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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    空っぽの神殿

    ※カレとカノジョ。
    考えすぎなのは、誰でしょう?



    「…感情が、なければよかったのにって思いません?」
    「うーん…時と場合に、よるかな」
    「あぁ、そうですね。その通りです」

    わたしはそっと笑う。
    別に、何かが可笑しくてとか、そんなことではないのだけれど。
    そうして口にしてから、こんな風に議論を持ちかけるふりをしてでもわたしはこの人に甘えたかったのだと気付いて苦笑する。

    あぁ本当に、弱くて脆くて。
    わたしの精神は、どうにも思うようには働いてくれない。
    もっと冷静で、それこそ感情なんてなくても良かったのと思うのと同時。
    感情がなければ、彼の傍に居てこんな風に微笑む術さえないのだということも考えた。

    見透かしたように彼は微笑んで、わたしの手を取った。

    「また、何か考えているの?」
    「考えている、というか…」
    「悩んでる?」
    「くだらないことばかり考えて、迷っている、というのが適当かしら」

    もう一度、わらう。
    今度は明確に、自嘲の為に。
    それに気付いたのだろう、先輩は咎めるような眼を向ける。

    「くだらないことって?」
    「例えば、人間の感情とか」
    「人間の感情は、くだらないこと?」
    「少なくとも、今のわたしにとっては」

    言葉にしながら、わたしは泣きそうになる。

    あぁ今だってそう。
    この感情だって明日になったら色を変えていて。
    ほんの一瞬のことであるはずなのに、どうして耐え難い苦痛のように感じるのだろう。
    そしてわたしは、どうしてそれを感じようとしてしまうのだろう。
    考えたところで、変わってしまうのに。
    結局のところ、心を砕くだけ無意味かもよとどこかで声がする。

    痛い。
    だから、これを亡くしてしまいたい。
    痛いと思うのは、感情?だったら、それを亡くしてしまいたい。
    だけど、その痛みを掬い上げているのもわたしの感情なのだ。

    分からないまま、迷走を続けている気分。
    子供みたいに、泣いてしまいたいとどこかで思う。

    そしてもっと驚いたことに、痛みを享受し続けたら救われると「わたし」が思っているのだ。
    救われる、例えば誰に?
    わたしは神様の類は信じていないし(そう言えばあの紅い瞳の彼と、翡翠の瞳の彼女。彼らも神様を信じていないと言っていた。自身がその存在の証であると、言ってもよさそうなものなのに)、救済なんて決めるのは当人だと思っている。
    なのに、それなのに。

    わたしは未だに、祈りが人を救うと夢を見たがっている。

    「…ごめんなさい」

    気付いたら俯いていた。
    声を振り絞ったわたしの髪に触れて、目の前の彼が首をかしげた気配がする。

    「どうして謝るの」
    「いえ…ちょっと、情緒不安定みたいなんです」

    祈りが人を救うのか。
    祈りを捧げられた相手が、そのだれかが自分の為に祈ってくれたという事実に対して感謝して、心が救われたと感じた時にはじめてそれは救済になるのだろう。
    祈りだけでは、祈っただけでは願っただけでは、きっとだ誰も救えない。

    そして、わたしの祈りではどう足掻いたって人は救えないことも分かっていた。

    「声が揺れてるね」
    「ごめんなさい、」
    「ううん、怒ってないよ。ただ、少し心配かな」
    「…心配?」

    君は自虐趣味だから、そう言って彼は微笑む。
    ぎこちなくそれに笑みを返して、確かにそうだと胸の中だけで納得した。

    祈りが人を救う。
    そう願って、信じて、だけどわたしにはそれが出来ないと突き放して絶望する。

    たぶん、どれもこれも。
    わたしがまだ、許しを乞うている証拠だ。
    泣きそうな気分のまま、絶望的な答えに立ち尽くす。

    「無理に考えて、答えを出さなくても良いよ。水面が凪ぐのを待ったって、悪だとは思わないけど」
    「…わたしが、思いたくても?」
    「俺が、思いたくないんだ」

    背筋が緩んだ。
    息を吐き出して、頭を押さえて項垂れる。
    心得たように抱きしめられて、体温が欲しかったんだと回転の遅い頭で理解した。

    「…せんぱい、」
    「うん?」
    「少し、眠っても良いですか?」
    「構わないよ。疲れた?」
    「…そうかも」

    目を閉じた。
    髪に触れる手、すぐそばにある体温。
    絶対的な安心を見出して、今度こそわたしはほんの少しだけ睫毛を湿らせる。

    「…おやすみ」
    「おやすみなさい」

    世界の、どこかで。
    もしもわたしの祈りが、誰かを救う事があるとしたら。

    優しくてかなしいこの人を、救う事が出来たらいいのに。

    (人はかなしい生き物ですか)




    お題消化作。
    カレとカノジョ、の当初の姿に戻った感じですね。
    でもきっとバカみたいなノリも書くと思います(笑)

    祈りが人を救うのか。
    分からないけれど、救いになればいいとほんとに思います。
    そう思うこと自体、怠惰で傲慢なのかな、って気もしますけど。
    でも、救いであると思いたい、願いたい。

    最近は、そういう答えのないものばかり考えててちょっと脳みそ溶けそうです…!
    嫌な表現ですね!(ほんとにな)

    なんかもっとこう、ギャグっぽいのが書きたいですね。
    がんばろう。
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    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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