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※階段の神様。
「それで、良い写真は撮れたの?」
楽しそうに楽しそうに。
何もかもが心を浮き足立てせて仕方無いんだとでもいうような、表情。
そんな顔で覗きこまれたら、こちらだってつい微笑んでしまいたくなる。
「えぇ、それなりには。……元の持ち主よりは、よっぽどセンスが良いんじゃないかとは思うんですけどね」
「元の持ち主?」
不思議そうな顔に、このデジカメが姉からの貰い物だということを話す。
写真を撮るのが好きなくせに、ヘタクソだから諦めたらしい。
そう言うと、彼女はくすくすと笑った。
「うーん、確かにこういうのってセンスに頼る部分も大きいんだろうねぇ…」
「姉が撮る写真って、なんかビミョーにズレてるんですよ…中途半端っていうか」
「ふふ、じゃあ上手に撮ってお姉さんにプレゼントしてあげたら?」
「そうですね」
一度だけ、姉の暮らす寮に入れてもらったことがある。
パソコンの接続をしてくれとのお達しで、本来ならば男子禁制の女子寮に足を踏み入れたのだ。
白い壁、簡素なベッドと机。
チェストの上に置かれたピンクのふちの鏡とケア用品のカゴだけが、かろうじてここが女の子の部屋なんだということを表している。
『うっわ、姉さんの部屋ちょう殺風景。年頃の女の子の部屋がこれで良いの?』
『うるさいわね、寮でそんな好き勝手できるわけないでしょ』
『だからってさー…もうちょっとなんかあるだろー…?』
実家の部屋には、ぬいぐるみやら可愛いライトやらを置いてるくせに。
まるで色んなものを削ぎ落とすように振り払うように、姉は頑なに口を引き結んだまま部屋の壁を見つめていたことを覚えてる。
「絆くん?」
「え?」
呼ばれて我に返った。
慌てて苦笑して、なんでもないですと答える。
「そうですね、ちゃんと額にでも入れて送ってやろうかな」
「羨ましいわ、そんな風にじぶんのこと大事にしてくれる弟が居るなんて」
彼女はひどく眩しそうに目を細めた。
それはたぶん、手に入らないものを見つめる顔。
今度は俺が首をかしげた。
「菅原、先輩?」
「せつき」
「は?」
問いには答えず、彼女はきっぱりと宣言する。
意味が分からずさらに首をひねると、それが可笑しかったのかころころと笑われてしまった。
ひとしきり笑ったあと、彼女は真っ直ぐ俺の目を見る。
「セツキって呼んで。菅原先輩、って長いから嫌なの」
「…えぇと」
「ダメ?絆くん」
………その顔は反則だろう。
なんだこの人…分かってやってるなら相当な小悪魔か女優だぞこれ。
「…分かりました、セツキ先輩」
「わぁい、ありがとーっ」
心の中でひらひらと白旗を振って、俺はよく晴れた冬空を見上げた。
(あぁ、なんて白の映える、)
階段の神様。でした。
うーん、何て言うかセツキさんの本領発揮(笑)
セツキが美人なのと、絆もオトシゴロってことで赦してやってください。
ほんとは「セツ」って呼ばせたかったんですが(真夏のシンデレラではセツだった)、セツ先輩ってなんか語呂が悪い気がしたんだ…。
そんなんで第四話でした。