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※一応、彼と彼女。
いちおうね。
あつい、あつい夏の日だった。
その日は朝から風がなくて、窓にぶら下がった風鈴が今日は一回も鳴ってないなぁと考えたことを覚えてる。
時間の流れすら失ったような、どろりと溶けた夏の真昼。
そのくせキラキラと景色だけは鮮やかに目に映ったことを、今でも良く覚えてる。
「ひっく……ひっく…」
小さい頃の私は背が低く、しょっちゅう転んでは泣いてるような弱虫な女の子だった。
クラスの男の子はそれをからかい、よく帽子を取り上げたりして意地悪をしていた。
「ひっく…おか、あさぁん…」
涙でかすんだ視界。
見上げた先には、男の子がふざけて放り投げてしまった私の帽子。
見事に高い枝に引っかかって、私はもちろんその男の子も取れなくなってしまったのだ。
「かえしてよぉ…帽子、かえしてよぉお…」
泣きじゃくる私を困ったように見つめて、彼は木を揺らそうとするけれど。
からかうように数枚葉っぱが落ちるだけで、真っ白な、それこそたった一輪ついた花みたいな私の帽子は戻ってこない。
「ひどいよ…」
「わ、悪かったって、ばっ」
彼も困っている。
それはもちろん分かっていた。
だけど一度泣きだしたら止まらなくて、ぬぐっても溢れてくる涙は乾ききった地面を濡らす。
「――あら、」
その時だ。
りん、と硝子の鈴を鳴らすような、酷く涼しげな声が私たちのすぐそばから聞こえた。
「「!?」」
はっとして振り返る。
その先にいたのは、とてもとても綺麗な、お姉さんだった。
「(…雪の女王、)」
思い出したのは、少し前に読んだ童話。
仲良しの幼馴染、その片割れの男の子を、雪の国に連れて行ってしまう。
うつくしくて、つめたくて、真っ白な。
雪の国を統べる、女王様のことだ。
「どうしたの?」
けれどその女王は春みたいに微笑んで、私の顔を覗きこんだ。
咄嗟に言葉が出なくて、私はただ指先で木を示す。
帽子ね、と彼女は微笑んだ。
「引っかかっちゃったの?」
「…えっと、」
「おれがっ!」
割り込む声は、私の帽子を放り投げた彼。
あんまりに美しすぎる女王を前に、けれど彼は一生懸命に言葉を選ぶ。
「おれがっ…悪いんだ、こいつの帽子、投げちゃったから…」
そこまで言って俯いてしまった彼の頭を、女王は優しく笑ってくしゃくしゃ撫でる。
それから私の乱れた髪にもその白く冷たい指先を通してくれた。
「泣かないで?」
「あ、え、とっ…」
「大丈夫、待ってて」
女王はそう言って、その腕を伸ばす。
セーラー服の裾がひら、と弧を描いた。
そうして。
「わっ!」
「なんだ!?」
音を立てて。
私の髪を、スカートを、彼のシャツを。
揺らして、躍らせて、わらう音。
――通り抜けたのは、一陣の風。
「…あ、」
ふわ、と白い帽子は宙に舞って。
まるで、花が風に散るように。
楽しそうに私の真っ白な帽子は、同じように白い女王の腕の中に落ちてきた。
「はい、どうぞ」
「あ…あり、がとう…」
ぴたり、と風はやんだ。
女王は笑顔で、私に帽子をかぶせてくれる。
やっと戻ってきた感覚に安堵の息を吐いて、わたしはぎゅっと目を閉じる。
「――風姫っ」
ぱた、と後ろから足音が聞こえた。
顔をあげて視界に入れたのは、女王と同じくらいの年の、男の人。
ちょっとだけ長い黒髪が、真っ白なワイシャツに映えてきらめく。
「あ、蓮ー」
「何してるの君っ…もー、こんなとこで遣って…」
「えー、非常事態だって」
くすくすと可笑しそうに笑う女王に、その人は困ったように笑い返す。
この人も春の人だ、とすぐに思った。
女王の隣にいるのだから、この人は王様だろうか?
王は私たちを見下ろして、少し首を傾げる。
「暑いから、あんまり外にいちゃだめだよ」
「…はぁい、」
「ちゃんとお水も飲むんだよ」
ぽん、と帽子越しにふれた王の手は、女王と違ってあたたかく。
私は思わず、隣に立つ彼のシャツの裾をつかんだ。
それを合図にしたみたいに、彼はぴん、と背筋を伸ばす。
「え、っと!あの、ありがとうございました!」
「ありがとう、ございました…」
「行くぞっ」
「う、うん…」
とられた腕。
背中で笑う、女王と王。
雪の降る春、暑く熱い夏の日差しに。
「またねー」
「気をつけて」
「…なぁ、」
その声に隠れるように、耳に届いた声がひとつ。
「えっと…帽子、ごめん」
私はそっと笑って。
繋がれた手に、力を込めた。
「ううん、いいよっ」
長い散歩に出ていた私の帽子は、うんと甘い夏の匂いがした。
(白い帽子と雪の女王)
すっごい楽しかった…!
名前出しちゃったけど、これはイレギュラーってことで。
他人から見た誰か、を書くのってすき。
ちなみに作中の私と彼は中学校、高校と同じとこに通います。
ぐだぐだと腐れ縁続けてく感じ。
泣き虫だった女の子もそれなりに強かになり(笑)帽子取られたら取り返すくらいになります。
ただ今でも涙腺はよわい。
感動ものの映画とか見ると泣いちゃう。
で、彼にハンカチとか渡される。
「…泣き虫」
「うっさい、」
「女王に笑われんぞ」
「…(ぐしぐしっ)」
「あぁあおま、バカこするな!赤くなる!」
みたいな幼馴染。
二人の間で「女王」「王」はよく引き合いに出されるワードです(笑)
※彼と彼女。
天使シリーズ。
僕の名前を呼んでよ。
この輪郭が、溶けてしまわないように。
「…ねぇ、」
「ん?」
君が振り返るより先に、首筋に絡めた腕。
彼女はゆるく笑って、冷えた指でそれに触れる。
「どうしたの、珍しいね?」
君から擦り寄ってくるなんて。
少しだけからかうような、けれどその実本心からの心配を込めた声。
君は弱い。
心も、身体も。
求めては突き放す冷えた言葉、凍える冬の寒さ。
たったそれくらいのものにだって、君は耐えられないのだろう。
「…何でもないよ」
だから僕は決めたんだ。
弱くて脆いこの人を、形作るのは僕だって。
守るよ、なんて言えないけど。
それでもこの御霊が堕ちるその時まで。
僕が此処にいようと。
「…変な天使」
「うるさいよ」
わらう声に、救われる。
いつだって。
縋りつく腕ははたしてどちらのものなのか。
「…ねぇ、」
あたしの天使さん。
君はまるで謳うように囁いて。
僕の心に火を灯す。
「なに?ご主人さま」
「…どこにも行かないで、ね」
捧げられた言葉には、ただ忠誠を誓おう。
(50 どうか、ご英断を)
たぶんお題消化。
でも使ったのは最後の括弧内。
悪あがきのようにお話を書いてみました。
あーあーあー…仮想世界書きたいんだけどなぁ…!!
とりあえず、いろいろ頑張りますよ!
※彼と彼女。
ちょっと彼が女々しい←です。
僕は。
猫になりたい。
そう言うと君は笑う。
「どうして?猫になったら、こうやって抱きしめたり、キスもできないよ」
確かにそうだねと、僕も笑う。
納得したふりをして、少しだけ困ったような表情で。
抱きしめる腕に力を込めると、君はくすぐったそうに笑うから。
もちろんこの居場所だって愛おしいよ。
安堵しきった顔で君が眠る、それを眺められるのは僕だけで。
分かっているけれど、それは時折酷く切ない。
「あたしは君が好きだよ」
そう囁く君の言葉に、嘘がないことくらい分かってる。
僕が好きだと君は告げて、だからこそ触れさせない部分を作ろうとする。
それは、あまりに優しい傲慢だ。
「僕も、好きだよ」
嗚呼、だけど、だからね。
僕はやっぱり、猫になりたいと思うんだ。
そう、猫になったら。
理由すらなくただ君の傍に居られる。
擦り寄って、高い体温を分け与えて。
軽い声で数度鳴いて、ざらざらした舌先で涙を掬おう。
そうして君が泣き止むまで、じっと見守っていてあげられる。
君が僕にだけ作る柔らかな壁、一肢で飛び越えて愛を鳴く。
優しい君の脆い嘘、見透かしてそれでも、傍に居よう。
「(…あぁ、それに)」
隠すように、わらう。
薄く淡く。
猫になって、君に飼われるのだって。
僕にとっては素晴らしい日常で在ることに変わりはないんだ。
赤い首輪はないけれど、繋ぐ鎖は君の手に。
猫の首輪って赤のイメージですが、昔うちで飼ってた猫はピンクの首輪してました(関係ない)
ちなみに「猫になりたい」はスピッツの曲から。
良い曲です、ニコニコで探すと良いと思うよ!(なんの宣伝)
※短文。
目を閉じて耳をふさいで、口をつぐんで。
逃げたっていいんだ。
その透き通る綺麗な瞳を凍らせる、醜い世界から。
その柔らかな音にだけ浸されていた耳を刺す、痛い言葉から。
その謳うために彩られた唇を震わせる、冷酷な拒絶から。
にげたって、良いんだ、良いんだよ。
歩くと決めた君を攻撃するすべてのものを、諦めてしまうことだって悪じゃない。
何度だって繰り返すよ、僕は君が傷つくことに耐えられない。
嗚呼だけど、それでも君は笑うんだ。
見つめた瞳はなお澄んで、告げられる言葉は穏やかで。
君はまだ世界に絶望しない。
顔を上げる君を見て、僕は諦めかけた世界にもう一度微笑する。
高らかに叫ぶのは宣戦の布告。
嘲笑う世界、だけど僕はもう決めたんだ。
壊れたオルゴールの待つあの小さなお城にはもう戻れないけれど。
それでも君が進むというなら、僕はどこまでだって付き従おう。
いつの日か君が朽ちるその時まで。
どこまでも過保護な「僕」。
わたしの書く男性陣は基本的に女の子に甘いです。
とくに何も考えずにカタカタしました。
お話が書きたいのに書けない状態はまだ続いてます…七夕書きたいのになぁ。
とりあえず、頑張る。