「オリジナルはさ」
「うん?」
「勘違いしすぎなんだよ。自分の采配が世界を揺らすって思い込んでる」
「…まぁそんなに影響力ないことくらい承知してますが」
「そうじゃなくて。別にそんな気負わなくてもいいんじゃないの、って話」
「あー…うん、っていうかね?分かってはいるんだよそれくらいは」
「うん」
「たださぁ、何かにどうしても責任を負わせたいときってあるじゃない?」
「確かにある、けど」
「そういう時にね、誰も責められないならあたしは自分を…あぁこの場合だと、君を?責めるしかないの」
「なに、それ」
「だって誰も悪くないんだよ。悪いとしても、それを悪いって感じちゃうあたしが一番最低なんだって思わない?」
「…」
「っていうか、あたしが悪いことにしちゃえば楽じゃない。誰も恨まなくていいし、後悔もしない。めんどくさいでしょ?そういうの」
「…オリジナル」
「なに?」
「オリジナルのそれは…優しさなんかじゃないよ。気付いてる?」
「…うん」
「あたしが悪いって引き受ける振りして優しい振りして、ホントは、すごく冷たいこと言ってる」
「うん、」
「狡いよ、そんなの。全部被る代わりに全部やめちゃうなんて、オリジナルは狡い。他人のことを、狡いなんて言えない」
「うん…そう、だね。自覚はしてる」
「あたしが全部悪いのって耳ふさいで、目を閉じて何もかも拒絶して。そうまでして他人と距離とって、一体オリジナルは何を欲しがってるの?」
「…」
「オリジナル…?」
「んーと、ね」
「?」
「…あいしてるから、って言ったら怒る?」
「…」
「大事なの、あたしのいない世界が。ばかみたいだって自分でも思うよ?でも後悔とかみんな背負うからこのままでって、思っちゃうんだよ」
「…」
「泣くのが辛いって捨てられるなら、とっくに捨ててるよ。だって、もうぼろぼろだしね」
「…知ってるよ」
「…うん、」
「知ってる。オリジナルが大切だって言って笑うもの、みんな知ってるもの。どんなに大事か、それのためにどんなに泣いたか。それでもまだそれを、どんなに大好きって思ってるかも、みんな」
「だったら、」
「うん、だから…もう、もう…良いんだよ」
「?」
「分かってるから。だから…赦してあげる」
「え、」
「決めたんでしょう?後悔も矛盾も抱えて、泣きながらでも必死に足掻いて。わらうこと、決めたんでしょう?オリジナル」
「…うん」
「だから、赦すの。だって…あたしは、オリジナルの味方だもの…」
「…ありがとう」
「良いよ、もう。…運命共同体だもんあたし達」
「…怒ってる?」
「ううん。ただ仕方ないなって思ってるだけ。結局、あたしとオリジナルだもんね」
「そうだね。…結構長い付き合いだよね?」
「そりゃ生まれた時から一緒だからね」
「…じゃあ、ついでに我儘ひとつ言っていい?」
「うん?」
「…もうちょっとだけ、あたしに付き合ってくれる?」
「…ちょっとと言わず、一生でも」
「…あり、がと」
「…じゃああたしからもひとつ忠告」
「なに?」
「…別に、あたしは良いの。オリジナルがそれで良いって言うなら」
「…」
「ただね、覚えておいて。オリジナルはあたし、あたしはオリジナル。オリジナルがあたしを責めるっていうのは、必ずオリジナルに返ってくるんだよ」
「…うん、」
「オリジナルがあたしをあいしてるって言うのと同じくらい、あたしもオリジナルが好きだよ」
「うん…」
「あなたはあたしの大事なオリジナル。だからあんまり傷付かないで?あたしのこと責めてもいい、だからちゃんと、自分のこと抱きしめて」
「…うん、ありがとう」
「ううん…ごめんね。こんな風にしか、守ってあげられなくて」
「充分だよ。あたしこそ、大事にしてあげられなくてごめんね」
「良いよ、分かってるから」
「…ありがと」
「ううん。…じゃあ、そろそろ戻るね」
「あ、うんそうだね」
(ささやかな「あいしてる」を)
(かけがえのない、あなたへ)
「ただいま、」
「…おかえり」
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