「うーん…僕としては、どうして貴方がそこまで割り切ってしまえるのかが不思議なところではあるんだけど」
「そう?本気で恋人探すわけでもないんだし、合コンくらい別にいいかなーって」
「心配にならないの?あの子が他のオトコにどんな目で見られてるか知れたもんじゃないのに」
「あー、俺の恋人は自衛出来てるから。どんなに熱心に誘われても、リスクとリターンが合わなければ綺麗にスルー出来るからね。それに、君のとこみたいにお人好しでも天然でもないし」
「あぁ、それは確かに大きいかもしれない。…でも、その逆も有り得るんじゃないの?」
「逆って?」
「つまり、リスクとリターンが合えば乗り換えられるかもしれないんじゃないの、ってこと」
「…そうきたか。手厳しいね」
「だってそうだろう?…それに、いくら恋人だからって視線や想いまでは制御なんてできないんだ。だったら最初から、あの子の視線が揺れる場所になんて行かせたくない。…我儘なのも、分かってるけど」
「なるほど、ね。もちろんそれもひとつの選択だと思うよ」
「…僕の心が狭いって、笑う?」
「いや。どこにも行かせたくないくらいに彼女が好きなんだなって思っただけ」
「貴方は違うの?他人事みたいに話すけど」
「うん?もちろん彼女のことは大事だよ、愛してる」
「…その割にはドライだね?」
「そりゃ、オトナですからね」
「オトナ、ねぇ…?澄ました顔してブレーキばっか上手くなって、ブラフに忍ばせなきゃ本音が言えなくなるのがオトナとは、到底思えないけど」
「君は意地の悪いことを言うね」
「それはどうも」
「でも、彼女が必死になって俺と並べるようにオトナになろうとしてるんだ。だったら俺は、いつだってその先、彼女の目指す場所にいてやらなきゃ失礼じゃない?オトナである俺に彼女が惹かれたんだ、だったら俺はオトナで在り続けたいっていうか」
「…自分を責めて彼女が泣くの、知ってるくせに。そこまでしてオトナである必要って、あるの?」
「だってあの子が泣くのはみんな俺の為だろう?自分の為だけに恋人が泣くのなんて、最高じゃない」
「…貴方がそんな風にひねくれてるから、彼女も本音を飲み込んじゃうんじゃないの」
「それはあるかもね。だからこっちとしては彼女の本音を暴こうと躍起になるわけだけど」
「だったら皮肉交じりに暴くのはやめて、貴方が素直になってみれば良いだけだと思うんだけど」
「やだよ、そんなの。だってそんなことしたら、俺がどれだけ彼女に惚れこんでるかばれちゃうじゃないか。今でこそなんとか余裕ぶった顔、取り繕ってるっていうのにさ」
「や、ばらしておきなよ、そこは素直に」
「甘いね。自分の手の内は晒さずに相手のカードを引き出させるのが醍醐味なんだよ」
「うーわー…分かってたけど、本当に性格が悪いね?彼女も可哀想に」
「君にだけは言われたくないけどねぇ。…ま、しょうがないからたまにはデレてあげようかな」
「別に貴方ツンでもないしそれデレてもないし。僕もメールしよっと」
(男の矜持ってやつですよ)
お題消化作、彼とカレのお話。
昨日の「彼女のドレスが翻る」の男の子バージョンです。
それにしてもカレの性格が歪んでる。
どうしてか彼がまっとうに見えます、えぇ間違っていると分かってますが!
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