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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    階段の神様  01

    ※階段の神様。



    「あれ、」
    「あら、」

    学校から帰ってくると、珍しい人物に出迎えられた。
    珍しい、と言っても一年前まではそこに居るのが当たり前だったのだけど。
    最近じゃ滅多に顔を合わせることのない、二つ上の姉だ。

    姉――氷雨姉さんは、定位置のソファの肘掛に足を掛けて、ひらひらと手をふる。

    「おかえり絆。早かったのね」
    「まぁ…それなりに…」

    姉は今年の春から軍に入って、そこの寮で生活している。
    夏休みに帰ってきてからだから、もう半年ぶりだ。
    まとまった休みというわけでもなさそうだし、何かあったのだろうか、と少しだけ心配になる。

    姉は唐突に振り向くと、いきなり俺の頭をぐしゃぐしゃとかき交ぜた。

    「え、何、ちょっと?」
    「髪伸びたねー…そろそろ切りなさいよ」

    切りに行くのが面倒くさくて、そのままずるずる伸ばしっぱなしだった髪の毛。
    髪が柔らかい上に襟足とか関係なしに伸びてしまった。
    顎のあたりでざくざくながらも揃っていて、女の子みたいになっている。

    「めんどくさくて…」
    「後ろから見ると女の子みたいよ?」

    自覚済みなので大人しく返事をした。
    それから、ようやく聞きたかったことを口にする。

    「…ところでさ。どうしたの、姉さん」

    きょとん、と不思議そうな顔で姉は俺を見たが、すぐに理解したように笑う。
    そうして、もう一度俺の頭を撫でた。

    「コート、取りにきたの。さすがに寒くて」
    「あー…なるほど」
    「で、明日休みだし、ついでだから泊まってこうかなーと思ってね」

    軍服はもう脱いだらしい。
    泊まっていくなら、カーディガンにジーンズというラフな格好も納得だ。
    嫌になって飛び出して来たのかと思っていたから、それを聞いて安心した。

    平和主義で事なかれ主義。
    軍人なんて肩書が、これほど似合わない人間が他に居るのだろうか。
    こんなこと言ったら問答無用で小突かれるに決まってるけど、童顔の姉には面白いくらい軍服が似合わない。

    「あと、これ絆にあげようと思って」
    「なに?」

    コートを脱いでラックに掛けていた俺に、姉はいきなり何かを放り投げた。

    「うわ!?」

    慌ててキャッチしたそれは、小さな赤いデジタルカメラ。
    …落としたらどうすんのマジで。

    「あっぶねー…」
    「ナイスキャッチ。絆ならできるってお姉ちゃん信じてた!」
    「そんな信用いらねぇよ…!」

    だけど、なんでまた。
    疑問を込めて姉を見つめると、彼女はそっと目を逸らす。
    何か言い淀んだ時の癖だ。
    言いにくそうに、失敗を認めるかのような口調で姉はいう。

    「…写真を撮る才能がないって気づいたのよ」
    「えーと…」

    ぴぴ、と電源を入れて、数枚残っていた写真に目を通す。
    暮れなずむ空、庭に咲いた紫陽花、可愛らしいケーキ。
    …言っちゃ悪いが、確かに姉に才能はないらしい。
    どれも微妙に対象を捕らえ切れていないというか…なんだか、妙にちぐはぐな感じがする。

    「敗北宣言?」
    「うるさい。いらないの?」

    からかうとすごい目で睨まれた。
    …外じゃ「御淑やかで優しいお姉さん」で通ってるのに、なんだこの落差。
    たまには弟にも優しくしてください、と首をすくめる。

    「ありがたく頂戴いたします、お姉さま」
    「よろしい」

    少し考えて、せっかくだからと姉にカメラを向ける。
    家で生活していたころと何も変わらない格好に、時間が戻ったみたいだと笑う。
    気にしてないふりして結構淋しがっている母親に、見せたらきっと喜ぶだろう。

    「ちょっと、やめてよっ」
    「良いじゃん、記念すべき第一枚目ー」

    写真の中、子供っぽい顔で姉は笑った。

    (姉と弟とデジタルカメラ)




    勢いのあるうちに一話目を書いてみた。
    口の悪い氷雨が書けて楽しかった…兄弟だとこんなもんだよね。
    春日姉弟は、仲はそれなりに良いです。

    お互い相手が心配で仕方無い。
    たぶん二人とも我儘とか、自己主張みたいなものをあんまりしないんです。
    あれが欲しいこれがしたい、どうして欲しいみたいなこと。
    だからもどかしくて心配なのかな。

    ちなみに写真を撮る才能に恵まれなかったのはわたしです★
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    HN:
    祈月 凜。
    年齢:
    33
    性別:
    女性
    誕生日:
    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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