※仮想世界。
ちょっと趣を変えて。



雨が、降る。
今日は朝からどんよりと重たげな曇天で、今にも降り出しそうな天気ではあったけれど。
午後になった途端に落ちてきた雨粒は、あっという間にその勢いを増した。
ざぁざぁと音を立てて降り注ぐ雨は、心臓を冷やすような灰色をしている。

「春日、」
「す…五十嵐先輩」

肩に慣れた体温が触れて、思わず普段の呼び名を口にしそうになる。
すぐに何でもないふりを取りつくろって顔を上げると、声の主は穏やかな苦笑を浮かべてわたしを見下ろした。

「…降ってきたね」
「そうですね」

雨の日の軍部は、嫌いだ。
元々色彩の少ないこの場所が、より陰鬱な表情に変わるから。
灰色のデスク、キャビネット。
それらはますます暗い色になって、わたしの居場所を奪う。

「…雨は苦手です」

呟いた言葉は、誰に向けたわけでもない。
ただ口をついて転がった、それだけ。

雨の日は、視界が悪くなる。
向こうから何かが近づいてくるような気がして、それが怖いのだ。
得体のしれない、ナニカ。
そんなものを生み出すわたしの心が正体だってこと、とっくに気付いてはいるけれど。

紅茶でも淹れようか、そう思ったとき、背後のドアが勢いよく蹴り開けられた。

「『奴ら』が出たぞ！！」

その言葉に、わたしの心臓はぎゅっと縮み上がった。
強く握りしめたスカート、すくめた肩が強張って痛い。
心なしか肩にふれたままの手にも、若干の力がこめられた気がした。

「どこだ！？」
「西区三番街だ！」
「今度は誰だっ」
「今身元を確認しているが、おそらく区長で間違いない…！」
「殺したのは『奴ら』で間違いないのか！？」
「あぁ、今回も現場に『花』が――」

花。
りん、と清廉なイメージが、頭の中で組み上がる。
それは巷で口に上る『奴ら』とは似ても似つかない、イメージ。

「くそ…！軍をおちょくっているのか！！」

喪服の殺し屋。
冷酷で無慈悲、凍るように鮮やかな手つきで命を奪う。
そうして彼らは、血の海にいつも一輪の花を手向けていくのだ。

「…優さん、」
「……なに、氷雨？」

指に触れる。
そうして漸く気付くのだ、わたしは怖がっている。

優しい彼らが、血を浴びることを。
そうして何時か、心無い人間によって、彼らがその歩みを止められてしまうことを。

どうか、どうか、お願いだから。
止まることなく、進み続けて。
目を奪って、その『ブルー』で。

「至急現場に向かえ！」
「監査を回すんだ！」

「…春日、俺たちも行こう」
「はい、」

バタバタと慌ただしく部屋を横切る足音。
嗚呼、わたしも行かなくちゃ。
赤い海に花の浮かぶ、彼らの作った世界へと。

知っているのだ。
彼らの残す花は、弔いの花。
死者に向けて祈る、その為の餞別なのだと。
わたしたちには、分かっている。

「（…どうか、）」

祈る。
くちびるだけで唱える、言葉。

この雨が、その赤を綺麗に流してくれればいい。

（儚く揺れる、あおい光を）




なんとなくイメージが浮かんだので。
わたし明日テストｗｗ何してんのｗｗｗｗ

こういうシリアスは書き易くて良いです、楽しい。
自分がシリアス書きだったって思い出します（笑）

椎さんが以前「三兄弟は喪服と一輪の花がトレードマーク」みたいなことを言ってた気がするので（アバウト）、そのあたりを意識して。
それにしてもわたしの書く仮想世界はあんまり兄弟たちでてこない…頑張れわたし。

続きにメモ代わりに、それぞれに似合う花考えてみた。

なんとなく、次男にはアマリリスが似合いそうだなぁと思ってみる。
けっこう華やかというか、豪華な花です、確か。
調べてみたら花言葉は「誇り」だそうで。
悩んで立ち止まって絶望して、それでも前を向こうと足掻く彼にはよく似合うな、と実感。


意外なところで、でも納得したのが桃。
桃の花言葉は「天下無敵」だそうです。
たおやかで脆そうに見えて、芯はしなやかで強い。
ふわっと甘い色合いの中で、でも格好いい。
桃花さんのイメージだよなぁ、と納得してみた。

あと個人的には、ぜんぜん関係ないんですが「水蜜桃」という言葉が好きでたまりません。
透明感といい、響きといい、なんかうっとりしてしまう（笑）


長男はなぜかユリです、わたしの中で。
こう、すっと凛々しいイメージがあるからかなー、両者とも。
ある意味でとても潔いと思うのです、百合も彼も。
きっぱりと道を示すけど、それだけ。
正しさを押し付けたりしない、穏やかな潔さがあると思う。
長男はユリほど華やかに主張をしない気がしますが。
花言葉は「純潔」…うーん、面白みがない（えー）


三男はケシ。
…麻薬とか作られなかったっけ、とか思ったけど考えない方向で（笑）
花言葉は「恋の予感」らしい。
青春だね。
彼はオレンジとか黄色とか、柔らかそうでなおかつ明るい色の花がいっぱいなイメージでした。

なんか、ケシの花は花が開くときに上を向くそうで。
まだまだ少年な三男に贈りたい（怒られそうだけど）


楚夜にはクロタネソウ。
「なんか似合う花ないかなー」と思ってサイト見てたら一目ぼれしました。
薄い紫っぽい花の周りに、レースみたいに葉っぱ？がついてて綺麗。
花言葉は「とまどい」で、キャラの濃すぎるメンツに振り回される楚夜には似合うかな、とか（笑）
しかも英名が「ラブ　イン　ア　ミスト（霧の中の恋人）」だそうで。
も、すごいときめいた…！！分かりやす過ぎてすみません。


晃はヤマブキソウ、花ことばは「清々しい明るさ」だそう。
…次男には「嘘つけ！」って言われそうｗｗ
花弁が四枚ですっきりしてて、なおかつぱきっとした鮮やかな黄色です。
ヤマブキ、って言うよりはもっとクリアというか…うん、ほんとになんか、すっきりした花。

なんだかんだで晃はじめっとしたところが少ないよなぁ、と思ってみた。