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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    マイガール、

    「はい、もしもし」

    『あぁ、僕だよ』

    「…オレオレ詐欺ならお断りだよ」

    『仕方ないでしょ名前出さないルールなんだから』

    「ちょ、こんなトコで大人の事情をバラさないでよ」

    『大人の事情なの?』

    「いや別に。…それにしても、久しぶりだね」

    『そうだね、久しぶりだ』

    「うん、っていうかどうしたの?珍しいね電話してくるなんて」

    『どうしたの、とはまた随分だねお姫様?』

    「ん?」

    『…君の声が聴きたくなったんだ、って言ったら、信じる?』

    「…信じ、ないよ」

    『だと思ってた』

    「だって、声が聴きたくなったら逢いにくるじゃない」

    『そうだね』

    「あたしの都合なんてお構いなしに、逢いにきちゃったって」

    『…うん、そうだね』

    「…それに、あたしは逢いたくないもの」

    『うん?』

    「あたしは逢いたくない、だからあなたも逢いたくないでしょう?」

    『コピーの法則?』

    「そう。あなたが逢いたいならあたしも逢いたい、あたしが逢いたくないならあなたも逢いたくない。そうでしょう?」

    『…そうだよ、その通りだ』

    「…珍しいのは、電話だけじゃないね」

    『…うん』

    「こんなに、長いこと離れてるのも、だよね」

    『ずっと、一緒だったからね』

    「…逢いたく、ないよ。だから、逢いたくないって、言ってよ」

    『…』

    「…なにか、言って」

    『…』

    「もしもし?」

    『…逢いたいよ』

    「…っ」

    『君に、逢いたい』

    「な、に…」

    『…逢いたくて、仕方ないよ。声だけじゃ、足りない』

    「…さ、」

    『さ?』

    「…さい、ていっ…!」

    『…なに、今頃知ったの?』

    「逢いたくないって言ってよ…そしたら、まだ我慢できた、のに、」

    『我慢?』

    「そう、だよ…そしたら、逢いたくないって思っていられた、のに」

    『…うん、』

    「頑張ってるの知ってるから言わなかった、のに…わか、らず屋…!」

    『…君のことなら、分かってるつもりだけどね』

    「…うそつき、」

    『おや、心外だな』

    「…ふふ、あたしの、嘘吐き王子様。そんなこと、思ってないくせに」

    『なら、言い当ててみせようか?君の思ってること』

    「…なに?」

    『…逢いたいよ、君もでしょう?』


    (だからねぇ、マイガール。君の声で僕に告げて)
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    眠り姫の指先。

    ※『彼と彼女。』、天使シリーズ。



    ハンモックに寝そべって本を読んでいると、下の方でごん、と鈍い音が聞こえた。

    「…?」

    不審に思って下を覗き込む。
    四角い部屋のほぼ中央、僕の左斜め下あたりで床に突っ伏しているご主人さまを確認。
    このサイコロの城に似つかわしい小振りで真っ白いノートパソコンの前、彼女はまるで死んだみたいに動かない。

    あぁ、またか。
    もうすっかり、とまではいかないけれど二度もこの光景を見れば慣れてくるというもの。
    僕は仕方なく本に栞をはさんで、彼女の元に舞い降りる。

    「…風邪ひくよ」

    冷たく硬い床の上、彼女はすやすやと寝息を立てている。
    ひとつ溜息を吐きだして、僕は眠り姫を抱えあげた。

    …眠りと相性の悪いご主人さま。
    けれど人間はどうしたって眠らなくちゃいけない生き物で、無理が過ぎれば必ず身体はSOSを発するというもの。
    三日も徹夜に近い状態が続けば、どこかで電池が切れるのは必然だ。

    涼しいからと言って床に寝そべって彼女はパソコンで報告書を書いていたようだけど、今回はそこでエネルギーが切れたらしい。
    ほんとうに潔いくらい唐突に彼女は眠りの世界に落ちて、その度に僕は(絶対に言ってやらないけれど)心臓が止まる思いがするのだ。

    「…人間は脆いんだよ」

    ねぇ、知っているの?
    心の中で問う。

    僕ら天使は眠らなくても、食事をしなくても、神に愛された御魂が穢れることがなければ生きていられる。
    だけど人間はそうじゃないんだろう?
    眠らなければ、食事を食べなければ、あっという間に衰弱してしまうのに。

    一人で眠るには広すぎるベッドに、彼女を横たえる。
    真っ白なシーツに長い黒髪が散らばって、はっとするくらいにそれはうつくしい。

    「…ばかだな、」

    呟いて、その細い肩に毛布をかけた。
    ゆる、と微笑んで君は深く息をつく。

    「…いったいどんな夢を見ているんだろうね?」

    そこに僕は居るのかな。
    柄にもないことを考えた自分がひどく可笑しい。
    ぼくこそ夢でも見ているようだ、そう思いながら少しだけわらう。

    「…おやすみ、眠り姫」

    一瞬躊躇ってから、その髪に指を伸ばした。
    見た目どおりにさらさらとつめたいそれを二三度梳いて、僕はそっとベッドから離れる。

    背を向けた僕の名を、夢の中に漂う彼女が呼んだのは現だと思ってもいいのだろうか?

    ソムヌスと茨姫。

    ※『彼と彼女。』、天使シリーズ。




    僕のご主人さまは、ソムヌスとは相性が悪いらしい。

    「…」

    僕のハンモックの斜め下、細いため息が聞こえた。
    続いて居心地悪そうに寝返りを打つ音もする。
    彼女がベッドに入ってからもう二時間、一度も眠りに落ちる気配がないままシーツばかりが乱れていく。

    「……、」

    最初は僕の気配があることに慣れていないからかとも思った。
    だけどそれも今日で三日目、どうやら彼女は根本的に眠るのが苦手のようだ。

    こうして長いこと眠れないまま夜を過ごして、明け方近くに溺れるみたいにして薄い眠りにつく。
    それでも朝と呼べる時間に目を覚まして、酷く不健康そうな顔をしてベッドから降りるのだ。

    そして微笑むんだ、僕の姿を見て。
    おはようと幸福そうな声音で囁く君は、僕の前で一度だってその神経を眠りに投げ出したことがない。

    「(…ねぇ)」

    心の中で問う。
    君たちは、僕らと違って脆いんだ。
    こんな風に眠れないまま過ごしていたら、あっという間に壊れてしまうよ?

    まるで人間の脆弱さそのままみたいな彼女の薄く華奢な身体。
    それは、容易く壊れてしまいそうで僕は――怖いんだ。



    「…困ったな」

    ついに君が起き上がった。
    僕を起こさないように、できる限り音を立てないようにしているのがよく分かる。
    …そんなことしたって無駄なのに。
    残念ながら、天使は人よりも頑丈だ。

    「…さて、」

    一度彼女は僕の方を見上げて、それから少し考えてから枕もとのキャンドルを取った。
    僕の背から抜け落ちた羽を一枚拾って、ひらひらとそれを振る。

    ふ、と宿るちいさな灯火。
    彼女はそれをキャンドルに寄せて、火を移す。
    明りをその手に捧げ持ったまま、ぼんやりと何かを考えているらしかった。

    眠れない夜。
    眠らない君。
    夜ばかりが足音を速めて、君はいつまでも取り残されたまま。

    タロットカードの愚者みたいな横顔で。
    君は炎を見つめてる。
    白い陶器のような肌は柔らかな明りに照らされて、今だけは人形めいたその様を潜めているようにも見える。

    「…」

    もう、耐えられなかった。
    ばさり、と一度翼をおおきくはためかせて、真っ直ぐに彼女の元へと降り立つ。

    「え、あ、ごめん起こしちゃった?」

    見当違いな言葉を放つ君からキャンドルを取り上げて、ふっとその炎を吹き消してしまう。
    急に暗くなった部屋、けれど熱はほら――此処に。

    「…寝るよ」
    「え?」

    強引に彼女をベッドに縫いとめて、毛布を肩まで引き上げる。
    その横に僕も潜り込んで、ぎゅっとその小さな頭と肩を抱きしめた。
    反論は認めない、君は僕に守られて、眠ればいいんだから。

    「え、え、」
    「…おやすみ」

    なるべく丁寧に頭を撫でる。
    しばらく困ったように君は身体を強張らせていたけれど――不意に、ちいさくわらう声が聞こえた。

    心底からやわらかな、夢みたいな笑い声。
    遠くとおく、神様の膝元にいたころにだって、聞いたことがないくらいの。
    ――君が笑ってくれるなら、なんて。
    陳腐な台詞を本気で唱えたくなるくらいに優しい声だった。

    「…うん、おやすみ」

    そう言って、背に細い腕が回された。
    子供が人形を抱きしめるみたいな強さで、君は僕にしがみつく。
    初めて確かめる体温に、微笑んだのは君か僕か。

    「…(あぁ、)」

    救っているのは、どちらだろう?
    どうしたって手放せない温度に、僕は酔いしれて目を閉じる。

    おやすみ、僕のご主人さま。
    明日また、君がおはようと笑ってくれることだけ夢にみたい。

    ポッキーと無駄の意味。

    「あ、そうだはい、これ」

    「何?(がさごそ)…あ、いちごポッキーだ。どしたの?」

    「いや、だから『はい』って」

    「へ?」

    「え?」

    「あ、いやなんでいちごポッキー?」

    「嫌いだっけ?」

    「ううん、好きだけど」

    「なら良いじゃない」

    「うん、嬉しいけど。なんでいきなりいちごポッキーなのかなって」

    「…だって好きだろう?」

    「うん、うーん?…や、そうでなくてね?別にケンカしたわけでも頼んだわけでもないのに、どうしたのかなって思って」

    「あー…あぁ、そういう意味の『なんで?』ね。やっと分かった」

    「…あ、何いまので理解したの?」

    「うん。…えーと、ね?コンビニで見かけて、あぁこれ君が好きだったなって。買ってったら、君が喜ぶかな、って思って」

    「うん。…えへへ、覚えててくれたんだ」

    「そりゃあね。君のことだし」

    「…うれしい」

    「…恋愛とか好意とかって言うのはさ、相手にいかに『無駄』を捧げられるかなんだよねつまりは」

    「お、お?いきなり哲学的になったね…!?」

    「あーうん、まぁ性分だから。ついてきてね」

    「あ、はい」

    「失礼なのを承知でこんな言い方するけど。クリスマスとか誕生日って、云わば恋人たちのイベントだから。こういう時に何かをするのはある意味で『当然』なわけだよ」

    「あー…確かにそういう雰囲気だよねぇ。まぁ楽しんでるし良いとは思うけど」

    「うん、僕も結構好きだしそれは問題ないんだ。…でだ。そういう『当然』があるからこそ『無駄』の意味が生きてくると思うんだよね」

    「無駄の意味ですか」

    「そう。『当然』のラインからは外れたその感情を、どれくらい相手に捧げられるか、が重要なんじゃないかなーって」

    「…必要じゃないからこそやる意味があると?」

    「たぶんね。…別に僕がこうやっていちごポッキーを買ってくる『必要』はなかったよね」

    「うん、そうだね」

    「『必要』はないけれど僕はその必要なんてないところで君に喜んでもらいたくて、だから男が買うにはちょっぴり恥ずかしいこのピンクのパッケージのポッキーを買ってきちゃうわけで」

    「あー…確かにこのパッケージはちょっと恥ずかしい感じだよね」

    「もちろん君が喜んでくれたことでそれだって帳消しなんだけどね。…必要のないもの、は無駄とくくるとしたら。その無駄の部分でこそ、相手を喜ばせたいって思うのが恋愛の醍醐味なんじゃないかなって思う」

    「あ、なんか分かった気がする」

    「そう?それは良かった」

    「でも無駄と言えばさ」

    「うん?」

    「君があたしの嗜好品を覚えててくれてるのもあたしに『無駄』を捧げてくれてるってことだよね」

    「…ふふ、」

    「あたしの好きなもの嫌いなものって、君にとっては覚えてても人生のなんの役にも立たない事よね。でもそれをわざわざ覚えててくれてるって言うのは、やっぱり『無駄』をくれてるんだろうなーって」

    「それをしたいって思うのは君だからだけどね」

    「…えへへ。ありがと、嬉しい」

    「じゃあ紅茶でも淹れようか?一緒に食べよう」

    靴を無くした愚者。

    駅前のカフェの特等席。
    表に面したカウンター席から見える世界は、実にロマンに満ちている。

    「(…おや、まぁ)」

    ここから見える外の世界は、まるで丁寧に撮られた無声映画だ。
    たくさんのたくさんの登場人物が、めまぐるしく入り捌けを繰り返していく。
    僕はさながら映画監督のような気分で、その世界を眺めるのだ。

    当たり前のように流れる、世界でたったひとつだけのうつくしい映画。
    登場人物たちはみな鮮やかで、一人ひとりが「生きて」いるからこそこの景色に意味がある。


    たくさんのキャスト、その中のひとりをカメラが捉える。
    柱に寄り添うように立つ彼女は、綺麗な格好をして今からデートかな?

    リボンのついた真新しい白いコートは、繊細な顔立ちの彼女によく似合う。
    こんな中途半端な時間に待ってるってことは、早く着きすぎたんだろうな。
    そわそわと落ち着きなさげにおろしたてのコートを引っ張っては髪を整える仕草が、なんだかとても微笑ましい。

    「…」

    カメラのピントを寄り添わせるように、じっと見つめる。
    気付いた様子は微塵にもなくて、それが少し可笑しい。

    不意に彼女は俯けていた顔を上げて、きょろきょろと辺りを見回す。
    そして見知った顔がないことにどこか安堵したようにまた目を伏せて。
    けれどすぐにケータイを開いて時刻を確認しては、早く着きすぎた自分を笑うように軽く喉を反らす。

    「…落ち着きのないお嬢さんだ」

    ちいさく笑う。
    もう10分くらい待っているみたいだけど、苦にはならないのかな?
    …あんなに可愛い彼女を待たせるなんて、罪なオトコだとは思うけど。

    「…さて、」

    わずかに残っていたコーヒーを飲み干して、僕は上着を羽織り立ち上がる。
    ありがとうございました、の声を耳に硝子のドアをくぐった。

    無声映画に、音が入る。
    声が、足音が、溢れかえって洪水のよう。

    たん、と足を踏み出して。
    目指すのは―白いコートの似合う恋人。

    「あっ」

    僕に気付いて彼女がちいさく声を上げた。
    それに手を振って応える。

    「ごめんね、待った?」
    「ううん、今来たところよ」

    彼女は笑って、僕を騙せない嘘を吐く。
    もちろん僕は騙された振りをして、冷えた彼女の手を取った。

    「行こうか」
    「うん」

    無邪気にわらう恋人に、心の中で懺悔して。
    愚かな道化は今日もまた、ルーチンワークを嘯いた。

    あいしているのは確かに本当なのに。
    こんな風に振る舞う僕は、酷く弱くて最低な男だ。

    あぁ可哀想にね、僕の恋人。
    こんな僕に愛されてしまったなんて。

    「…ねぇ、」
    「ん、どうしたの?」

    突然彼女は僕の耳元に唇を寄せた。
    思考の海に溺れた僕を、引き上げるような声。
    微笑んだ口元をそのままに、嬉しそうにわらう。

    「(――だいすき、)」
    「っ…!?」

    呼吸が、とまる。

    「な…?」
    「心配なんかしなくたって、此処にいるのに」

    嗚呼、嗚呼。
    見透かされたような笑顔に、当たり前のように差し出された奇跡に。
    赦されたと思ってしまうのは間違いだろうか?

    「…知ってるよ、」

    言葉とは裏腹に、繋いだ手に、力をこめた。
    同じように握り返された手に、泣きたくなったのは僕だけの秘密だ。

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    HN:
    祈月 凜。
    年齢:
    34
    性別:
    女性
    誕生日:
    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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