「…世界ってさ」
「うん?」
「醜いのも本当だと思う。世界平和が云々、とか口に出すまでもなく、手放しに賞賛出来るほどに綺麗なものではないよね」
「そうだね。それすら常套句ではあるけど」
「うん、だから世界は醜い、んだとは思う」
「思う、けど?」
「それでも、とてもうつくしいのも事実かもしれないなって、ちょっと思った」
「…ふふ、いきなりどうしたの?オリジナル」
「んー…別に、どうしたってわけでもないんだけど」
「うん」
「っていうか、あたしは何でもかんでも自分の中に答えを求めちゃうし、だから結局ちっぽけな戯言にしかならなかったりもするんだけど」
「うん、前置きは良いから。長いから」
「え、ちょ、聞いてよっ」
「うんはい、それで?」
「おまっ…!!」
「だってオリジナル、話しにくいことはめちゃくちゃにぼかすんだもん。ぼかして婉曲して結局よくわかんない感じに遠まわしに伝えるからなかなか察してもらえないんだよ」
「うぐ…正論ですが」
「いーい?オリジナル。ふつうはね、そんな風に言い淀んでぼかしてたら分かってなんか貰えないんだからね?ちゃんと言わなきゃ。綺麗にまとめなくても、理論がうまく組めてなくても、ちゃんと届くように言わなきゃダメなんだよ」
「…分かってる、けど」
「うん、じゃあ続けて?…ちゃんと、聞いてるから」
「…うん、そだね。えーと、あのね?…優しいんだなって、思ったの」
「それは、世界が?」
「そう。っていうか、優しい人がいるから、世界も優しいんだなって」
「…うん、分かるけどね言いたいことは」
「…あたしは基本的に自分が嫌いで、大嫌いで。自分は最低だって思ってるし言ってもいるし。だからまぁ真っ先に切り捨てられるべきはあたしでなきゃおかしいと思ってもいるんですよ」
「オリジナルはほんとに自虐趣味だなぁ…」
「あーうん、自覚はしてる。…でも、さぁ」
「うん?」
「そんなあたしでさえ、許してくれた人たちがいるんですよ」
「…うん、そうだね」
「偽善者って言葉がずっと引っかかってて、言葉に対してほんとに臆病になってて。あたしには誰かの涙に寄り添う資格なんてないし、あたしの言葉なんてきっとみんな嘘に聞こえるんだろうなって思ってたの」
「…うん」
「だけど届いたんだよ、拾って、くれたんだよ。…ほんとに、ほんとに嬉しかった。あたしの言葉はまだ、聞こえているんだなって」
「…彼らが居るから、世界は優しい?」
「そう。彼らのいる世界だから、とてもうつくしいと思う」
「ふふ、そうだね。…世界の醜さを挙げ連ねることは簡単で、うつくしいと思える瞬間って目をこらさないと見つからないけど」
「…うん、」
「だけど、出会えてよかったよね。うつくしいものを何でもなくうつくしいと言えることって、とても素晴らしいと思う」
「…ちゃんと、返せると良いな。あたしが感じた、うつくしいもの」
「良いんじゃないの?そうやって想えただけで、もう一歩進んでると思うよ」
「んー…でも、ちょっとだけ。願ってもいいのかなー、とか、思ってみたりとか」
「…オリジナルはさ、」
「うん?」
「いろんなこと考え始めると止まらなくなっちゃうから。自分から問題を難しくしちゃうんだよね」
「あー…」
「世界ってきっともっと単純で、素直に出来てて。だけどオリジナルが難しく捕らえるからそう映るだけ」
「考えすぎってこと?」
「なにかを悲しいと思うのに、資格とか価値なんていらないんじゃないの?そんなん考え始めたら、誰も映画観て泣けなくなっちゃうよ」
「えー…それとこれとは話が…」
「一緒だよ。良いじゃない、悲しいなら悲しいって思っても。誰がそれを偽善って決められるの?」
「…うぬぬ、それは…そうなんだけど…」
「だから、良いんだよ。オリジナルはオリジナルの精一杯で、世界を愛せれば、それで」
(それだけできっと)
(世界はもっとうつくしい)
「…そう、だね」
「願えるなら、その中にオリジナルが居てくれるといいんだけどね」
「それは、君もね?」
「あたしはオリジナルが望んでくれるならね」
「じゃあ、お互いが想えばいいんじゃないの?これ」
「…ふふ。あたしは君の為に?」
「そう、あたしもきみの為に」
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