「絆、きずな。お願いがあるんだけど」
「…姉さんの『お願い』って実はたいしたことないものばっかだよね」
「手のかからない良い姉じゃない」
「なんか違くね?」
「それはまぁどうでも良くて。絆さぁ、春休みネズミーシー行くんでしょ?」
「あー…うん、一応。ていうかネズミーシーって…」
「じゃあさ、アレ買ってきて。シーにしかいない、くまのぬいぐるみ」
「あー、なんだっけ、ダッフィー?」
「そうそう。はいこれ、お金ね」
「…多くね?」
「だーって幾らか知らないんだもーん。あ、余った奴はお小遣いにしていいから」
「え、や、ちょ、でも、」
「だって絆バイトしてないし、どうせこっからお昼代切り詰めて捻出しようとか考えてたんでしょ」
「ぐ、」
「絆おねだりすんの下手くそだから。お姉ちゃんは知ってるのよー」
「…だって、チケット代出してもらうのでさえ結構心苦しいというか、」
「…ほんとに絆は遠慮しいね。もうちょっとワガママ言ったって良いと思うけどねぇ」
「…姉さんには言われたくない」
「はいはい。だからこれ、お駄賃代わりってことで」
「………いいの?」
「男がダッフィー抱えて帰ってくる恥ずかしさに比べたら、ねぇ?安いもんですよ」
「…ありがと」
「こちらこそ。その代わり、楽しんできなさいよ?」
(姉と弟とネズミーシー)