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「女の子が苦手」
苦手なものっておありですか、そう尋ねられて俺が返したのはその答え。
当然のことながら、彼女は複雑そうに眉を寄せる。
露骨に顔を顰めたりしないあたりがなんとも彼女らしいとは思うのだけど。
「…えーと…それは、あれですかわたしの性別をお忘れですか…?」
「あはは、まさか」
「あぁ分かりました遠まわしな嫌みですかコノヤロウ」
「違うってば」
もちろん嫌みだとか皮肉だとか、そういうんじゃないってことは彼女もよく分かっているのだろう。
その証拠に、ドライに歪めた表情をすぐにほどく。
…もっとも、彼女が訝るのも無理はないんだけど。
彼女は当然『オンナノコ』だ、性別も、もちろん年齢的にも。
「…や、わたし割と自分では女の子だと思ってるんですけど」
ふんわりと巻かれた栗色の髪、白い肌。
Aラインの膝丈のスカートに、エナメルのストラップシューズ。
曲線で構成された身体、俺よりずっと低い位置にある頭。
どこからどう見ても君は女の子だし、それもとても女の子らしいと言えるだろう。
「うん、そうだね」
「なのにその『オンナノコ』の前で苦手とか言います?普通」
やっぱり先輩は性格が悪い、そう彼女は可笑しそうに笑う。
うん、そこなんだ俺が君を好きな理由。
皮肉家で厭世家、中途半端な絶望と諦め。
それでも見捨てられない、優しさ故の脆弱な精神。
「なんていうの、女の子特有の真っ直ぐさとか、だめ」
「…なかなかに手厳しいことを仰いますね」
「綺麗じゃん、女の子って。中身はどうか知らないけどさ」
丁寧に作りこまれた危うさ、可憐さ。
女の子、であることを知っている横顔。
時に残酷で強かで、それでも最後には愛らしく在ることが絶対条件のような。
「世界に期待してる気がするんだ、彼女たちは」
「期待、ですか?」
「楽観的、っていうのとはまた違って、結局は世界が自分に優しいって思いこんでるところが苦手なんだ」
「…分かるような、気もしますけど」
言ってから、君は薄く笑う。
「まぁ、わたしも女の子の一員ですし。そんなこと言ったら可笑しいですけどね」
「でも、君は期待している?世界に対して」
「さぁ?どうでしょう」
君は違うよ、と俺は心の中で笑った。
最後の最後に、君は世界を突き放す。
その悲しいくらいの潔さが、とても愛おしい。
「…俺は君が好きだよ」
「ありがとうございます」
にこり、互いに笑った口元はよく似ている。
白い首筋に揺れる、微かな後悔と嘲笑。
「わたしはお眼鏡に適った、ってことですか?」
「そんなとこ。もっとも、例え君が『女の子』だとしてもやっぱり俺は君になら恋してたと思うけどね」
「あら、嬉しいことを言ってくださいますね」
嘘みたいな駆け引きは、その実多大に本心を含んでいるのだ。
俺も彼女もそれくらい分かっているし、分かっていることを知ってもいる。
だから笑うんだ、歪な合わせ鏡みたいに。
「…わたしも、先輩のこと好きですよ」
「ありがと、嬉しいな」
世界に絶望した者同士、寄り添って傷を舐め合うのも悪くはない。
お題消化作。
あれ可笑しいなもっと明るくする予定だったんだけどな…!?
カレとカノジョは相当テンションあげないと暗くなります。
っていうか性格が悪くなります。
ほんとはもっと良いコたちです。
………たぶん。