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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    祭壇にて、邂逅。

    ※こばなし。
    珍しく名前を持ったキャラクターです。

     

    たぶん、それが間違い。
    そして、唯一無二の、始まりだった。

     

    「千鶴ー、あんた今日サークルはー?」
    「ごめーん、今日は出られない」

    言いながら、私は荷物をカバンに放り込む。
    ルーズリーフ、ペンケース、テキスト。
    乱暴に詰め込んだプリントが、くしゃっ、と嫌な音を立てた気がして思わず眉をひそめた。

    「またぁ?千鶴最近顔出さないじゃん」
    「ごめんって。来週のはちゃんと行くからっ」

    ごめんね、と笑って口にして、私は教室を出る。
    最近どうにもさぼりがちだ。
    そろそろサークルにも顔を出さないとマズいっていうのは分かっているんだけど、なんとなく気分が乗らない。

    「(…まぁ、なんとなくっていうか)」

    理由は、分かっているんだけど。
    小さくため息をつくと、予想外に自分が疲弊していたことに気付いて苦笑がおちた。

    顔を上げると、絶望的なくらい空が綺麗。
    空があまりに美しいと死にたくなる、そう言った詩人は誰だっけ?

    「…良い天気ー」

    呟いた声は、酷く薄っぺらだ。
    同じくらいに軽く靴音を鳴らして、人のまばらな廊下を抜けていく。

    …やっぱり、私は欠陥品なんだと思う。
    私は世界で生きるには、向いていない。

    最初はあんなに楽しかったサークルだって、この時期、大学祭に向けてそろそろ準備をしようという頃になって急激に私の心は冷めてしまって。
    みんなで頑張って良いものを、と意気込む仲間たちを前に、私は張り付いたような笑みを浮かべることしかできない。

    熱くなることを馬鹿にしてるとか、そんなんじゃない。
    ひたむきに頑張る彼らの姿は、確かに美しいし私の胸を打つ。
    だけど、私はどうしたって当事者になれないのだ。

    どうでも良い、といったら言い過ぎか。
    だけど残念なことに、私には心底どうでも良かった。

    大学祭でうちのサークルが成功しようが、失敗しようが。
    何をするのかも、あぁそもそも大学祭っていつだったかな。

    興味が欠片も持てないまま、体感温度はひたすらに下がっていく。

    「…馬鹿みたい」

    私、が。
    あぁ、本当に馬鹿みたい。
    冷めてしまうなら、最初から触れなければ良かったのに。
    中途半端に手を出すからなおさら痛くて惨めになるってこと、分かっていたのに。

    階段を降りきったところで、ふっと嫌な予感がした。
    こういう時の違和感って当たるんだ、思いながらカバンを探る。

    「…しまった」

    予感的中、私は嘆息するように天井を仰ぐ。
    教室に、暇つぶし用に持ってきてた文庫本を置いてきてしまった。
    どうしようかか一瞬悩んで、けれど出した結論ははやい。

    「…戻るか」

    本を置いてくるのは、忍びなさすぎる。
    それに、本の中にはあの栞が挟まってるし。
    六階まで戻るのはそりゃあもう面倒くさいが、仕方ない。

     

    階段を上がって(ちょっとしんどかった…運動不足だろうか)、すぐ脇の教室の扉に手をかけた。
    中には誰も…いや、一人だけ。
    私が座ってた席の、ふたつ後ろにまだ一人、男子生徒がまだ残っていた。

    濃い茶色の後ろ頭が、小さく揺れる。
    横を通るときにちらりと見下ろすと、思いの外首筋が華奢で少し驚いた。

    「(あった)」

    男子生徒を追い越して、私の席に。
    文庫本は、入れたままの状態で机の中に入ってた。
    ホッとしてぱらぱらページを捲ると、栞もちゃんと中に挟まっている。

    たくさんの折り鶴の描かれた布でできた、手作りの栞。
    下の方には丁寧に「ちづる」と刺繍されている。

    「あの子」が私の為に縫ってくれた、栞。

    『千鶴ちゃんの布だよ』

    私の名前は千鶴、だから。
    たくさんの折り鶴が描かれたこれは、私の為の布なのだと。
    事実、あの子はこれと同じ布でウォークマンを入れる袋や、サブバックなんかを作ってくれた。
    今でもそれらはすべて、微かな痛みを呼び起こしながらも私の手元にあり、いくつかは変えることもないまま使い続けている。

    そこまで思い出して、不意にぐらりと世界が歪む。
    唐突なめまい、咄嗟に掴んだ椅子がぎしりと鳴った。

    「(…だめだ、)」

    あぁ、まただ。
    強く目を閉じる。
    瞼の裏に黒と白が混じり合う。

    「(だめだ、…だめ、なのに)」

    …余計なことばかり、考えてる。
    溺れる思考に、私は這い上がれなくなってしまう。

    「(…何時まで経っても、上手くならないな)」

    考えない練習は。
    吐きだしたため息で、沈んだ思考を追いやる。

    カバンに本をしまって、踵を返した。
    はやく帰ろう。
    はやく帰って、熱い紅茶でも飲もう。
    そうしたらきっと、この曇った思考回路もクリアになるはずだから。
    そう思って、数歩足を進める。

    「…冬野 千鶴さん?」

    やわらかな声に名前を呼ばれて、思わず足をとめた。
    ちょうど真横に並ぶ形になった、男子生徒が顔をあげる。
    にこり、と人好きのする笑顔に、一瞬警戒心がゆるむけど。

    なんで、私の名前を?

    「冬野 千鶴さん、だよね」

    確認を取らずとも、分かっているような。
    小さく顎を引いて肯定すると、彼はさらに笑った。

    「俺は夏見。夏見 鷹乃だよ」

    なつみ、たかの。
    聞いたことのない名前だ。
    これでも記憶力には自信があるのだ、いくら興味を失ったって人物を丸ごと忘れてしまうような頭はしてないはず。
    だから私にはそんな知り合い、居ない。

    距離をとろうと引いた足が、机にぶつかって思いの外大きな音を立てた。
    彼の瞳は私の逡巡も何もかも見透かしているようで、酷く居心地が悪い。
    あぁ、誰だろう。
    誰かに、似ている気がする…酷く。

    「…えっと」

    絞り出した声は乾いていて、私の声じゃないような響きに戸惑う。

    「うん?」
    「どちら様?」

    尋ねると彼は、夏見 鷹乃は大袈裟に驚いた顔をしてみせた。
    それから、自信満々に胸を張る。

    「君の救世主」
    「は?」

    救世主。
    ふざけた言葉、だけど彼は真剣な顔をする。

    「君を蝕むこの退屈な世界から、救ってあげる」

    そう言って、丁寧なしぐさで私に掌を差し出した。
    子供だって解るような、おいで、のポーズ。
    そうして彼は、そのポーズのままの言葉を吐いて、笑った。

    「おいで、千鶴。君に世界をあげよう」

    ――それは、悪魔の囁きだったのかもしれない。
    けれどその声は魅力的で、私は何を血迷ったかその手を取ってしまったのだ。

    「あ、」
    「…ようこそ、」

    我に返ったけど、もう遅い。
    にぃ、と口の端を上げて、彼は咄嗟に引きかけた私の手をしっかりと握った。
    見せつけられた先ほどまでとは明らかに種類の違う笑顔に、私は罠にかかったことを知る。

    「…何者、なの。ほんとうに?」

    問いには答えず、掌の温度だけが上がる。
    いつの間にか窓の外は薄暗く、細い月さえ顔をのぞかせた。

    「そんな不安そうな目をしないでよ。大丈夫、俺はちゃーんと救世主だよ」
    「…その言い方がすでに不安なんだけど」
    「あはは。まぁ、判断を下すのは千鶴だ」

    歪に彩られた世界。
    痛みはまだ、耳元で囁く。

    「(…あぁ、でも)」

    もし彼が救世主だと言うのなら、それに騙されるのも悪くはないのかもしれない。
    わたしは知らず微笑んだ。

    退屈な日常、上がらない温度。
    それに終わりを告げる声を、確かに私は耳にした。

    (最後の羊と救世主)

     

     

    書くだけ書いて放置してたお話。
    予定ではケース2、を上げる予定だったんですが、見つけたので。
    実はこれすっかり忘れてたんだぜ…!!
    まぁホントは上げなくても良かったんですが、せっかくなので乗っけてみます。
    勿体ないからね、うん。

    ちなみに教室に本を忘れて慌てて取りに帰ったのはわたしですよ!
    流石にエレベーター使いました。
    だって階段なんかで上がったら倒れること確実ですからね!(どんだけ)

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    世界を繋いで。

    ※メモともこばなしともつかない、世界のどこかで誰かが呟いた独り言。



    大事な人に巡り合えた奇跡を、いったい誰に感謝すればいいのかを彼女は知らない。
    優しい人に、その人の見る景色がうつくしく在るようにと祈らずにはいられない人に。
    出逢えた素晴らしい一瞬を、誰に向かって感謝すればいいのか分からなかった。

    神様に感謝したら。
    彼女の母はそう言った。
    けれど彼女も、そしてその母親も、さほど神様を信じてはいないことに気付いて苦笑する。
    そこに感謝をささげるのは、もし居るとしたらその神様にだって失礼な話だ、と呟く。

    それでも、誰かに、何かに。
    感謝の言葉を言いたかった。

    どうしてこんなにも、自分の周りには優しい人がいるのだろうと考えた。
    あんまりにも幸福で、得難いと思っていたから。
    何を語る時よりも真っ直ぐに、彼らについて彼女は大好きだと叫べる。
    その人たちと縁を繋げたことは、彼女にとっては紛れもなく宝物だ。
    考えると穏やかに心音が落ち着く、そんな宝物。

    神様に感謝をするのが可笑しいというならば。
    ならば、と呟く。

    ならば、自分は。
    彼らと、わたしの世界に感謝をしよう。

    縁を繋いでくれた、愛しい彼らに。
    彼らが大切だと知っている、己の世界に。
    たくさんの愛と、感謝を捧げよう。

    どうかどうか、明日彼らが見る世界が優しく在ればいい。




    ちっさいメモ。
    どっちに分類していいか分からなかったので、とりあえず小話に。
    ちょいちょいこういうのがあるんですが、その度に実は悩んでます(笑)

    大事すぎてどうふれたらいいのか分からないくらいに、好きなのですよ、というお話。
    相変わらずぶきっちょな人々を描くのが好きです。
    でもなんか、そういう一生懸命な人が幸せだったら良いなぁ、と思います。

    目指せ世界平和!!(壮大だなおい)

    さよなら黒白の君。

    ※こばなし。
    不完全な二人組。


    ひたり、と。

    頬にふれた手は冷たくて、私の頬も冷たくて。
    一瞬、ほんとうに触れ合ったのかも分からなくなる。
    涙でゆらゆら霞んだ視界、あなたはすこぅしだけ、笑った。

    「…自分が願ってあげないで、どうするの」

    あなたの声は、優しい。
    どうしてそんなに穏やかなの、どうしてそんなに柔らかなの。
    私なんかにかけてもらえるような、ぬくもりじゃないのに。

    何かを言いかけて開いたくちびる、けれど言葉は見つからなくてまた噤む。
    あなたの手が、数度私の頬を撫でた。

    「君が、君の幸せを願ってあげないで、どうするって言うの?」
    「…で、も、」

    幸せになっちゃ、いけない気がするの。
    私が、私なんかが、幸せになっちゃいけない。
    あなたを、あの人を、彼女をあの子を誰もを。
    傷つけてきた私なんかが、しあわせになる権利なんて。

    どこにも、在りはしないのに。

    「僕は君の幸せを祈ることはできるよ。だけどそれだけだ」
    「…っ」
    「君を幸せにしてあげられるのは、君しかいないんだよ」

    幸せを決めるのは、君の心だから。
    当り前のような言葉、だけど今の私にとっては何よりも難しくて。
    堪え切れずに目線を外す私に、それでもあなたは優しく笑う。

    嗚呼、嗚呼。
    どうして、どうしてそんな目で私を見るの。
    どうしてそんな目で、私を見ることができるの。

    綺麗な貴方の瞳に映る、弱くて脆くて汚い私。
    それだけで胸が痛くて、いたくて。
    涙がこぼれた。

    それを丁寧にぬぐって、あなたは言う。

    「君は、幸せにならなくちゃいけないんだよ」

    おまじないのような言葉。
    そしてある意味で、呪いのようなことば。
    私の心に、深くふかく染み込んで、突き刺さって。
    きっと一生抜けることも、溶けることもないだろうと予感めいたものを感じた。

    「どうか、幸せに」

    あなたは続ける、変わらない柔らかな声で。
    ゆるりと顔を上げて見つめたのは、私によく似た顔。
    私のいとしい可愛い、片割れの貌。

    「幸せに、なって」

    例えばあなたの願ってくれた場所に、私がたどり着けたとして。
    けれどそこにあなたが居ないことを、私はだれより知っていた。

    (白と黒、朝と夜、君と僕)

    (永遠に切り離せない、けれど永遠に交われない)




    ふわっと浮かんだものをぱしぱし打ってみました。
    双子の姉弟…かな?たぶんボカロの歌姫とその亜種を今日読んでたのでその影響かもしれません。

    なんていうか、こういう不健康な関係が好きです。
    不完全で不透明で、曖昧な。
    こんなんばっか書いてるから「病んでるよ!」って言われるんだろうなぁ…(遠い目)

    なんか最近うっすら仄暗いのばっかり書いてる気がします。
    次は明るいの書くぞー。

    揺らぐ世界の向こう側。

    ※こばなし。
    赤ん坊が生まれた時に泣く理由。



    赤ん坊が生まれ落ちた時に泣くのは、この世界に生かされることを嘆いているからだと聞いたことがあった。
    どうして自分を、どうしてこんな世界なんかに。
    それを嘆いて怒って恐怖して、だから泣くのだと。
    この毒だらけの世界に生まれたことは、彼の人にとってはきっと絶望だったのだろう。

    「…」

    空を見上げて、ひとつ息をついた。
    世界は汚物にまみれ、それでもなお美しく。
    澄んだ空、咲き揺れる花。
    だからいつしか赤ん坊は忘れてしまう。

    この世界が本当は、腐敗していること。
    僕は忘れたくなかったのか、それとも忘れ去ってしまいたかったのか。
    分からないまま、今日も生きている。

    小さな屋上から、世界を見下げて絶望。
    そして。



    「…ねぇ」

    後ろからの声に振り返ると、クラスメイトが立っていた。
    紺色のセーラー服、リボンとスカートがはしゃぐように風と踊る。
    決して洗練されているとは言えない制服は、ついこの間行われたばかりの生徒会役員選挙で候補の一人が廃止を公約に掲げていたような気がする。

    「何してるの?」

    どうでも良い記憶を次々辿る僕に、彼女は首をかしげた。
    無機質な瞳は、真っ直ぐに僕を映して硬く煌めく。
    その瞳を眺めて、僕も首をかしげた。

    「何って、なにが?」
    「あなたが」
    「じゃあ、君は何してるの?」
    「わたし?」

    問われて少しだけ彼女は驚いたらしく、数度瞬きをする。
    それから、そうねと少し笑って。

    「あなたを見てるの」
    「そう」
    「あなたは?何をしているの?」

    その言葉に僕も微笑む。
    そうだね、と小さく前置きをした。

    「…君を、見てるのかな」
    「そう」

    問うた割には興味のなさそうな声。
    それでも僕にとっては嫌いな部類ではなかったので、そのまま会話を続けるでもなく彼女に背を向けた。
    再び、フェンスに寄り添うようにして外を見下ろす。

    泣き喚いた赤ん坊は、それでも誓うのだ。
    己の中で、たったひとつの誓いを掲げる。

    この世界になど染まってやるものか、馴染んでやるものか。
    尊く気高く、生き抜いてやると。
    それは彼の人が最初に抱く崇高でさえある、祈り。

    だけどいつしかそれを忘れるのだ。
    見かけ倒しのうつくしい世界に騙されて。
    死ぬ間際に人が思い出すのは、最初の誓いとそれを果たせなかった己のことだろう。

    「ねぇ」
    「なに?」

    もう一度問われて、振り返る。
    さっきと変わらない様子で、彼女はそこに居た。
    少し強めに吹いた風が、彼女の髪を揺らす。

    うつくしい、とどこか遠くの方で思った。
    灰色のコンクリートに、くすんだ紺の制服。
    華やいだ色みのない場所で、彼女は潔くうつくしい。

    今度はきちんと身体を向けた僕を見て、彼女は満足げに笑った。

    「頼みがあるの」
    「僕に?」

    物好きだ、と思う。
    僕に、僕なんかに。
    うつくしい彼女のことだ、君が微笑めばいくらでももっと役に立つ人間がこぞって手をあげるだろうに。
    皮肉ではなく純粋に疑問としてそう感じた僕を、見透かすように彼女は僕を見つめる。

    「えぇ、あなたに」
    「…ずいぶんと物好きだね」
    「そうかな」

    彼女はゆっくり僕に近づいてくる。
    僕の隣に立って、フェンスに手をかけた。
    カシャン、と冗談みたいな音が鳴る。
    そして君はもう一度問いを重ねた。

    「…赤ん坊は、どうして泣くんだと思う?」
    「呼吸するんじゃなかったっけ?泣くことで」

    至極当然な答えを返すと、彼女はゆるりと首を振った。
    丁寧につくられた完成品、神様は戯れのつもりが本気で人間を造形するつもりになったんだと思わせるような。
    完璧な笑顔で、君は言った。

    「違うわ。赤ん坊はね、生まれたことに絶望して泣くのよ」
    「…詩的だね」
    「あなたもそう思ってるんでしょう?」

    何もかも知ったような顔。
    降参だと告げるために僕は肩をすくめた。

    「…何が言いたいの?」
    「そこで、頼みがあるんだって」

    繰り返される言葉。
    ぶつかり合った瞳が、互いに映したのは何か。
    せめて希望で在ればいいと、ぼんやり思う。

    「世界に絶望するのはとりあえず置いておいて、わたしだけを見てくれない?」

    君となら、すべて忘れて腐敗していくのも悪くはない。




    意味が繋がらないような話、を書いてみたかった。
    なんか、後味のイマイチすっきりしない感じ。
    個人的にこういう話は自分の中で折り合いがつけられれば大変好みなのですが、つけられないともぎゃー!ってなります(何それ)

    変に不器用に生きる人たちが愛おしくてたまらないのです。

    善き日に捧げる。

    高校の三年間は、はやい。
    よく聞く言葉だったけど、まさか己で実感することになるとは。

    光咲き、風が謳い、別れを惜しむ声がなびき。
    そして、わたしたちはここを巣立つ。

    「はやかったね、なんだか」
    「そうだね」

    苦笑を交えた会話。
    もうこの場所で、この制服で、こんな風に話すことはなくなるのだ。
    それはまるで嘘みたいで、また明日も、明後日も、こうやって会うのがふつうみたいだと思った。

    揺れるスカート。
    堂々と光を受ける校舎。
    愛着なんてないと思っていたのに、どうしてだろうこんなにも去るのが悲しいのは。

    「…淋しい?」
    「すこしだけ」

    此処を離れたって、会えなくなるわけじゃない。
    だけどもう、教室に行けば顔が見られたり、一緒にお弁当を広げることってないんだ。
    想い返してみればそれがもう素晴らしい『特別』で、当たり前だと思っていた日常は奇跡に満ちたものだったんだと今更のように思い知った。

    ねぇ、ねぇわたし、みんなのことが大好きだったよ。
    たくさん心配かけてごめんね、たくさん迷惑もかけたね。
    楽しかったよ、みんなといた時間は、本当に。
    みんなの居る景色を見るのが、わたしはとても好きだった。

    「…」

    想うことはたくさんあって、だけど言葉にはうまく乗せられなくて。
    口をつぐんだわたしの隣、穏やかに君が笑う。

    「…卒業、おめでとう」

    そう言って。
    幸福そうに笑うから、わたしも一緒に笑うしかなくて。

    「「一緒にいてくれて、ありがとう」」

    たぶん、もうすぐわたしは泣く。

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    年齢:
    34
    性別:
    女性
    誕生日:
    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
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