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「あ、そうだはい、これ」
「何?(がさごそ)…あ、いちごポッキーだ。どしたの?」
「いや、だから『はい』って」
「へ?」
「え?」
「あ、いやなんでいちごポッキー?」
「嫌いだっけ?」
「ううん、好きだけど」
「なら良いじゃない」
「うん、嬉しいけど。なんでいきなりいちごポッキーなのかなって」
「…だって好きだろう?」
「うん、うーん?…や、そうでなくてね?別にケンカしたわけでも頼んだわけでもないのに、どうしたのかなって思って」
「あー…あぁ、そういう意味の『なんで?』ね。やっと分かった」
「…あ、何いまので理解したの?」
「うん。…えーと、ね?コンビニで見かけて、あぁこれ君が好きだったなって。買ってったら、君が喜ぶかな、って思って」
「うん。…えへへ、覚えててくれたんだ」
「そりゃあね。君のことだし」
「…うれしい」
「…恋愛とか好意とかって言うのはさ、相手にいかに『無駄』を捧げられるかなんだよねつまりは」
「お、お?いきなり哲学的になったね…!?」
「あーうん、まぁ性分だから。ついてきてね」
「あ、はい」
「失礼なのを承知でこんな言い方するけど。クリスマスとか誕生日って、云わば恋人たちのイベントだから。こういう時に何かをするのはある意味で『当然』なわけだよ」
「あー…確かにそういう雰囲気だよねぇ。まぁ楽しんでるし良いとは思うけど」
「うん、僕も結構好きだしそれは問題ないんだ。…でだ。そういう『当然』があるからこそ『無駄』の意味が生きてくると思うんだよね」
「無駄の意味ですか」
「そう。『当然』のラインからは外れたその感情を、どれくらい相手に捧げられるか、が重要なんじゃないかなーって」
「…必要じゃないからこそやる意味があると?」
「たぶんね。…別に僕がこうやっていちごポッキーを買ってくる『必要』はなかったよね」
「うん、そうだね」
「『必要』はないけれど僕はその必要なんてないところで君に喜んでもらいたくて、だから男が買うにはちょっぴり恥ずかしいこのピンクのパッケージのポッキーを買ってきちゃうわけで」
「あー…確かにこのパッケージはちょっと恥ずかしい感じだよね」
「もちろん君が喜んでくれたことでそれだって帳消しなんだけどね。…必要のないもの、は無駄とくくるとしたら。その無駄の部分でこそ、相手を喜ばせたいって思うのが恋愛の醍醐味なんじゃないかなって思う」
「あ、なんか分かった気がする」
「そう?それは良かった」
「でも無駄と言えばさ」
「うん?」
「君があたしの嗜好品を覚えててくれてるのもあたしに『無駄』を捧げてくれてるってことだよね」
「…ふふ、」
「あたしの好きなもの嫌いなものって、君にとっては覚えてても人生のなんの役にも立たない事よね。でもそれをわざわざ覚えててくれてるって言うのは、やっぱり『無駄』をくれてるんだろうなーって」
「それをしたいって思うのは君だからだけどね」
「…えへへ。ありがと、嬉しい」
「じゃあ紅茶でも淹れようか?一緒に食べよう」