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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    打ち捨てた王冠。

    ※仮想世界。
    雨三部作、ラスト。



    「「あ、」」

    落ちてくる雨粒から逃げるようにして。
    滑り込んだ細い屋根の下、見知った顔に出逢った。

    「わー、珍し。奇遇だねこんなとこで逢うなんて」
    「そう、だな」

    人好きのする笑顔を浮かべた優と、微かな苦笑をもらす蒼。
    ほんの一欠片だけ似た匂いのする、笑顔。
    屋根の端と端に居た二人は、歩み寄ってその肩を並べる。

    ラフな私服姿の蒼を見て、優は少しだけ安堵したような表情を見せた。
    蒼や彼の弟たちが夜の色をした衣装をまとっていると、優たちは決まってほんの少しだけ、顔を曇らせるのだ。
    兄弟たちの生業に眉を寄せるのではなく、それをする三人が心配なのだと。
    いつだったろう、人形じみた顔をした少女が言っていた。

    「なに、買い物とか?」
    「そんなとこだ」

    軽くうなずいて見せた蒼に対して、優は変わらず暗い色をした軍服で。
    曇天にさらに陰鬱に染められて、心なしか重みさえ増して見える。

    「優は?」
    「俺?俺はねー、今日は遅番なんだよね。だからちょっと買い物してから、と思ったらこの有り様だよ」

    言われて目を落とせば、優の手には紙袋。
    このすぐ近くに在る、文具店のものだ。
    大きさからして、ファイルだとかクリアケースだとか、そんな類のものだろうと蒼は予想した。

    「…にしても、困ったねぇ」
    「…まったくだな」

    こぼし合う、苦笑。
    見上げた空は、まだ暗い。
    それどころか雨は勢いを増して、地面にいくつもの王冠を作っては流れていく。
    しばらく止みそうにないな、と嘆息した。

    頬をなでる風は冷えて。
    それでも待っているこの時間を、最低とは思わない。
    慣れた毛布のような空気感に、目を閉じたのはきっと二人同時。

    「…さて、と」

    ふ、と蒼の隣。
    優が軽やかに伸びをする。
    しなやかな動きで両腕を真っ直ぐに上げると、そのまま蒼を振り返った。

    子供のような笑顔。
    それだけで理解して、蒼は笑う。

    「…正気か?」
    「俺はいたって本気だよ」
    「馬鹿だって言われたことないか」
    「氷雨にはいつも怒られる。『優さんは無茶しすぎです』って」

    軽い言葉を交わしながら、諦めて蒼もそっと身体を伸ばした。
    若い竹が伸びるようなイメージ。
    数度呼吸を意識する。

    あと一度、と思ったところで、唐突に腕を引っ張られた。

    「行くよっ」
    「おま、はや…!」

    ぐん、と身体が前のめりになって、一瞬で身体は水に包まれる。
    雨音がうんと近くなって、右足が思い切り水たまりを踏んだ。
    隣で明るい笑い声が響く。

    「蒼っもたもたしてないで走るよっ」

    言葉と一緒に優は走り出して。
    腕を捕らえられたままの蒼も、当然それに続く形になる。

    まったく、どうしようもない。
    良い年をした大人が二人、いったい何をしているんだと思う。
    こんな姿、弟たちは呆れて笑うだろう。
    彼の恋人は、幼げなのに妙に迫力のある瞳でにらみあげるかも知れない。

    だけどこうやって、馬鹿みたいなことだってたまには必要なのだ。
    大人ぶった仮面を放り捨てて、全力で走ってみることだって。

    「…足を取られて転ぶなよ、」

    呟いた声に、少し前の背中が揺れた。


    (雨が映すのは)




    雨三部作やっと終わった…!
    地味に放置しすぎた感が満載だよ凛さん!(笑)

    ばかなことやってみる年長組。
    実はこいつら大好きです。
    見た目クールに大人な顔してるくせにね、実はお馬鹿さんなんだよ!みたいなテンションを普通にやってくれちゃうので。

    この二人にはも少し馬鹿やらせたいです(どんな宣言)

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    HN:
    祈月 凜。
    年齢:
    33
    性別:
    女性
    誕生日:
    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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