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※カレとカノジョ。
「あ、」
「なに?」
「枝毛」
呟いて彼女は、自分の髪をつまむ。
少し眺めて、けれどすぐに指を離した。
しゃん、と髪が元の位置に戻るのを、なんとなく眼で追ってしまう。
「ほんとは、見つけたらマメに切った方が良いんですよね、たぶん」
興味がなさそうにそう言って、髪の毛を後ろに流す。
柔らかに背中で弧を描く、茶色い髪。
実は彼女のその髪に触れるのがひそかなお気に入りだというのは、未だ伝えたことがない。
きっと告げたら、ひどく複雑そうな顔をして。
困ったように微かに首をかしげて、それからそっと微笑うのだろう。
当り前のようにその光景が目に浮かぶあたり、俺はもうだいぶ彼女にやられているのだと苦笑した。
「伸びたよね」
「そう…ですね。この前切ったのが、もう三カ月くらい前になるのかな」
後ろから抱きしめて、髪を掬った。
猫っ毛で絡まりやすいそれは、確かにすこし傷みが目立つ。
「うーん…やっぱり羨ましいです」
「何が…誰が?」
「真っ黒で艶々で、さらさらのストレート」
「…あぁ」
言われて、彼女が羨む髪の持ち主の姿を思い浮かべた。
神様の子供。
血が通っていることが信じられないくらいの、人形じみた美貌の少女。
彼女の見事なロングヘアは、確かに驚くほど綺麗だ。
「よし、やっぱり切ってこよう」
ひとつ頷いて、思い定めたらしい。
何かを決めた後のどこか晴れやかな表情で、彼女は俺を振り返る。
「美容院行くと、なんとなく気分が変わるんですよね」
「…そういうものなの?」
「なんとなく、ですけど。まるでお姫様みたいに丁寧にシャンプーとか、ブローをしてもらって。女の子気分が上がるというか…」
「へぇ…」
そこで彼女はくすっと笑って、楽しそうに言う。
「それに、担当の美容師さんが格好いいんですよー」
「…ふーん?」
抱きしめる腕に、ほんの、ほんの少しだけ力を込めた。
「どんな人なの?」
「爽やか好青年、って感じの、明るい人ですよ」
「…君爽やかキャラって苦手とか言ってなかった?」
「その人は良いんです、なんか許せちゃう感じだから」
俺が嫉妬しないからか、割合彼女はこういう話を素直に聞かせてくれる。
進んで話すことはあまりないが、問えば教えてくれることがほとんどだ。
『先輩は妬いてくれないからつまらない』と拗ねたように言う彼女は、俺の独占欲の強さを知らないのだ。
見せてないだけ、言っていないだけ。
その方が余裕を取りつくろえるし、何より油断した彼女から多くの情報を引き出せるから。
笑顔で必要な情報を集めて、そこから計算と戦略を立てていること。
君はずっと、知らないままで良い。
「ついでだからトリートメントもしてもらってこようかな」
「良いんじゃない?つやつやになるよきっと」
…まぁ、流石にね。
職業でそれをする相手を攻撃したりは、しないけれど。
「いつ行くの?」
「そうですね…次の土曜かな…」
「よし、じゃあその後はデートしようか。いちばんに俺に見せて?」
「ふふ、分かりました」
だけど、切った髪を口実に。
甘やかされるのが下手くそな彼女を、思う存分甘やかして可愛がってあげようかな。
きっと困り果てた顔で、恥ずかしがるに違いないから。
そんな君に、さらに甘い言葉を告げてあげる。
それくらいの意地悪は、許されるだろう?
「…楽しみだな」
「えぇ、可愛くしてもらってきますから」
「ん、期待してる」
おどけたように笑った彼女の指先に、キスしてちいさく微笑んだ。
(罠は気付かせずに張るものだよ)
髪切りてぇえ…!!(お前か)
わたしのゆっるい天パは、伸びてくるとわっさー!ってなるから鬱陶しくてたまらんのです。
でもがっつり梳くと髪が好き勝手はしゃぎまくるので困るのです。
いまでこそ「ゆる巻きですが何か?」みたいな顔してますけどね(髪が)、これあと10センチ切ったら縦横無尽に跳ねまわるよこいつ…!!
でも髪切りたい。
どうでも良いことをぐだぐだ語ってしまった…。
あ、ちなみにこの後カノジョは美容師さんに遊ばれて、ふたつ結びとかにされてちょっと落ち込む、というネタがあります(笑)
で、終わる時間に迎えに来てくれてたカレに見つかって笑われます。
そしてカレはしばらく拗ねたカノジョに口を利いてもらえなくなります(長い)