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※カレとカノジョ。
ひよこが大漁です。
「先輩、あれやってきても良いですか?」
「ん?」
デート中、袖を引かれて振り向いた。
彼女が指差したのは、ゲームセンターの入口に置いてあるUFOキャッチャー。
というか、その簡易版?
中にはなにやら黄色い物体がてんこ盛りになっている。
「何?これ」
「ひよこですよー」
よくよく見ると、なるほどそれは確かにひよこ。
まんまるい身体に、ちょこちょこっと嘴やら目やらが付いている。
ころころとしたそれは、確かになんとなく愛嬌がある。
「好きなんですよー、こういうの」
「へぇー…そう言えば君、ふく助(※軍部のマスコットキャラクター。ピ●ポくんてきな存在)も可愛いとか言ってたね…」
ふく助は、わが軍に親しみを持ってもらうことを目的として作られたマスコット。
軍服を着たふくろうの人形なんだけど、まぁぶっちゃけ可愛くないというか…不気味というか…。
それでも彼女はあっさりと可愛い、とのたまうのだ。
「えー、ふく助はけっこう愛嬌があって可愛いですよ?」
「そう…」
言いながら、彼女は小銭を押し込んだ。
うぃんうぃん、と音を立てて動くアームを操作して、こんもりとひよこが積み上げられたあたりにさしこんだ。
「お、」
アームが動いて、ひよこを掘り返す。
ころころころ、と数個ひよこが下に落ちてきた。
「やった、取れましたよ」
嬉しそうにそう言って、しゃがみ込む。
俺はそのまま上の部分を眺めていたのだが、そとでふと気付く。
ひよこの落下が――止まらない。
「あ、あれ?」
彼女も気付いたらしい。
取り出し口に腕を突っ込んだまま、困惑したような声をあげる。
「え?え?嘘、ひよこが止まらな…」
ころころころころころころころ。
上の方のひよこが転がり落ちる際に、下のひよこを巻き込むという連鎖。
うーん…彼女の狙いがよっぽど良かったのか…。
下の取り出し口に向かって転がり続けるひよこは、なんかちょっとシュールだ。
「先輩どうしようぴよが止まりません!」
「止まらないねぇ」
「えぇええどうしよう…!?」
「あ、落ち着いた」
…やっと止まった。
最後に名残のように、ころ、と一匹転がり落ちて。
そこで漸く、ものすごい勢いのひよこ落下は治まった。
「はい、袋」
「どうも…」
さすがにそのままカバンに入れるのは大変なので、店の中に掛けてある袋を持ってきてやる。
口を広げると、取り出し口からこんもりとひよこを掬って放り込む。
その作業を数回繰り返して、とりあえず怒涛のひよこ攻撃は終わった。
「…すごい、たくさん取れたね…」
「えぇ…」
一番小振りな袋だったけれど、その中にはこれでもかとひよこが押し込まれていて。
…うん、やっぱりシュール。
「それ、どうするの?」
何匹いるかも数えたくないひよこ軍団。
細いボールチェーンは付いているけれど、カバンやケータイにつけるにもちょっと数が多すぎるだろう。
困った顔をするだろうな、と思っていたけれど、予想に反して彼女はにっこりと笑った。
「配り歩きます」
「あー…」
言われて納得する。
貰ってくれそうな連中は、確かにいっぱいいる。
そのうち全員のケータイに、大量のひよこがぶら下がるんだろうなぁと苦笑する。
女性陣はまだしも、イイ歳した大人のケータイにひよこ…うーん、まぁそれも悪くはないけど。
「…ちょっと見ものだよねぇ」
見下ろした袋の中。
大量にひよこたちが、からかうようにがさりと音を立てた。
(ぴよぴよぴよぴよ)
たまーに売ってるんですよね、このまんまるいちっちゃいひよこのマスコット。
ぴよりだま?ぴよだまり?とにかくそんな感じの…。
可愛くて好きです、シュールだけど。
今回はカレとカノジョでしたが、このまま仮想世界に続くと思われ。
みんなでひよこ付ければ良いよ。