高校の三年間は、はやい。
よく聞く言葉だったけど、まさか己で実感することになるとは。
光咲き、風が謳い、別れを惜しむ声がなびき。
そして、わたしたちはここを巣立つ。
「はやかったね、なんだか」
「そうだね」
苦笑を交えた会話。
もうこの場所で、この制服で、こんな風に話すことはなくなるのだ。
それはまるで嘘みたいで、また明日も、明後日も、こうやって会うのがふつうみたいだと思った。
揺れるスカート。
堂々と光を受ける校舎。
愛着なんてないと思っていたのに、どうしてだろうこんなにも去るのが悲しいのは。
「…淋しい?」
「すこしだけ」
此処を離れたって、会えなくなるわけじゃない。
だけどもう、教室に行けば顔が見られたり、一緒にお弁当を広げることってないんだ。
想い返してみればそれがもう素晴らしい『特別』で、当たり前だと思っていた日常は奇跡に満ちたものだったんだと今更のように思い知った。
ねぇ、ねぇわたし、みんなのことが大好きだったよ。
たくさん心配かけてごめんね、たくさん迷惑もかけたね。
楽しかったよ、みんなといた時間は、本当に。
みんなの居る景色を見るのが、わたしはとても好きだった。
「…」
想うことはたくさんあって、だけど言葉にはうまく乗せられなくて。
口をつぐんだわたしの隣、穏やかに君が笑う。
「…卒業、おめでとう」
そう言って。
幸福そうに笑うから、わたしも一緒に笑うしかなくて。
「「一緒にいてくれて、ありがとう」」
たぶん、もうすぐわたしは泣く。
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