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※カレとカノジョ。
カラフルなマニキュアを塗りましょう。
嗅ぎ慣れない匂いが、つん、と鼻を刺した。
視線をすぐ隣に落とせば、靴紐を結ぶような恰好で彼女が座り込んで、何やら爪先をいじっている。
コットンで丁寧に爪先をぬぐっていく仕草を見て、ようやく匂いの正体に気付いた。
「マニキュア?」
「えぇ」
右と左、両足ともに塗っていたマニキュアを綺麗に落とす。
それから、両手も。
まっさらな色を取り戻した小さな爪は、薄くて酷く脆そうだ。
少し考えてから、彼女は棚からティッシュ箱くらいの大きさのケースを下ろしてくる。
興味本位で覗いてみると、そこにはキラキラと鮮やかな小瓶が詰め込まれていて。
蛍光灯の冷えた光にさえそれは煌めいて俺の目を射る。
「結構集めたね」
普段目にする手の爪には、いつも柔らかなピンク色が施されている。
派手な色をつけるわけにもいかないから、当然と言えば当然なのだけれど。
それでも、こんなにカラフルなマニキュアを持っていたことは少し驚きだ。
「そうですね…好きなんですよ、こういうの集めるの」
「使わないのに?」
「使ってますよー。足には結構鮮やかな色塗ってるんですよ、実は」
「へぇ…」
「外からじゃ見えないし、良いかなって」
言いながら彼女は銀色の爪やすりを取り出して、左手からゆっくりとそれをかけていく。
無防備な横顔。
俺に見つめられていることも気付いていないのか、彼女は真っ直ぐに自分の指先だけを見ている。
「いつもやるの?こういうこと」
「毎回ではない、かな…時間があったりとか、ちょっと気になったときだけですよ」
「へぇ…これかけるとどうなるの?」
「爪の表面が滑らかになって、マニキュアが綺麗に乗るようになるんです」
ほら、と言って差し出された左手。
確かに艶をもったそれは綺麗だけれど、右手とそんなに大きな差があるのか俺には分からない。
少なくとも見た目だけでは、どちらも綺麗に整えられているように見えるから。
「んー…」
「触ってみると分かりやすいですよ」
「あ、ほんとだ。こっちの方がつるつるしてる」
「でしょう?」
納得した俺を見て満足したのか、再び彼女は指先に目を落とした。
今度は右手。
慣れた手つきでやすりをかけて、ふっと息を吹きかける。
「足はどうしよっかなー…」
「かけないの?」
「面倒なんですよねぇ、手と違って」
苦笑する。
確かに膝を抱えた状態でやすりをかけるのは、ちょっと大変そうだ。
彼女は迷うように足をぶらぶらと動かす。
「貸して」
気まぐれに、その手から小さなやすりを奪った。
「先輩?」
「俺もやってみたい」
「良いですけど…」
男の俺が爪を綺麗に磨くのか。
そう思っているのだろう、きょとんと不思議そうに首を傾げる。
小さく笑ってそれに応えて、彼女の投げ出された足を、つかんでこちらに引き寄せた。
「わ、」
「マニキュア、倒さないでね」
白い足を膝にのせて。
さっき見ていた要領で、そっとやすりをかけていく。
「ちょ、先輩!」
「動かないでよ、慣れてないんだから」
「あの、何してるんですか?」
「やすりかけてるだけだよ?」
抵抗するように爪先がぴくりと動く。
それを押さえつけて、さっき彼女がやったように息を吹きかけた。
今度こそ逃亡の意志を持って力がこめられるが、当然それを許さないまま手を動かす。
「…なんか、変な感じ」
「そう?俺は結構楽しいんだけど」
「わたしは落ち着きません」
そりゃそうだ。
いくら恋人とは言え上司に足の爪にやすりを施されるのは、妙な気分になるのだろう。
思いきり顔をしかめて、彼女は自分の足を眺めている。
「そんな顔しないでよ」
「…気が済んだら返してくださいよ」
もう諦めたらしい。
右足が終わって目を向けると、渋々ではあるものの左足も差し出してくれる。
うん、その潔いところ、好きだよ。
「今日は何色塗るの?」
「んー…赤のラメ、にしようかな…苺キャンディみたいな色で、可愛いんですよ」
ケースから取り出したのは、なるほど確かに苺のキャンディのような透き通った赤。
マットな赤よりも可愛らしく、少女めいた印象の色だ。
単純に、おいしそう、とぼんやり思う。
「俺に塗らせてくれる?」
「…はみ出さないように気を付けてくださいね」
「善処します」
思いついて、彼女の足を持ち上げる。
そんなに身体は硬くないから、特に身体を反らすことなく彼女はそれに応じた。
白い足の甲。
恭しくそこにくちづけを落とすと、すぐさま「蹴りますよ」と冷静な声が飛んできた。
「…手厳しいなぁ、女王様」
「誰が女王ですか。塗るなら早く終わらせてくださいな、わたしまだ手も塗れてないんですから」
澄ましてそう言う君の顔。
手の中の赤いマニキュアの色。
そっぽを向いて隠すけど、髪の隙間から覗く耳はちゃんと色づいていて。
「…素直じゃないなぁ」
「誰のせいです?」
可愛くない、可愛い恋人。
蹴られるのを覚悟して、もう一度足にキスをした。
(甘いキャンディを隠し持つ)
最近足にマニキュアを塗ってます。
今日買ってきたばかりの青いマニキュアを塗りながら、「人にマニキュア塗ってもらうのってなんか耽美な感じがするよなぁ」と思って書いてみたっていう。
手は別になんともないんですが、足に塗ってもらうのはなんか恥ずかしい気がする…。
でも塗ってほしいです、自分じゃ上手くできないから(おい)
この後カレは怒ったカノジョにキラキラの可愛いピンクを塗られます。
ついでにラメもされます。
さらにトップコートで、みんなでお風呂入る時すごい恥ずかしいよねっていう。
なんだこいつら(笑)
※カレとカノジョ。
シリーズ最後はカレのお話。
俺の好きな人。
大人と子供が幾重にも折り重なるようにして存在する、不思議な人。
見た目はまだまだあどけなく、少女と言っても良いくらい。
そのくせ世界の見方は酷く達観している。
可愛くないことばかり言う、とてもとても可愛い女の子。
俺の好きな人。
子供扱いをすると怒って拗ねて、それが可愛いからやめられない。
まだたったの19歳、子供の顔をしていたっていいのに。
必死で「大人」の俺の背を追う、不器用な後輩。
俺の、好きな人。
何に対してもさしたる興味を抱こうと思わなかった俺が、気になって仕方のない人。
彼女が何を見て何を思うのか、俺は知りたくて仕方無い。
意外に子供っぽいんですね、そう言ってあの子は笑うけど。
俺ばっかりがそわそわしているなんて、ずるくない?
だから君の、その丁寧に作り込まれた仮面を壊してやりたいと思うのは、意地が悪いのかな。
もちろん澄まし顔だって、上品に微笑む顔だって好きだけど。
たまには本気で怒って泣いて、そうして笑う君が見たい。
「…ねぇ、俺の前で泣いてみる気ない?」
「目薬使っても良いですか?」
可愛くないなぁ、と呟いて。
だけど眼差しには砂糖をキロ単位で放り込んで。
そしたら君は赤くなるから。
意地が悪いと言われるのも、君にだったら悪くない。
(可愛い俺の女の子)
予想外にカレが一番甘くなりました、気持ち悪いです祈月ですこんばんは。
うっわぁ…うっわぁ(引)
カレが甘いとかだいぶ怖い、気がする。
カノジョは一体、こいつのどこに惚れたんでしょう(えー)
でも「可愛くない」って言いながら内心ではものすっごく可愛い、とか思ってそう。
素直じゃないですね全く。
そして何気なくカレを書きましたが、実は今日は彼の誕生日でした。
っていうか、蓮の。
忘れてたよ…なにも用意してねぇ。
気が向いたら何か書きます。
そう言って何もできない気がする。
※カレとカノジョ。
境界線の上で恋をする。
わたしの好きな人。
…たぶん、色んな意味で大人、っていうのが一番正しい。
わたしには追いつけない年齢差。
さらりとスマートにこなしては、優雅に微笑むのだ。
わたしの好きな人。
だけどそのくせ妙に子供っぽくて、ころころと表情を変えては興味のあるものに一直線。
そうして上手に隠したつもりの子供のわたしすら巻き込むのだ。
いくら取り澄まして振る舞ったところで、この人の前では意味すらなく。
わたしは何時だって、大人びた顔をすればいいのかそれとも無邪気な子供の顔を見せれば良いのか分からなくなる。
わたしの好きな、ひと。
それはとても怖い人。
たぶんそれは、好きだから。
不安定な足場をくるくる揺らす。
わたしは臆病で、大人ぶってるけどまだまだ子供で。
弱くて脆くて、本当は泣き虫で。
あの人はそれを、みんな赦してしまうから。
だから怖い、だから、酷い。
けれど、それはわたしを救うのだ。
何でもない顔をして、当たり前の顔をして。
「大人と子供、」
境界線は、明確なくせに酷く淡い。
飛び越えてはまた潜って、今わたしとあの人はどちらにいるのだろう。
だけど、きっと。
そのどちらに居たとしても、わたしがあの人を敬愛していることに変わりはないのだ。
(ボーダー越しにキス)
ここまできたら他の二人でもやるべきじゃね?ってことでカノジョ登場。
前二人がさんざん病んでくれたので、比較的カノジョは明るいですね。
でも「カレとカノジョ」の初期の話を読んでると、こいつもたいがい歪んでるっていう。
すみませんヤンデレとか大好物なんですすみません。
多分わたしと同じ高校だった方は文集読むとそれがありありと分かるページがあります(笑)
好きな人は怖いものです。
だって、好きだから。
好きでも何でもない人には、別に恐怖なんて抱かない。
うん、まぁそんな話です(何)
※カレとカノジョ。
ぱちん、と音を立てて開くのは透き通った小さなケース。
中にはいくつかの錠剤、その中から彼女は器用に数個を選び出して掌にのせた。
ペットボトルを傾けて、水でそれを胃に流し込むさまを、なんとなく眼で追った。
「…あれだよね」
「はい?」
意外なことに、視線に疎い彼女。
呼ばれてやっと気づいたらしく、無防備に首をかしげて俺を見下ろす。
ちゃぷ、とペットボトルの水が揺れた。
「サプリの摂りかたとして、間違ってるよね君の飲み方は…」
「あー…」
彼女がいま胃に落としたのは、所謂サプリメントというやつで。
ビタミン、鉄、カルシウム。
だけど彼女はそれらを常用はしていないという。
「そういうのって、ある程度続けて飲まなきゃいけないんじゃないっけ」
「そうなんですけどねぇ…」
不調を感じた時にそれに合わせてサプリを取る。
間違ってはいないのかもしれないけれど、正しくもない気がする。
というか、そもそもあんまりサプリには頼り過ぎない方が良い、というのはよく聞く話だ。
「今のは?」
「カルシウムです」
苛々するのはカルシウムが足りないから。
気の進まない仕事の前後や、トラブルのあと。
彼女はまるで仕事の延長のような顔をして、白いそれを飲み込む。
「なんか、飲むと大丈夫な気がするんですよねぇ」
「過信はよくないよ?」
「うーん、実際の効果を信じてるっていうんじゃなくて。何て言うんでしょう、飲むとその行為自体に安心するっていうのかな。余裕が出来るって言うか…」
言いたいことは、分からないでもないのだけれど。
ある意味で子供じみたおましないのようですらある、その行為。
今から彼女は俺のさらに上の階級に位置する誰かのところに行くらしい。
何があったのかは知らないけれど、彼女はそいつが大嫌いだ。
そろそろ行かなくちゃいけない時間のハズなのに、君は幼げな横顔をさらして俯く。
「…気が進まない?」
「…」
沈黙は肯定。
俺は苦笑して彼女の髪に指先を通す。
青い花のバレッタが、蛍光灯の光を返して薄く光った。
「戻ってきたら、美味しいミルクティー御馳走してあげるからさ」
「…先輩が淹れてくれたやつ?」
「もちろん」
俺の淹れる紅茶が好きだと君は笑う。
それを嬉しく思うのは当然で、だから俺も笑うんだ。
「理不尽なこと言われたなら、俺が呪っとくし」
「さらっと怖いこと言いますね」
「だけど、サプリなんかよりはずっと君の精神に好影響だと思わない?」
そんな薄っぺらで、お手軽なサプリメントよりも。
ずっと君を笑わせてあげる自信があるよ。
「…そう、ですね」
指先で弾いたケース、そうして彼女は苦笑する。
それでもさっきよりは、うんと晴れやかな表情で。
ペットボトルを机に置くと、まっすぐに顎を上げて胸を張る。
「ん、元気出た?」
「…もー、仕方ない、な」
こうして、君が。
丁寧に見つめようとすることは、間違いなく美徳なのだと。
いつか君がその価値に気付いた時に、告げてやろうと思っている。
「じゃあ、頑張ってきましょうか、ね」
「良い子だ。行っておいで」
柔らかにそれでも強かに煌めく君の眼に。
出来ることなら讃辞を捧げたいと。
いつだって思っていることは、まだ言ってやらないよ。
(上司と恋人の隙間)
サプリとかって飲むの忘れちゃうよね、って話です(違うよ)
飲まないよりはマシだろうということでいくつか保持しているのですが、気付くと飲み忘れます。
しかもわたしはカノジョみたいに持ち歩かないので、なおさら忘れます。
もうわたしクオリティだよねっていう←
カレとカノジョはこうやって中途半端な立ち位置を繰り返していればいいと思っています。