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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    鮮やかな夜の隙間。

    ※仮想世界。
    もうすぐハロウィンです。



    「じゃんっ」

    全員がそろった平日の夕方。
    風姫のマンションでテーブルを囲んでいる最中に、明るい笑顔とともに、彼らの目の前にオレンジ色の物体が差し出された。

    普段こういうアクションを起こすのは大抵風姫なのだが(そして全力で周りを巻き込んでいく)、今回ばかりは少々事情が違った。
    そのオレンジ色の物体――両手に載るくらいの、小さめなカボチャ――を持ってきたのは、我らがミューズ、桃花さん。
    ころ、と白い手の上でそれは揺れ、風姫が目を輝かせる。

    「わぁ、カボチャだーっ」
    「ふふー、可愛いでしょう?うちのお店で出してるのよ」
    「あぁ、もうすぐハロウィンかぁ」

    楚夜が呟いて、それから全員が納得する。
    10月31日、ハロウィン。
    日本ではあまり馴染みのない行事だけど、最近はずいぶん賑やかに迎えられるようになってきた。
    ふむ、と記憶を手繰るように蒼が空を仰ぐ。

    「なんか…あの、お菓子貰いに行くやつか?『お菓子をくれなきゃ呪い殺すぞ』とか言う…」
    「確かに雰囲気は間違ってませんが、蒼さんそれはあまりにも物騒です」

    呪ってどうする。
    氷雨にきっぱりと否定され、残念そうに蒼は頷いた。
    ころころと手の中で、受け取ったカボチャをもてあそぶ。

    それを嬉しそうに眺めながら、桃花は後ろに置いてあった紙袋を引きよせた。

    「なぁに?それ」
    「うふふ、見てみて」

    逆さまにした袋。
    中からごろごろと転がり出てきたのは、蒼が手にしているのと同じくらいの大きさの、カボチャだ。

    「どうしたの?すごいねこんなに」
    「せっかくだから、みんなでジャック・オー・ランタンを作ろうと思って」

    とは言っても、いわゆるお化けカボチャではないので、シールを貼って顔をつけるだけなのだが。
    それでもパーツはいろいろあるから、選ぶだけでも楽しそうだ。

    「えー、すごい、かわいいっ」
    「好きなの選んでね」

    オレンジと紫と黒。
    夜色に彩られた、不思議な祭り。
    仮装なんてするような年齢じゃないけれど、それでもクリスマスなどとは違う盛り上がりに、この時期はなんとなく浮き足立つような心地がする。

    めいめいがシールを選んでいる最中に、ふと思い出したように藍が顔を上げた。

    「なんだっけゆーくん、何のお祭り?」
    「えー…万聖節の前祝いじゃなかった?」
    「ばんせーせつって何?」
    「晃、お前ね…。あー蓮くーん、パス」

    優に投げやられ、蓮が明らかに困惑したような顔をした。
    こめかみの辺りを軽くたたいて、何とか説明を試みる。

    「えー…確かケルト人の一年の終わりが31日で、この日って日本のお盆みたいに死者の霊とかが出てくるんだよ…そりゃあもう、うようよと」
    「えぇえその言い方やめろよ…」

    うようよ出てくる死者の霊(しかもゾンビ的な方)を想像してしまったらしく、青が顔をしかめた。
    それに少し笑って、蓮は続ける。

    「それから身を守るために仮面をかぶったり、火を焚いたりしてたんだけどね。それがキリスト教に取り入れられた、って言うのがおおまかな話じゃなかったっけ?」
    「へぇー…」

    ふむ、と納得したあたりで、それぞれ完成したらしい。
    シールの選び方にも個性というか、その人らしさがにじみ出るようだ。

    「青くん…なんでシール平行に貼れないの」
    「そう言えばお前小さい時から絵描くのヘタだったな」
    「う、うるせー!」

    「うわ、蓮くんのこわ!おどろおどろしい!!」
    「あはっ、そんな事ないってー。あ、楚夜さんの可愛いね」
    「あ…ありがとう…?(なんでこの人のカボチャこんな禍々しいんだろう)」

    個性豊かすぎるカボチャたち。
    それでも部屋を暗くして、アロマキャンドルを周りに並べて火を灯せばたちまち秘密めいた雰囲気を醸し出す。

    「…なんか、楽しーね」
    「そうですね」

    ジャック・オー・ランタンではないけれど。
    ゆらゆら揺れる灯りは影を濃く映して、一瞬ここが非日常であるような気にさせる。

    くるりと昼夜は反転して、祝福されるのは暗い闇。
    灯りを手にして進みましょう、亡霊に微笑みかけて夜を往く。
    くすり、と誰かが笑った。

    「…いっそ、ハロウィンする?」
    「何、仮装するの?」
    「そう。みんなで」

    イイ歳した大人だっていて、そうでなくても十代の後半で。
    いまさらハロウィンなんて、子供じみて仕方ないけれど。

    「…それも、良いね」

    誰かが笑い声に、応えた。

    (僕らの夜を祝いましょう)




    そんなわけで仮想世界のハロウィンです。
    相変わらず長いです。
    でも最近はもうこれがデフォなんだと思ってる(えー)

    椎さんに「楽しみにしてる」と言われたので頑張ってみた!
    個人的に今回いちばん楽しかったのは、若干ハロウィンの知識が間違ってる長男と、それに冷静にツッコミをいれる氷雨さんです。

    なんかみんなできゃいきゃいしてれば良いよ、うん。

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    祈月 凜。
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    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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