※階段の神様。
自分が息をのむ音がやけに大きく聞こえた気がした。
目の前の彼女、あの人とよく似た顔をした彼女はふっと眼をそらす。
それが合図だったみたいに、俺は教室を飛び出した。
何処に行こうとか、考えてなかった。
なにをしようとか、そんなことも。
それでも足が向いたのは、うす暗く長い階段を登りきった場所だった。
灰色の重たい扉をあけると、冷たい北風が思い切り頬に吹き付けた。
その強さに、一瞬目を閉じる。
「(――おれ、は、)」
祈るような心地でもう一度瞼を開いた先にいたのは、昨日と変わらない穏やかな笑顔だった。
「――おはよう、絆くん」
「…おはよう、ございます」
冷えたコンクリートで囲まれた世界。
寒々しいセーラー服。
向こう側に見えるおそろしく晴れた空だけが、別世界みたいだった。
「あの、」
「ヒメから聞いたんでしょう?」
彼女は寂しそうに笑う。
その表情だけで、全部の答えが繋がってしまったことを知ったんだ。
伸ばした手から逃げるように、くるりと彼女は背をむける。
「…あーあ、ほんとはもうちょっと、黙っていたかったな」
薄く、明るい声。
彼女の声は、ラジオから流れるみたいに俺の耳に響く。
「ほんとは、もうちょっと普通の先輩として、絆くんと話していたかったよ」
ゆらりゆらり。
影法師が揺れる。
ちゃんとこうして影だって出来るのに、とぼんやり思う。
「もうちょっとだけ、普通の女の子をしていたかったよ」
かすむ、後ろ姿。
俺は今、一体どこにいるんだろう。
「また会いたかったのは、本当だよ」
そんなの、俺だっておんなじだ。
思ったところで、彼女は振り返る。
「…ごめんね。私、絆くんのこと騙してた」
最低だね、言った声が風に舞う。
――その声だけでも捕まえられたら、良かったのに。
(最初の魔法が解ける、溶ける)
まだまだシリアス。
そしてこの期に及んでまだ絆のキャラが定まっていないという←
頑張ってマジで…!!
自分の大事なものがもうないって知ったとき、どうするのが正解なんでしょうね。
分からないまんま、書いている気がする。
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