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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    記憶の鳥かご。

    「…それって去年のクリスマスに男友達にもらったネックレスだよね?」

    「うん?あぁそうだよー、レイストーリアのやつ。よく覚えてたね」

    「なんとなくだけどね。似合うよ」

    「ありがとう。あ、でもそういやそのティリケルのタイピン、こないだどっかのお嬢さんがくれた奴でしょ?」

    「そうそう。っていうかティリケルの社長令嬢に」

    「あー、どうりで。ティリケルのはどれも綺麗だよねー、キラキラしてて」

    「ね。君がそう言ってくれるし僕も結構好きだよこれ」

    「ふふ。…あぁ、でもこないだこれ言ったら友達に怒られた」

    「これ?どれ?なんで?なにが?」

    「『フツー異性からもらったプレゼントは恋人の前じゃ付けないでしょ!?』って。…そういうもんかぁ、って思ったには思ったけど」

    「…あー、なるほどねー…そっか、そういう考え方もあるんだ…」

    「なんか…カルチャーショック…?基本的に彼女は元彼からのプレゼントとか、思い出の品?もその時に捨てるそうで」

    「思い出の品?」

    「なんか、映画の半券とか、遊園地のチケットとか」

    「え、何そういうのって別れるまで取っておくものなの?…ごめん、僕その都度捨ててる…」

    「あ、大丈夫それはあたしも捨ててるから」

    「うーん…たとえどんなに素晴らしい映画の半券でも結局ただの紙切れだしねぇ…うん、捨てるよね」

    「捨てるねぇ…まぁ彼女は取っとくらしいんだ。そして別れた時に捨てるみたいよ?例のプレゼントと一緒に」

    「へー…そっか、でもまぁ確かに確かに新しい彼氏に対する気遣いと言えばそうか」

    「気遣い?」

    「そう。『貴方と元彼を比べる気はありませんよ』っていう意味になるでしょう?あとは気持ちの整理とか」

    「あーそっか。新しい彼氏に対するけじめとか、優しさ?」

    「そうそう。…へぇ、でもそっかー…捨てるべきなのかなー…」

    「…気にする?そういうの」

    「んー、今までお互いタイピンがどうの、って言ってた流れでそれを聞くのはちょっと違和感だけど。…まぁ、君が気にするなら全部捨ててもいいかな、とは思ってる」

    「いや、あたしは別に気にしないけど。でもそっちが気にするならあたしも捨ててもいいかもしれない」

    「うん?僕は気にしないよ。似合うのは事実だし、物に罪はないしね。…それに、いちいち目くじら立てなくても本人いるしねぇ」

    「何それ」

    「だって物で縛らなくても最終的に君が選ぶのは僕だし。まぁ良いかなー、っていうのは油断?」

    「…ううん、大歓迎」

    「なら良かった。だから君もそう思ってくれてると良いよ」

    「そりゃもちろん、言われなくとも」

    「でもまぁ一応独占欲も強い方なので。…アクセサリーでも見に行く?僕に、君に一番似合うものを贈らせてよ」



    (さぁ手をつないで、デートに参りましょう?)
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    夜とココア。

    「…ココアになりたい?」

    「は?何いきなりどうしたの大丈夫?主に頭とか」

    「うわ、酷い。頭はいたって正常だよ、円周率でも唱えようか?」

    「いや、それは良いよ」

    「そう?残念、結構得意なんだけど」

    「あれだよね、円周率を覚えるっていうそのエネルギーをもっと別のところに活用すればいいと思うんだけど」

    「別のところねぇ…えーっと、合衆国憲法の暗唱とか」

    「いや、それも良いよ。…ってどっちにしろ日常生活にはなんの役にも立たないわよね?しかも日本ですらねぇ」

    「無駄なものにこそ意義があるんだよ、ワトソン君」

    「ワトソン違うから。…じゃなくて。何でいきなりココア?しかも疑問形だし」

    「前に君が言ってたじゃないか『薄めたカルピスになりたい』って」

    「あー…それってずいぶん前でしょ夏くらい?よく覚えてるわね」

    「そりゃあね。それでまぁ僕だったら何が良いかなぁって考えて、じゃあココアかなって」

    「…甘いの嫌いじゃなかったっけ?」

    「うん、嫌いだよ?何をいまさら」

    「…あのね良い?ココアって基本的に甘いのよ、知ってる?」

    「それくらい知ってるよ…君はたいがい僕を馬鹿にしすぎだよね」

    「してないしてない。で、参考までにその理由をうかがっても?」

    「あ、うん。…ほら、夏の夕暮れが迷子に最適なら、冬の夜は帰ってくるのに最適なんじゃないかなと思ってさ」

    「…帰ってくる」

    「そう。迷子の君が帰ってきたときに、あったかいココアとかあったらちょっと幸せじゃない?だからそれも良いかなぁって」

    「…あたしのためなの?それ」

    「当り前じゃないか。でなかったら誰が嫌いなココアになんてなるものか」

    「…きみはたいがいあたしを溺愛しすぎだと思うんだけど」

    「今頃知ったの?」

    「…ううん、知ってた。…あ、でもさ」

    「うん?」

    「あたしココアよりも、紅茶の方がいいな。そしたら一緒に飲めるでしょう?」

    「…自惚れるよ?僕。そんなこと言われたら」

    「自惚れろって言ってるの。…だから、ちゃんと付き合ってよね」



    (彼と彼女と熱い紅茶)

    迷子とカルピス。

    「…迷子になりたい」

    「いや、意味分かんないから。何それ」

    「なんていうかこう、ふらっと失踪したいんだって。ものすっごく薄く作ったカルピスみたいな存在感を醸し出したい」

    「いやいやいや、余計意味分かんないからね。何カルピスって」

    「こう、うすぼんやり?みたいな。うーん、あれこれ水?カルピス?ってくらいの」

    「…君はカルピスを馬鹿にしてるよね」

    「してないよ。あたしカルピス好きだもん」

    「うん、知ってるよく飲んでるもんね。…じゃなくて、なんでいきなり迷子なの?っていうかカルピス関係ないよね」

    「うん、関係ない。…なんていうの、ほら、夏の夕暮れって迷子に最適だと思わない?」

    「…えぇと、分かるような分からないような。あぁだけど境界線が淡くなる気はするね」

    「そうそう、だからその向こう側にすっと身を投じたくなるっていうか。…ふふ、可笑しいよね。自分から不安になろうとするなんて」

    「うーん、っていうかそれは、不安になりたいんじゃなくて安心したくて、だから不安になろうとするんじゃないの」

    「…そうなの?」

    「たぶんね。ちゃんと帰れる場所があるんだとか、探してくれる人がいるんだって、確かめたいんじゃないかな?そもそも帰る場所がなきゃ迷子にはなれないからね」

    「…そういうものかしら」

    「そうだと思うよ。(カリカリ)…というわけで、はいこれ。迷子札ね。手帳にでも挟んどきなよ」

    「何これ、住所?…しかもあたしの家のじゃないし」

    「あ、うんだってそれ僕の住所だし」

    「だよね。どうりで見覚えが…って、なんで?」

    「だって、迷子になりたいんでしょ」

    「…そうだけど」

    「迷子になるには帰る場所と、探してくれる人が必要でしょ?だったら僕がなってあげる。君の帰る場所は僕の居る場所だし、君が迷ったら僕が見つけに行くよ。だから君は安心して迷子になればいい」

    「…安心して迷子になるって、そもそも矛盾してるんだけど」

    「良いじゃない。君は堂々と迷子になって、僕が探しに来るのを待てばいいんだよ。こんなに優雅な娯楽も他にないでしょう?」

    「…ちゃんと、探しに来てくれるんだ」

    「当たり前。…だから、薄めたカルピスになるなんて言わないでね」


    (彼女と彼と薄いカルピス)

    野良猫と子守唄。

    「じゃあ、そろそろ帰るよ」

    そう言って彼が立ち上がった瞬間、どういうわけか酷く淋しくなった。
    それは一度意識してしまったらもう駄目で、空腹とか、睡魔とかみたいにあたしの意識を埋める。

    「…うん、」

    だけど素直に言う術なんて持ってないから、あたしはただ頷いて。
    玄関まで見送るべく立ち上がる。

    「気をつけて帰ってね」
    「そっちこそ。ちゃんと戸締りするんだよ」
    「分かってる」

    何気ない会話をしながら、心臓はぎしぎし音を立てた。
    やだ、淋しい、いかないで。
    そんな風に言えたら楽かもしれないけど、言えるわけがない。
    だってあたしはそう言えるほど、素直で可愛らしい女の子じゃないんだもの。

    靴をはく背中を、じっと眺める。
    伸ばしそうになる手、必死に押さえつけて。
    にっこりと笑う。

    「それじゃ、また明日」

    そう、また明日なのに。
    明日になったらまた会える、なにもこれが今生の別れじゃないのだ。
    メールだって電話だって、つながる手段はいくらでもある。
    なのに、なのにどうして。
    一晩離れてしまう事がこんなにも淋しいのか。

    独りぼっちは、平気なはずだったのにな。
    今までだって、そうだったでしょう。
    ひとりで眠る夜なんて今更少しもこわくないし、そもそも淋しいと思うことだって稀なのに。
    なのに、今夜ばかりはちょっとおかしい。

    「…」
    「どうしたの」

    じっと、見つめられて少したじろいだ。
    真っ直ぐな眼は、全て暴いてしまいそうでちょっとだけ怖い。
    そう思いながら、昔そんな映画があったなぁと思いだす。

    想っていることが周囲に筒抜けになってしまう、男の子の話。
    もう内容なんてほとんど覚えていないけど、彼の視線の強さはある種の居心地の悪さすら呼び起こすものだった。

    さみしいさみしいと。
    我儘な子供みたいに考えてしまったこと、見透かされてしまいそうで怖くなる。
    こんな醜い気持ち、見られてしまったらそれこそ泣けてしまうよ。

    「…泣きそうな顔」

    不意に、彼の手が伸びて頬を優しくこすった。
    驚きに呼吸が止まりそうになる。

    「…別に、そんなこと」
    「そう?ほんとは帰ってほしくないくせに」

    やっとのことで返した言葉にも、彼はくすくす笑うばかりだ。
    最初からお見通しだと、小さな子供の悪戯を余裕で暴いてしまうような。
    あたしはこの人の前だとどういうわけか、幼い女の子に戻ったみたいな気さえする。

    「さみしいんでしょ?だったら、縋ってよ」
    「…いやよ」

    知られてしまった事に動揺して、それでも素直には言えなくて目を逸らす。
    だけどすぐに捉えられて、無駄な抵抗だったと気づく。
    微笑む口元はあくまで穏やかで、そのくせ抗う事を赦してはくれない。

    「…別に、さみしくなんて」

    言いながら、彼の服の裾をつかんだ。
    そこからはもう止まらなくて、しがみつくようにして彼に抱きつく。
    言ってることと行動があってない。
    それでも彼は柔らかく笑って、あたしを同じ強さで抱きしめた。

    「…帰らないよ」

    彼が笑う。

    「そんな顔されたら、帰れるわけないじゃないか」

    はいた靴を、脱ぐ音がして。
    あたしを離すことなく、彼が玄関に上がる。
    そして歌うような口調で言った。

    「淋しがり屋のあまえたがりの、天の邪鬼」
    「…うるさい」
    「だけど世界で一番可愛い、僕の女の子」

    その声があんまりにも愛おしげだったから。
    あたしは言い返すこともできず、ただ腕に力を込めた。

    やっぱり同じつよさで返してくれることを知っているから。

    (淋しがりな野良猫一匹!)

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    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

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