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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    しずんで、

    わたしの書くお話の男性陣は、とにかく相手の女の子のことが好きすぎると思うんだ。
    もちろん、それは私がそういう関係が好きだからなんだが。

    でもたまには変わったパターンも書いてみたいなー、とか。
    ほらこうさ、好きだからこそ傷つけちゃうみたいな。
    と思って書いて見たのだけど、やっぱりなんか上手くいかないという。


    とりあえず追記に放り込んでおきます。




    あおい光に沈む塔。
    向かい合うのは少年と少女。

    「…僕は、君が嫌いだ」

    少年が呟いた。
    思いつめたような声で、床の一点を睨みつけながら。
    彼のしろいシャツは、窓から差し込むその儚げなあおい光を映しては揺れる。

    「…うん」

    少女は頷いた。
    穏やかな声で、俯く少年を見つめながら。
    彼女のながいスカートは、あおい水底をおよぐ魚のひれのように踊る。

    「君が嫌いだ、大嫌いだ」
    「うん」
    「顔も見たくない。こうして向かい合ってるだけで苦痛だよ」
    「うん」
    「君のことなんて、大っきらいだ」
    「うん、知ってる」

    繰り返されるひどい言葉。
    それこそ、泣いてしまってもおかしくないような。
    けれど少女は微笑んで、決して交わらない視線をただ少年に向けている。
    ぱちりと瞬くおおきな瞳を、少年は見返すことができないまま。
    何もかも見透かされて透き通されてしまいそうな気がして、それが彼には怖かったから。

    「嫌いだ」
    「そうだね」

    抵抗するように絞り出す声。
    あっさりと頷かれ、少年は窮したように肩をよせる。
    少女はその様子を見て、視線を柔らかににじませた。
    ひたすらに俯く少年に、少女の顔は見えない。

    「…君のことが、嫌いだよ」
    「分かってるわ」
    「なんで怒らないんだよ。なんで、泣かないんだよ」

    わたしだってきらいだと。
    そう、言えば良い。
    祈るような気持ちで、少年は繰り返す。

    「嫌いだって言えば良いだろ。何でそんなこと言うのって、泣けばいいだろ」
    「…」
    「僕のことなんか、嫌いだって、」
    「――わたしは」

    少年の言葉をただひたすらに肯定し続けていた少女が、不意に。
    割りこむようにして、口を開く。
    続く言葉を想像したのか、思わず少年は少女の顔を見る。

    「…っ」
    「それでも、わたしは。君のことが――好きだよ」

    柔らかに、それこそ、とけてしまいそうなくらい。
    彼女は甘やかに微笑むのだ、ようやくこちらを見た少年の瞳に向かって。
    魔法にかかったように目線を逸らすことが出来なくて、彼はただ小さく息をのんだ。

    「わたしは君が好きだよ」

    繰り返されて、ようやく彼はそっぽを向く。
    けれどその顔は、このあおい部屋に似つかわしくないくらいにあかくて。

    世界が、染まる。
    鮮やかに、音を立てて、見事なくらいにうつくしく。
    変わる、浮かび上がる、ふたりきりの世界が。

    「…ばか、じゃないのか」
    「そうね。それも知ってる」

    それは、それは――僕だって。
    言いかけた言葉はただ呑み込んで、少年は少女の頬に触れる。

    (とけいとうのきんぎょひめ)
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    1990/10/10
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    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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