笑った。
    まるで、氷雨こそが寝ぼけたことを言っているのだとでも、言いたげな表情で。

    「忘れたの?ここは仮想世界の、仮想現実だってこと」
    「…それって、一体どういうことなんでしょうか?仮想現実って…」
    「それは君次第だよ」

    結局解答は得られないらしい。
    せめてここに、青か蒼か…いや、やっぱり青だけで良いから、居てくれたらと思う。
    彼もまっとうに現実的に生きている自覚のある人だから、氷雨と同じような疑問をもって、もしかしたら明確な答えを持っているかもしれない。
    蒼、は…あぁ見えてどこか天然だし、藍はこの状況を面白がりそうだから遠慮願いたい。
    ついでに言えば、恋人である優も藍と同系統なので却下だ。
    …恋人に対して酷い言い草ではあるのだが。

    「三兄弟に逢いたいの?」
    「え?えーと…逢いたい、というか…」

    問われて言葉を濁した。
    どうしてさっきから、考えてる事が筒抜けなのだろう。
    サトラレにでもなったか、と一瞬青ざめるが、もともと蓮はそういう人間だったことを思い出した。

    「…そうですね。折角だし、逢ってみたい気はするかな」

    告げれば、蓮はすっと自分の背後を指差した。
    肩越しに覗くと、さっきまではなかったはずの扉がそこに出現していた。
    …もう、ツッコミは入れないことにする…疲れるから。

    「この中。きっと、彼らもいるよ」
    「そう…ですか。ありがとうございます」

    数歩進んで、蓮と並んだ。
    そこでふと思い出して、氷雨は振り返る。

    「ねぇ、蓮さんは」
    「うん?」
    「なんですか?『プリンセス』とか『マルスの君』とか…そういう類のものだったら」

    この、ふざけたキャッチコピーみたいなもの。
    きっと彼にもあるのだろう、そう思って問うてみた。
    すると、蓮はただ静かに笑って。

    「…これ、だよ」

    そう言って、掌を氷雨に向けた。
    ぶれた視点に一瞬眉をよせて、そこに目を向ける。

    「…トカゲ?」

    そこに在ったのは、トカゲと思しきタトゥー。
    そのまま彼の顔に視線を移すと、蓮はひょいと肩をすくめる。

    「僕は『サラマンダーの子』だよ。…さよなら、マルスの君」

    その言葉の、直後。
    触れてもいない扉が開いて、がくん、と彼女の身体は前のめりになる。
    見つめた向こうは、綺麗な闇。

    「わ、」
    「此処でのことは、きっと忘れてしまうから。できるだけ、丁寧に見つめておくと良い」
    「蓮、さんっ…!?」
    「僕とはここでお別れだ」

    バタン、と扉が閉まった。
    その向こうの景色は、彼女しか知らない。





    仮想現実、のふたつめ。
    うぉおお、やっぱり蓮しか出てこない…!!
    風姫と一緒に出せばよかった。

    たぶん次は兄弟でてきます。
    ばらばらで出そうか、みんな一緒に出てもらおうかはまだ考え中。

    書きたいお話がいっぱいあります。
    このシリーズも、雨三部作もまだひとつしか上げてないし。
    それ以外にも「彼と彼女」「カレとカノジョ」で考えてるちょっとしたシリーズもあったりなかったり(どっち)

    …お話で文章を書いてるのが、やっぱり幸せで楽しいな。
    レポートはしんどいんだぜ…!(そこか)

    せ、せんだと…!?

    はばばばばそういえば1000ヒットありがとうございます…!!

    今回はわたしじゃありませんでした(笑)
    途中で997くらいの時にいっそ自分で踏んでやろうかと思ってました…すみませんチキンで。

    ぐだぐだ自己満足サイトに足を運んでくださって、ほんとに本当にうれしい限りです。
    わたしにできることと言えば、こうしてお礼を言ったり、お話を書き続けることくらいなのですが。
    だけど思えばそれがスタートで、それがこうやってブログって形になっているんだよなぁ。
    幸せ者だと思います、わたしは、本当に。


    あ、えぇと。
    「1000踏んだよ!」って方が此処を見てくださってたら、ご一報くださると嬉しいです。
    御迷惑でなければ、なにかSSを書きたいなぁ、と思ってるので…そのリクエストもかねて。
    メールフォームでお名前と、リクエスト内容を送ってくださると祈月が小躍りします。
    あわわ、もちろんスルー可ですよ!
    でももしあれば嬉しいです…!


    でもって。
    この間フライングでいろいろ語ってしまったので(笑)改めて「なんか言うぞ!」ってないんですが。
    とにかく、ありがとうございます。
    感謝でいっぱいです。

    此処に足を運んでくれる人がいるから、頑張れるわけで。
    すごいなぁ、インターネットの世界って広大なのに、その中で出会えたことにありがとうを。

    これからも、もっと素敵なお話を書けるように頑張りますね!
    どうぞよろしくお願いします。



    「時計塔の金魚姫。」
    祈月 凜より、愛をこめて!

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    プロフィール
    HN:
    祈月 凜。
    年齢:
    34
    性別:
    女性
    誕生日:
    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
    MPだけで生き延びることは可能ですか?

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