滑り込みハロウィン。
解りにくいけど久々仮想世界メンバー!
夜の街に、ひそやかな声。
熱狂と興奮をひた隠して、忙しく影は躍る、踊る。
積もった飢えすらも楽しもう、だって今宵は宴の日。
「ひーさんはやくはやくっ」
「やだ、待ってください晃さん。…あ、桃花さん、足下気をつけて」
「え?あら、本当。ありがと、氷雨ちゃん」
くすくすと、くすくすと。
押し殺した笑い声が、ひたりと空間を満たす。
「青くん、飾りナナメになってるよ」
「マジ?悪い蓮、直してくんね?」
「はいはい。…ちょっとかがんでよ、青が無意味にでかいから届かないよ」
「無意味!?」
さぁさぁ急いで、なにせ時間がないのだから。
夜が支配するこの時間だけ、僕らは世界に躍り出る。
「蒼、そっちは?」
「問題ない。優の方こそいけるか?」
「もちろん。任せてよ」
顔を見合わせて、微笑んで。
踵を鳴らせばたちまち「素敵な」魔法がかかる。
「上田さん、ごめんそっち持って」
「こっち?…はい」
「ありがと。…助かるよ」
「別に、たいしたこと、してない、し」
バスケットはもちろん、空っぽで。
にゃあおと黒猫が歌ったら、それが合図。
――さぁ、宴のはじまりだ。
「みんなー、準備できた?」
『できた!』
「よっし、じゃあ行くよ!」
暗い夜道に、足音が響く。
伸びる影はどれも歪な、奇妙な、異形ばかり。
石畳をかつんと踏み鳴らして、彼らは囁いた。
「あら、まずは最初の獲物(ターゲット)」
「んー、美味しそう。ぼくお腹すいちゃったな」
良い子はおうちへお入りなさい、はやくベッドでお眠りなさい。
良い子でなくとも、今宵ばかりは大人しくなさい。
でないと、でないと、でないと。
「こんばんは。良い月夜だね?」
でないと――『彼ら』と、出遭ってしまうよ。
「ねぇ、今日限りの魔法の呪文を知っている?」
こつり、足音が近づいた。
浮かんでいた筈の月は、今やもうどこにも見当たらず。
「知らなくても関係ないけどな」
「そうそう、俺たちに見つかったのが運の尽きだ」
囁かれる声は、それはそれはうつくしく。
背筋すら凍りそうなほどに。
見開いた視界の真ん中で、にっこりと異形の彼らは微笑んだ。
「お菓子をくれなきゃ――」
「悪戯しちゃうよ?」
もっとも、と。
呟いかれた声が、最後のおまけのように耳に滑り込む。
「もっとも、お菓子をくれたって悪戯するけどね」
(夜の隙間に月を隠して、世界は鮮やかに反転する)
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