※仮想世界。
カラフルジオラマの続き。
プールについたよ!
規則的に繰り返される波の音。
香るのは塩の匂いではなく、薄っぺらな塩素の匂い。
造り物の、ここは楽園。
「…プールとか…何年振りだろうな…」
「さぁねぇ。俺学生時代以来かもしれない」
「わたしもだわー」
キラキラと眩しく反射する水面を眺めて、苦笑交じりに呟くのは成人三人組。
優と蒼、桃花。
当然のことながらこの日の為に新調した水着を軽くつまんで、顔を見合わせる。
プールなんて本当に久しぶりだ。
優に至ってはなんかもう思い出したくないくらい(といっても五年振りくらいだが)昔のことで、懐かしさとある種の気恥かしさが胸を覆う。
「ほらそこのパンダコンビとピンク黄緑、準備運動しなよ」
「「はーい」」
「誰がパンダ!?」
「誰がピンクだ!!」
それでもそこは一応年上。
物珍しそうにプールを覗きこむ彼らに声をかける。
呼称が気に入らなかったのか(藍と晃を除く)、目を剥いて睨まれた。
それでもちゃんと準備運動を始めるあたりが偉い、と思う。
「楚夜ちゃん楚夜ちゃんっあれ何かなー」
準備運動をしながらもあちこちに視線を投げていた風姫が、弾んだ声で問いかける。
指差しているのは曲がりくねったパイプのような物体。
楚夜は少し目を細めて、あぁ、と納得した声を出す。
「ウォータースライダーじゃないかな。あの中通って、プールに落ちるの」
「えー、良いな面白そうっ後で一緒に行こうよ楚夜ちゃんっ」
華やかな笑顔には逆らえるはずもなく。
まぁ良いか、と楚夜も苦笑して頷いた。
たまには子供っぽく、騒いでみるのも良いだろう。
なんせ今は夏休みで、ここはわざわざ遊ぶために作られたアミューズメントパークなのだから。
「…ん、分かった」
「えへーっ」
「ほらほら、お二方手が止まってますよ。ちゃんと準備運動しないと後で泣きを見ますよ?」
「「はぁい」」
氷雨にたしなめられて肩をすくめた。
それでも準備運動を終えて、いざ出陣。
「あおくんあいくんれんくん、どっから行く?」
「あー…と、どうすっか。蓮行きたいトコあるか」
「僕よくわかんないし。藍は?」
「えー、じゃあおれスライダーやりたい。姫とかも行くって言ってたし」
「氷雨ちゃんもスライダー行こうよー」
「えぇえわたし絶叫系はちょっと…!」
「絶叫系、ってほどのものじゃないとは思うよ?小さい頃の私が滑れたし…」
「でも怖いんですけどっ」
「あー…なんかお嬢が騒いでるぞ優」
「あの子高いとこから落ちるのダメなんだよねー、高いとこは平気なくせに」
「あら、でも楽しそうねー、ウォータースライダー」
「じゃあみんなで行くとしようか。はいじゃあ皆行くよー」
「待ってくださいわたしに拒否権とかは!?」
不満は口にするもののもう諦めたらしい。
最後尾をてろてろ着いて行きながら、氷雨は乾いた笑みをこぼす。
「おい春日…生きてるか?」
「青さん…。このメンツに措いて常識が通じるとは思ってませんよ」
「あぁ…ご愁傷様」
その一言で納得するあたりが振り回され組。
けれどもこうして眺める限り、此処は確かに楽園だ。
鮮やかに眩しく、うつくしく。
高揚した空気の中を、踊るように歌うように。
だけど此処が楽園たる本当の理由は、彼らがそこを彩るから。
「絶叫系が苦手と言っても軍でそれなりに訓練積んでますからね、大丈夫ですよ」
「いやな腹の括り方だなオイ」
「わたしもそう思います」
スライダーの入口が見えてきた。
走って先に向かったのだろう、すでに入口のところにいる藍と風姫、晃が大きく手を振って笑う。
それに手を振り返して、こちらも笑った。
嗚呼、嗚呼。
此処にいると、どうしたって笑ってしまうよ。
眩しくてたまらなくて、触れることはできないと思っていたもの。
その中に、今は己が居る。
「さて、と」
「行きましょうか」
背後で一際高く、水飛沫が上がった。
(相も変わらず此処は)
プールです。
わたしこのネタどこまで引っ張る気なんだろう…(えー)
こういうアミューズメント的なプールに行ったのが遥か昔のことなので、何があるのかさっぱりです。
とりあえずサマーランドのホームページ見ながら書いてます(笑)
そしてプールサイドは走っちゃいけませんよ。
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