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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    それでも世界は、

    ※仮想世界。
    プール編ラスト。



    てのひらの下で、ぱしゃんと水が音を立てる。
    耳に馴染むその音は、確かに自分たちは海から生まれたのだという記憶を呼び覚ますよう。
    揺らめく炎とともに在ることが、蓮にとっては最も自然で安らげるスタイルではあるのだが、こういうのも悪くはないな、と笑った。

    「ぷはっ」
    「わっ」

    突然顔を上げた蓮に、驚いて藍は肩を揺らした。
    それからにっこりと笑った。

    「ビックリしたー、蓮くん上がってこないから死んでんのかと思ったよ」
    「さすがにそれはないから。ちゃんと動いてたでしょ?」
    「やー、それがさぁ今眼鏡してないからよく見えないんだよね…なおさら色々危うい」
    「あー、そっか。目ぇ悪いもんね」

    なんとなく手足を揺らめかせながら、他愛もない会話に興じる。
    今は波のプールに一時間に一回の高い波が訪れる時間の為、何の変哲もないただの四角いプールに人はまばらだ。
    そう言えば風姫や楚夜はどこに行ったのだろう、とほとんど同じことを考えた。

    「もう四時かー」
    「あ、もうそんな?じゃあそろそろみんなと合流しなきゃね」

    めいっぱい遊んだあとに、帰るのはなんだかさみしい。
    それは大人に近い年齢になった今でも変わらず、むしろ昔よりも細かに感情を理解するようになったからか増したようにさえ思う。
    なんとなく、会話は途切れて二人して徒に水を掬う。

    「…蓮くん、あのさぁ」
    「なに?藍」

    ゆら、ゆら。
    水に声が溶ける。

    「おれさぁ、こうやって遊ぶ友達って、今まで全然いなかったんだよね」
    「…そう」
    「おれだけじゃなくて、兄さんたちもだけど。こんな仕事してるから、なんかね」
    「…うん」

    人間は、ああも容易く壊れる。
    そうして自分は、それを壊す手段を持っていて。
    時折、己が化け物のように感じるのだ。

    「だからさ、」

    そこで、藍は笑った。
    子供っぽい笑顔。
    眩しそうに蓮は目を細める。

    「こうやって遊んだりできるの、すっげー楽しい」

    囁く声は、まだ聞こえるけれど。
    それでもこうして楽しいと口にできることが、まだ少しだけ誇らしいと思う。
    くす、と蓮は軽やかに笑みを返した。

    「僕も、楽しいよ」
    「…そっか」
    「うん」

    なんとなく照れたように顔をそむけた、その時だ。

    「「うわ!」」

    ばしゃぁ、とすぐ近くで盛大に水飛沫があがる。
    頭からそれをかぶる形になって、思わず強く目を閉じた。

    「うっわ…鼻に入った…」
    「何、何なの?何が起きたの?」
    「あー、わりぃ足滑らした」

    聞こえたのは青の声。
    どうやら彼が勢いあまってプールに飛び込んだらしい。

    「…青、」
    「ん?」

    すい、と蓮が青に手を伸ばす。
    髪に触れるように耳のあたりを彷徨った手は、そのまま頭の上にのびて。
    ぽん、と軽い調子でそこに置かれた。
    そして。

    「えい」
    「のわっ!?」

    頭の上にのせた手を、そのまま力いっぱい下げる。
    …まぁ、つまりは沈めたのだ。
    青を。

    「わぁ蓮くんえげつねぇ…!!」
    「やー、可愛いもんでしょこれくらい」

    暴れるのを無視してしばらく沈めたあと、ぱっと手を離した。
    ぶは、と顔を出して、青が蓮をにらんだ。

    「てっめ…!何すんだよ!」
    「軽く沈めただけだって」

    ひらひらっと手を振って、蓮は全く悪びれた様子もなく。
    貴公子さながらの優雅な笑顔を向ける。

    「ヘタしたら死ぬぞおい!?」
    「あー大丈夫、僕青のこと信じてるから」
    「そんな信頼いらねぇよ!」

    「あー、あおくん達こんなとこにいたー。何してんの?」

    ぱたぱた、とプールサイドを走ってきたのは晃だ。
    どうやらじゃれあってるように見えたらしく、僕も混ぜてとでも言いたげな表情で。
    まぁじゃれあうにしては少々…少々?乱暴だが。

    「あ、あっきー。今ねー、にーさんと蓮くんが信頼を確かめ合ってたんだよ」
    「へーそうなんだ。いいなー」
    「ちっげーよ!鶴見てめぇ信じるな!!」
    「え、違うの?」

    コントのようなやり取りに、蓮は肩を揺らして笑う。
    自分が筆頭なのは棚上げだ。

    「あ、みんなこんなとこにいたー」
    「風姫」

    少し離れたところで風姫が手招きする。
    全力で遊びまわったのだろう、もう髪の毛もぐしゃぐしゃだ。
    それでも晴れやかな顔をしているから、きっと持った感情は同じもの。

    「なんかねー、そろそろ外出てみんなでごはん食べようよって。お腹すいたでしょ?」
    「あー…そういえば」
    「水泳って体力使うからな…」

    言いながら上がる。
    浮力に慣れた身体は重く感じて、ついでのように欠伸が出た。

    西日がキラキラと光って、プールはダイヤモンドの粉でも振りかけたようだ。
    思わず足を止めて、その光景に見入る。

    どうしてだろう。
    この世界は、時折酷くうつくしい。

    「早くー、追いてっちゃうよー?」
    「今行く!」

    きらめく世界に後ろ手を振って、足早に向かう。
    笑い、祈る、彼らのもと。

    (ビューティフルワールド)





    一応プール編終了です…!
    中途半端なのはもう気にしないことにした。
    ほんとはここに居ないメンバーも書こうと思ったんだけど、力尽きたんです。

    ちなみに最後の方、名前を書いてないのは仕様です。
    誰に当てはめて読んでも良いかなーって思ったので。
    お好きな誰かに当ててみてください!
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    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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