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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    星の巣。

    ※仮想世界。
    コットンキャンディ、の続き。
    ひよことふく助。



    「…氷雨さん」
    「はい」
    「これ…何なの」

    ケータイを目の高さに掲げてみせる。
    ぶらん、とそこからぶら下がるのは大量のひよこ。
    なんでもこないだ氷雨さんがクレーンゲームでものすごい量ゲットしてきた…らしい。
    きょとん、と不思議そうな顔をして、氷雨さんは当たり前のように答える。

    「ひよこですよ」
    「それは分かるけど…なんでこんなたくさん…」

    ぴよぴよぴよ、ぴよ。
    飾り気のない黒のケータイに、たくさんの黄色いひよこ。
    さきほど有無を言わさずつけられたものだ。

    「えー、良いじゃない蓮、可愛いよぉ」
    「あぁうん…風姫、君はね…」

    風姫のケータイ(ちなみにライムグリーン)にも同じく大量のひよこが連なっている。
    なんかもう、ケータイよりひよこ軍団のほうがでかい。

    「どっちが本体か分からないよ…」
    「可愛いのにー。ねぇ楚夜ちゃん、可愛いよねー、ひよこ」
    「うん…私は、嫌いじゃない、」
    「私も可愛いから好きよー」
    「桃花さんがそう言ってくれると嬉しいです」

    きゃいきゃい、と戯れる女性陣は微笑ましい。
    微笑ましいけど、やっぱりこのひよこは彼女らのケータイについているからこそ可愛いと思うんだ。

    女子ならまだいいけど。
    僕一応男なんですけど。
    色々言いたいことはあるものの、とりあえず呑み込んでひよこをつつく。

    「…」

    ぐる、と部屋のなかを見回すと、全員のケータイ、つまり男性陣も含めてに同じようにひよこ軍団が居座っている。
    なんかもう…なんかもう…。
    とりあえず蒼さんとか青のケータイにひよこがついてるのが妙な笑いを誘う。

    「…なぁお嬢、なんで俺までつけさせられてるんだ」
    「お裾わけですよ」
    「ひよこのお裾わけか」
    「良いじゃない蒼さん、可愛いわ」
    「…そうか」

    桃花さんににっこりと微笑まれ、蒼さんはあっさり議論を飲み込んだ。
    良いのかそれで。
    恋は盲目というか…いや、この場合惚れた弱みか…。
    まぁ桃花さんはこのパーティのなかだったら最強だもんなぁ、と本人以外の全員が納得するであろうことを思った。

    だって僕、桃花さんとは戦える気がしないし。
    こないだ風姫にそれを言ったら、「あたしも絶対無理ー」と返されたしね。
    神様の子供が二人も揃って、何してんだかとは思ったり思わなかったり。

    「晃とー、あと藍はまぁ良いとして…」
    「えへー、似合う?似合う?」
    「うん、似合うよ」

    照れたように晃がケータイを揺らす。
    このまま女子に混じってもあんまり違和感ないよな…ある意味才能かもしれない。
    そして風姫のケータイといい、晃の髪色といい…ひよこ色に黄緑ってやたら似合う気がする。

    「え、蓮くんおれも一応高校生男子なんだけど」
    「大丈夫だよ藍、似合ってるよ」
    「えぇぇえぇぇ…!?なんかすっげぇ投げやり…!」
    「だって藍パソコンにもステッカー貼ってるでしょ」
    「そうだけどぉ~…」

    藍が仕事道具であるパソコンに、わざと目立つステッカーを張るのにはちゃんと意味がある。
    もちろん僕もそれは知っているのだが、困りはてた藍の顔が面白いので知らぬ振り。
    楚夜さんや桃花さん、晃がいる場では、仕事のことを口にできないのはもちろん承知の上だ。
    ぶすぅ、と藍がむくれた。

    「蓮くんちょー性格悪い」
    「あはっ、知ってる」
    「お前らはまだそれなりに女顔だから良いけどさ、俺とかどうすんだよ…!!」

    さりげなく失礼なことを言ったのは青だ。
    ちょっと待て、誰が女顔だ。
    ぐったりと見るからに疲れた顔で、青はケータイを氷雨さんに突き出す。

    「…春日、これ取っちゃダメか」
    「あら青さん、何を仰るんです?」
    「いやだって、さすがにどうよコレ…俺高3男子なんですけど」
    「大丈夫ですよ可愛いですよ」
    「可愛いことが問題なんだよ!」

    ぎゃん、と青が吠える。
    まぁ…確かにね、男としてちょっと恥ずかしいものがるけどね…。
    でもそれ言ったら、僕たちとはちょと離れたところでケータイいじってる優さんとかどうなるの。
    もうさも当然と言わんばかりにひよこぶら下げてるよ?

    氷雨さんが姉のような顔で青を見つめた。

    「えぇー…じゃあ青さん、ふく助つけます?」
    「は?ふく助?」
    「軍部のマスコットキャラクターです。ご覧になります?」

    そう言って氷雨さんは鞄から小さな茶色っぽい物体を取り出して、青に向かって放り投げる。
    ただ青はケータイと飲み物を持っていたため、受け止めきれずにそれは床に転がった。

    「なに?これ」
    「蓮、何それ?見せて見せてー」

    拾い上げて、こちらに向ける。
    うわぁ、と風姫がものすごい微妙な声を上げた。

    「あー………」
    「風姫さん?なぁに、それ」
    「楚夜ちゃん、桃花さん…これ…」
    「あぁ……」
    「あらぁ…」

    ことごとく微妙な反応。
    うん…だって、ものすっごい微妙なんだ…。

    軍服を着た、ふくろうのぬいぐるみ。
    それふだけならまだ可愛らしい、で済むのかもしれないけれど、このふく助の場合、目が…。

    「うつろ…だね…」
    「うん…」

    虚ろとしか言いようのない黒い大きな瞳が、まっすぐにこちらを見つめている。
    ぬいぐるみってそんなに表情はないものだけど、それでもこれは怖すぎる。
    無言で青に差し出すと、しばし沈黙したのちそっと彼はぬいぐるみを氷雨さんに返した。

    「…すみません、ひよこで良いです」
    「そうですか?」

    可愛いのに、といささか不満げに呟く年上の友人が、本気で分からなくなりました。

    (ひよことふくろう)



    なっげぇ…!!
    仮想世界は登場人物が多いからいつもぐだぐだだよ…。
    絞ればいいのかしら。

    前回の続きでした。
    とりあえずふく助が書けたので満足。
    椎さんが日記でふく助描いてくれたから、ビジュアルが知りたい人は要チェックだよ!
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    01 君はプリマヴェーラ。

    ※仮想世界。
    今更ながらに桃花と氷雨のファーストコンタクトを載せてみる。

     

    「…曜日が変わると、雰囲気もなんとなく違うものね」
     
    氷雨の同僚が、風邪をひいた。
    普段この曜日は彼が見回りをすることになっているのだが、そんな理由から翌日担当だった彼女が振り替えで行くことになり。
    一応上司である優の言いつけに素直に頷いて、普段は軍のデスクに向かっている時間に外に出た。
     
    「(…良い天気)」
     
    低気圧とはとにかく相性の悪い彼女。
    晴れているとそれだけでなんとなく嬉しい気がして、少しだけ笑った。
    かつこつと、丁寧に靴音を立てながら見慣れた街中を歩いていく。
     
    「あ、」
     
    思わず、小さく声を上げた。
    意識せず、足すらも止まる。
     
    氷雨の目を奪ったのは、色鮮やかに咲く花々。
    街の片隅にひっそりと開かれた、そこは小さな花屋だった。

    「…可愛いー」

    つい、子供っぽい声が漏れて恥ずかしくなる。
    だけど柔らかな光の灯る店内や、細かなところまで心配りのされたディスプレイ。
    鮮やかに華やかに、けれど決して雑然とした印象を与えることなく配置された花籠は、つい目を引かれるほどに愛らしい。

    普段彼女が見回りに行くときは、定休日らしく閉まっていて。
    この店の前に立つのは、実は今日が初めてだった。
     
    「(…そっか、もうガーベラの季節なんだ)」
     
    多彩な色に染まったたくさんのガーベラに、苦笑をこぼす。
    それと同時に、先ほどまで自分が居た色彩に恵まれない軍部を思い出した。

    灰色のデスク、白い壁、沈んだ色の制服。
    軍人なので奇抜な髪色など在りようもしない。
    そういえば最近目を奪われたのは、青の鮮やかなピンクの髪だったことに思い至った。

    明るい、春の色。
    奇抜な色に染めて刺々しい雰囲気を醸し出してはいるが、本当は彼の髪は酷く柔らかで優しい音を奏でることを知っていた。
    それは自分だけではなく、彼の傍にいる皆が知っているのだけれど。

    くす、と微笑ましい気持ちになりながら、飾られた花に目を落とす。
     
    「(この薄いピンクはエレノア、白地に赤い縁取りは…ポンパドールかな)」
     
    考えればいくつかの名前も浮かぶ。
    忙しさにもまれるうちに、いつの間にか自分が季節に疎くなっていたことに気付いて、少し彼女は恥ずかしくなった。
     
    祖父母が花好きだったため、元来氷雨は植物に関してはそこそこの知識も持っていた。
    なので少し前ならば、彼女もショーウィンドウの中のマネキンが着る衣服などではなく、木々の間に咲く花や、こうして花屋の店先に並ぶ植物で季節の流れを知ることが出来ていたのだ。
    けれど今は、見つけてようやく思い出す始末。
    なんていうか優雅じゃない、そう思って彼女は苦笑した。
     
    「あら、いらっしゃいませ」
     
    その時だ。
    おっとりとした声が奥から聞こえて、氷雨は驚いて居住まいを正した。
    そんな彼女を苦笑しながら、姿を見せたのは店員と思われる女性。
     
    「(綺麗な人、)」
     
    ふわりと首筋で揺れる髪や、あたたかな眼差し。
    大人びているのに、こちらを見る笑顔は可憐な少女のようで。
    花のような人、と聞いて浮かべるのはきっと彼女のような女性が正しいのだろうと氷雨は想う。

    少しロマンチックな言い方が許されるなら、花の妖精。
    色とりどりに咲く花の間からやってきた彼女を見たとき、本当にそう感じたのだ。
    どぎまぎと、氷雨は少しだけ目を伏せる。
     
    「あ…ごめんなさい、お店の前で、立ち止まったりして」
    「ふふ、良いのよ。見て行ってくれて嬉しいわ」
     
    警戒されるか、軽蔑されるか。
    軍の猟犬であるが為の制服を見ても、態度を変えない彼女に氷雨は少しだけ安堵する。
    その可憐な彼女はにっこりと笑って、氷雨を見た。
     
    「女の子の軍人さんなのね?素敵だわ」
    「あ…ありがとう、ございます」
    「お仕事、大変なんでしょう?あまり無理はしないようにね」
     
    穏やかな口調と、笑顔。
    優しい人だ、と心底から思った。
    こんな風に自分たちに微笑みかける人を、氷雨はあまり知らない。
    出逢えたことに感謝して、改めて足もとの花に視線を移した。
     
    「…もう、ガーベラが出ているんですね」
    「えぇ。花は好き?」
    「はい。…最近は、色みのない生活をしていたから。余計に」
     
    氷雨は弱々しく微笑んだ。
    寒々しい、自分の世界。
    そこに花が在ったらきっと心も穏やかなのだろう。
    そうは思うけれど、あまり構ってやれないことを考えると少し躊躇う。
    それに殺風景なデスクに鉢植えや切り花を置いておくのも、なんだかアンバランスだ。
     
    「ふふふ。私の恋人も、なんだか似たようなことを言っていたわ」
    「似たようなこと?」
    「赤と黒しか見ていないから、植物の緑が目に沁みるんですって」
     
    笑う彼女に、つい氷雨も笑った。
    それを見て、彼女はさらに嬉しそうな顔をする。
     
    「軍人さん、笑っていた方が可愛いわ」
    「…照れてしまいます、そんなことを言われると」
     
    軍部の男性陣からの褒め言葉には鉄壁の笑顔で対応できても、なんだかこの可愛らしい彼女からの言葉にはついつい素が出てしまう。
    照れ隠しのように俯いた氷雨に、彼女は言う。
     
    「じゃあ、照れ屋な軍人さんに私からプレゼント」
    「え?」
     
    彼女はガーベラの入ったバケツから、一本抜き出して。
    適当な長さで茎を切り、それをそっと氷雨の髪にさす。
    小振りな淡い、ピンクのガーベラの名前は――ティアラ。
     
    少し離れて氷雨を見ると、彼女は柔らかに笑った。
     
    「ほら、よく似合う」
    「…ありがとうございます」
     
    お引き留めしてしまってごめんなさい、そう言う彼女に首をふり。
    今度は小さな鉢植えを買いに来ることを約束する。
     
    「デスクでも育てられるような花、選んでくださいますか?」
    「えぇ、もちろん。綺麗な色の花が咲くものを取りよせておくわ」
    「嬉しいです」
     
    名残を惜しみつつ別れを告げて、氷雨は中断してしまった見回りを再開する。
    歩きながら、さしてもらったティアラにそっと触れた。
     
    足音が軽くなったのは、きっと気のせいなんかじゃない。
     
     
    (春の日差しと桃の花!)
     
     
     
     
    椎さんに以前送りつけたものの改訂版。
    すっかり忘れていたよ…結構な回数桃花さんを書いているのにまだ載せてなかったという。
    最近まったく更新できてなかったので、慌ててみた。

    もう桃花さんを書くのが楽しすぎます。
    このままファーストコンタクト編を書こうかな…椎さんの日記に在った、蓮を攻撃する晃が書きたくて仕方ないのです。

    夏休みは終わるけど、頑張ろう。

    01 歪んだ鏡に手を伸ばし、未だに揺らぐ己と出逢う

    ※仮想世界。
    恐ろしく暗いので注意。



    ごとり、と。
    音がした、自分の後ろで。

    「…」

    振り返るのが、怖かった。
    嫌だ、振りむきたくない。
    けれども意志とは裏腹に、ゆっくりと首は後ろを向こうとする。

    「っひ、」

    息を呑む。
    嫌だ、違うこんなのは――嘘だ。

    視界に入ったのは、あかいろ。
    そこに浮かぶ、深緑のジャケット、白い腕、茶色い髪。
    転がった鉄パイプ。

    「かす…が…?」

    春日氷雨。
    ぴくりとも動かない、うつろな瞳だけこちらに向けて。

    「っ!!」

    思わず引いた足が、何かに当たった。
    見下ろせば、彼女と同じ服を着た、男。
    淡い茶色の髪が、ぷかぷかと冗談のように血の海に浮かぶ。

    冗談、だ。
    こんなの、タチの悪い。
    優は目を閉じて、けれど顔は生きた人間の色をしていない。

    「…う、そだろ…」

    ゆるり、目を向ける。
    壁際、ごろりと転がっている、むくろ。
    白いカッターシャツが赤黒く染まって、それはまるで彼の瞳の色のよう。

    「れ、ん…」

    蓮。
    汚泥に咲く花の名前。
    けれどその名を持つ彼が、横たわるのは生臭い赤。

    どうしてどうしてどうして。
    どうして、こんなことに。

    叫びだしたくて目を閉じた。
    頭を抱えようとして、ようやく己の手に在るモノに気付く。

    「…っ」

    二丁の、銃。
    それは、彼のもの。
    鳥海青の、武器。

    顔を上げた。
    そうして青ざめる。

    血の匂いで気付かなかった。
    けれど確かに香るのは、馴染んだ硝煙の。

    「…嘘だ、」

    氷雨も、優も、蓮も――銃殺、されている。
    首、腹、心臓。
    撃ち抜かれて血を溢れさせて、冷たくなった。
    それをしたのは、 自、  分 ?

    「――ヒトゴロシ、」

    不意に、甘い声がした。
    聞き覚えのある声。
    目を向けると、見知った顔がもうひとつ。

    「かぜひめ、」
    「ヒトゴロシ」

    風姫はそう言って、笑う。
    青の知らない顔で。
    薄く淡く、冷めた笑みを浮かべて。

    真っ白いセーラー服、腹の部分が真っ赤に染まる。

    「風姫っ」

    呼ぶ声に、にっこりと笑って。
    もう一度、彼女はくちびるを開いた。

    「青くんの、ヒトゴロシ」




    「っ!!」

    は、と。
    目が覚めた。
    同時に跳ね起きて、血のにおいを探す。

    「…んだ、よ…夢か…」

    探した匂いがないことと、ぐっしょりと汗をかいていることに気付く。
    嫌な夢をみた、と思う。
    耳の奥、まだ彼女の声が残っている。
    ヒトゴロシ――そう言って、彼女は笑った。

    「…人殺し、か」

    それを否定する言葉は、自分にはない。
    紛れもなく自分は人を殺したし、これからも殺していくのだろうから。

    嗚呼、嗚呼。
    そんな自分が、平穏を望むことがそもそもの間違っていたのだろうか。
    だったらもう触れない、そう思う反面、それでも縋りたい己に気付く。

    あの場所はあんまりに平和すぎて、優しすぎて。
    自分の影を浮き彫りにする。
    なのにそこに触れていたくて、痛くて痛くて。
    足掻く、ずっとずっと、苦しいくらいなのに。

    「…」

    開いたてのひら。
    まだ、銃を握っていた感覚がある。
    背筋が冷えて、耳鳴りが酷い。
    いつか、これを、向ける日が来るのだろうか?


    ああだけど、もしもそんな日が来たとしても。
    彼らに向けるくらいなら、俺は迷わず己の頭に向けようと。

    早く明日になればいい、と思う。
    そうしたらこんな夢、忘れてしまえるのに。

    再びもぐりこんだ布団は、やけに冷たくて身震いした。

    (01 歪んだ鏡に手を伸ばし、未だに揺らぐ己と出逢う)




    お題消化ー。
    書き終わってから慌てて探したので、あんまりお題に合ってません(笑)
    とりあえず青にしてみた。
    こんなん書いてますけど愛はあります、本当です。
    って言うか愛しかありません。

    次はもうちょっと明るいの書こう…ほんとは普通のシリアスが書きたかったんだ、こんなに暗くするつもりはなかったんだ…。

    色々、すみませんでした(土下座)

    それでも世界は、

    ※仮想世界。
    プール編ラスト。



    てのひらの下で、ぱしゃんと水が音を立てる。
    耳に馴染むその音は、確かに自分たちは海から生まれたのだという記憶を呼び覚ますよう。
    揺らめく炎とともに在ることが、蓮にとっては最も自然で安らげるスタイルではあるのだが、こういうのも悪くはないな、と笑った。

    「ぷはっ」
    「わっ」

    突然顔を上げた蓮に、驚いて藍は肩を揺らした。
    それからにっこりと笑った。

    「ビックリしたー、蓮くん上がってこないから死んでんのかと思ったよ」
    「さすがにそれはないから。ちゃんと動いてたでしょ?」
    「やー、それがさぁ今眼鏡してないからよく見えないんだよね…なおさら色々危うい」
    「あー、そっか。目ぇ悪いもんね」

    なんとなく手足を揺らめかせながら、他愛もない会話に興じる。
    今は波のプールに一時間に一回の高い波が訪れる時間の為、何の変哲もないただの四角いプールに人はまばらだ。
    そう言えば風姫や楚夜はどこに行ったのだろう、とほとんど同じことを考えた。

    「もう四時かー」
    「あ、もうそんな?じゃあそろそろみんなと合流しなきゃね」

    めいっぱい遊んだあとに、帰るのはなんだかさみしい。
    それは大人に近い年齢になった今でも変わらず、むしろ昔よりも細かに感情を理解するようになったからか増したようにさえ思う。
    なんとなく、会話は途切れて二人して徒に水を掬う。

    「…蓮くん、あのさぁ」
    「なに?藍」

    ゆら、ゆら。
    水に声が溶ける。

    「おれさぁ、こうやって遊ぶ友達って、今まで全然いなかったんだよね」
    「…そう」
    「おれだけじゃなくて、兄さんたちもだけど。こんな仕事してるから、なんかね」
    「…うん」

    人間は、ああも容易く壊れる。
    そうして自分は、それを壊す手段を持っていて。
    時折、己が化け物のように感じるのだ。

    「だからさ、」

    そこで、藍は笑った。
    子供っぽい笑顔。
    眩しそうに蓮は目を細める。

    「こうやって遊んだりできるの、すっげー楽しい」

    囁く声は、まだ聞こえるけれど。
    それでもこうして楽しいと口にできることが、まだ少しだけ誇らしいと思う。
    くす、と蓮は軽やかに笑みを返した。

    「僕も、楽しいよ」
    「…そっか」
    「うん」

    なんとなく照れたように顔をそむけた、その時だ。

    「「うわ!」」

    ばしゃぁ、とすぐ近くで盛大に水飛沫があがる。
    頭からそれをかぶる形になって、思わず強く目を閉じた。

    「うっわ…鼻に入った…」
    「何、何なの?何が起きたの?」
    「あー、わりぃ足滑らした」

    聞こえたのは青の声。
    どうやら彼が勢いあまってプールに飛び込んだらしい。

    「…青、」
    「ん?」

    すい、と蓮が青に手を伸ばす。
    髪に触れるように耳のあたりを彷徨った手は、そのまま頭の上にのびて。
    ぽん、と軽い調子でそこに置かれた。
    そして。

    「えい」
    「のわっ!?」

    頭の上にのせた手を、そのまま力いっぱい下げる。
    …まぁ、つまりは沈めたのだ。
    青を。

    「わぁ蓮くんえげつねぇ…!!」
    「やー、可愛いもんでしょこれくらい」

    暴れるのを無視してしばらく沈めたあと、ぱっと手を離した。
    ぶは、と顔を出して、青が蓮をにらんだ。

    「てっめ…!何すんだよ!」
    「軽く沈めただけだって」

    ひらひらっと手を振って、蓮は全く悪びれた様子もなく。
    貴公子さながらの優雅な笑顔を向ける。

    「ヘタしたら死ぬぞおい!?」
    「あー大丈夫、僕青のこと信じてるから」
    「そんな信頼いらねぇよ!」

    「あー、あおくん達こんなとこにいたー。何してんの?」

    ぱたぱた、とプールサイドを走ってきたのは晃だ。
    どうやらじゃれあってるように見えたらしく、僕も混ぜてとでも言いたげな表情で。
    まぁじゃれあうにしては少々…少々?乱暴だが。

    「あ、あっきー。今ねー、にーさんと蓮くんが信頼を確かめ合ってたんだよ」
    「へーそうなんだ。いいなー」
    「ちっげーよ!鶴見てめぇ信じるな!!」
    「え、違うの?」

    コントのようなやり取りに、蓮は肩を揺らして笑う。
    自分が筆頭なのは棚上げだ。

    「あ、みんなこんなとこにいたー」
    「風姫」

    少し離れたところで風姫が手招きする。
    全力で遊びまわったのだろう、もう髪の毛もぐしゃぐしゃだ。
    それでも晴れやかな顔をしているから、きっと持った感情は同じもの。

    「なんかねー、そろそろ外出てみんなでごはん食べようよって。お腹すいたでしょ?」
    「あー…そういえば」
    「水泳って体力使うからな…」

    言いながら上がる。
    浮力に慣れた身体は重く感じて、ついでのように欠伸が出た。

    西日がキラキラと光って、プールはダイヤモンドの粉でも振りかけたようだ。
    思わず足を止めて、その光景に見入る。

    どうしてだろう。
    この世界は、時折酷くうつくしい。

    「早くー、追いてっちゃうよー?」
    「今行く!」

    きらめく世界に後ろ手を振って、足早に向かう。
    笑い、祈る、彼らのもと。

    (ビューティフルワールド)





    一応プール編終了です…!
    中途半端なのはもう気にしないことにした。
    ほんとはここに居ないメンバーも書こうと思ったんだけど、力尽きたんです。

    ちなみに最後の方、名前を書いてないのは仕様です。
    誰に当てはめて読んでも良いかなーって思ったので。
    お好きな誰かに当ててみてください!

    レモネィド・レボリューション。

    ※仮想世界。
    まだまだプールです。



    「なんて言うか…えぇ、まぁ予想はしてましたけどね…」
    「あー…とりあえず、お疲れお嬢」

    ウォータースライダーを滑り終え、心なしかぐったりとした表情で氷雨がプールサイドに上がってくる。
    労うように肩にふれたのは蒼だ。
    苦笑を浮かべて、背後のスライダーを見やる。

    「…大変だったな」
    「大変というか…何て言うか、若干予想を超えたと申しますか…」

    予想外に長かった。
    というか、曲がってた。
    途中からなんかもうよく分からなくなるくらいには。
    あぁもう軽くリバースしそう…いや、しないけど。

    「氷雨ちゃん、はいお茶」
    「ありがとうございます桃花さん…あら、高校生組はどちらへ?っていうか、優さんは?」

    桃花に渡されたお茶を有難く受け取って、そう言えば人数が大幅に足りないことに首を傾げる。
    大幅に、って言うか半分以上いない。
    …というか、高校生メンバー+優が見当たらないのだ。
    きょとんと不思議そうな彼女の視線を受けて、桃花と蒼が肩をすくめた。

    「もう一度滑ってくるんですって」
    「…優さんも?」
    「というか、優が筆頭で」
    「………若いって素晴らしいですね」

    出たのはそんな言葉。
    とはいえ彼女もまだ19歳、まだまだ若い部類に入るのだろうけれど。
    しかも筆頭だったらしい優は最年長なのだけれど。
    でも、まぁ…その辺は置いておきたい、ぜひとも。

    「とりあえず…私たちはのんびり別の場所で遊びましょうか。流れるプールでゆらゆら、なんて楽しそうじゃない?」
    「賛成です。スライダーはもう結構」
    「右に同じ」

    さすがにテンションを上げたまま遊びまわる元気はない。
    集合場所は決めてあるから、特に困ることもないだろう。

    「…優さん、明日筋肉痛なんてことにならないと良いんですけど…」
    「そうねぇ、この年になると次の日辛いわよねー」
    「…まぁ、大丈夫だろ」

    必然ともいえるけれども、それでもちょっとだけ奇妙な取り合わせ。
    彼らはそれに気付いて、くすりと笑った。




    「あおくーんっ見てみて何あれ超すごい!!」
    「青くん青くんっ!次あっち行こー♪」
    「にーさんにーさーん!おれコレ乗りたい!!」
    「だーもううるせぇっ!!お前らは雛鳥かなんかか晃に藍に風姫!?」
    「「「青くん(あおくん、にーさん)が親鳥なのは、ちょっと…」」」
    「お前ら殴っていいか?」

    高校生組、の一部。
    とにかくはしゃいで楽しそうにしているのは、当然のことながら晃と風姫と藍。
    と、それに巻き込まれている青。

    「やー…なんか良いねー、青春って感じ」
    「見てねーで止めろよこいつら!」
    「えー、嫌だよ面倒だから」

    「楚夜さん、次どこ行きたい?」
    「うーん…そうだな、こっちの温泉になってるトコとかちょっと気になるかも」
    「あ、良いねー。じゃ次そこ行こうか」

    かつその騒動を止めないのは優で、最後尾でのんびりと会話を楽しんでいるのが蓮と楚夜だ。
    ここだけでテンション三段階。
    すでにカオスの予感がひしひしとしている。

    すい、と蓮は腕を伸ばして、先頭を歩いていた風姫の髪(ちなみに今日はツインテール)と青の髪(ちょっと長めなので軽く結んでいる)を引っ張った。
    当然、つんのめるようにして二人は足を止める。

    「はいストップ」
    「んにゃっ?」
    「っだ!?」

    「わ、にーさん急に止まらないでよ!?」
    「ひめちゃん!?」
    「ちょ、藍さりげなく頭突き…!」

    それに引き摺られるように後ろも止まり、蓮は満足げに頷く。
    …ちらほら被害が出てるのだが、そこは気にしないらしい。
    引っ張られた髪を押さえて、風姫が不満げに振り返る。

    「酷いよ蓮ー!何するの?」
    「楚夜さんがココ行きたいんだって。よって方向転換」
    「あ、なら仕方ないねぇ」
    「仕方ないの…!?」

    言われた楚夜本人も驚くくらい、あっさり赦す。
    楚夜が絡んでいるなら仕方ないらしい、彼女の中では。
    にっこりと笑うと、ほら行くよ、と青たちの背中を押す。

    「…なんていうか…」
    「うん?」
    「お前も蓮も、相当なジャイアンだよな…」

    晃に聞かれたとき、咄嗟に蓮の悪口が思いつかなかったけれど。
    もうこのカップルはこれで良いのかもしれない、と青は遠い目をする。

    「なによー、あたしジャイアンじゃないわよー?」
    「そうだよ青、失礼だね君は」

    さらりと棚上げするところも、まったくもってジャイアンだよ。
    心の中でそう呟く。

    太陽はまだ、高い。

    (ビューティフル サマー デイ!!)





    おあー…いつ終わるんだろう、プール編…(汗)
    夏祭りネタも書きたいんだけどな…なかなか終わらないという。
    そしてキャラが多いと動かしづらい…!!

    今回は高校生にナチュラルに交じる優がポイントです(笑)
    あとジャイアンが一人増えました。
    まぁあれだよね、風姫の恋人だもんねってことで。

    相変わらず青が振り回されてるww
    でもごめんそんな彼が好きです(お前)

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    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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