※仮想世界。
でも出てくるのは蓮と風姫のみ。
夏休み直前のお二人。
「あついね…」
「うん…」
燦々と降り注ぐ光、熱を放つアスファルト。
気を抜いたら倒れそうなくらい、それはもうとにかく暑いのだ。
鼓膜を突き刺す蝉の声が憎らしい、と風姫は雲ひとつない空を睨む。
「やっばい…あたしこれ溶けるかも…」
「あぁ…風姫は雪女だもんね…」
「見た目はね…」
真夏に不釣り合いな白い肌。
熱吸収は最高な黒髪。
けれどそれは彼だって同じことだ。
夏休みを目前に控えて、テンションも気温も急上昇中の時期だというのに、彼は相変わらず黒いベストを脱ごうとしない。
不健康そうな横顔。
きっと昨日は夜更かしをしたに違いない、と彼女は思う。
「…プール行きたいな」
呟いた声に、蓮が少しだけ肩を揺らした。
「…やだよ」
「なんで。だって暑いじゃない」
「…そりゃ、暑いけど」
「大丈夫だってー、蓮がどんなに華奢でも青くんたち気にしないって」
「……僕の恋人はどうしてたまに傷口を抉る発言をするのかな」
あ、やっぱり気にしてたのそこなんだ、と風姫は笑う。
年頃の男の子にしてはちょっと不憫になるくらい、蓮は細身だ。
全体的に小柄で華奢で、メイクでもしたら完璧に女の子に見えるんじゃなかろうか、と思っているのだが。
「どうせ僕は男らしくないですよーうだ」
「ちょっとー、拗ねないでー?」
当然のことながら本人は不服らしく、こういう話題が出るたびに不貞腐れる。
それが可愛くてついからかいすぎてしまうのは、内緒だ。
子供のように唇を尖らせる蓮を見て、風姫はくすくすと笑う。
「…でもね風姫?」
「うん?」
声の温度が冷えたな、と思ったのは一瞬。
顔を上げた風姫に、蓮はにぃ、と意地悪く笑う。
「青たちを誘う、ってことはいつものメンバーが集合な訳だよね?」
「…う、うん。そうね」
「……逃げ帰りたくなるのは、君なんじゃないの」
「う、」
決定打は言わない。
けれどその一言で、思い至る点が彼女にはあるわけで。
真っ白なセーラー服の下。
直線的な制服がある程度隠しているとはいえ、風姫は実際蓮を笑えないくらいには華奢で細身だ。
…それは、まぁ、つまり。
当然のことながら、胸囲にも現れるわけで。
……髪が短かったらそれこそ男の子に間違えられてしまうくらいに、薄っぺらい身体を、している、わけで。
「う、うわぁん蓮のばか――っ!!」
叫んだ彼女に、彼はけたけたと笑う。
「んー?僕は何も言ってないけど?」
「嫌いだ――っばかばか最低!」
「さっきの仕返しだよ」
えぐ、と涙目になった風姫をにこやかに見つめ返して。
蓮は優雅に首を傾げる。
「で、どうするの?」
行くのか、行かないのか。
実際彼はどちらでも構わないのだろう、ただ彼女をからかいたかっただけで。
ぐ、と一瞬言葉に詰まって、それでも誘惑には抗えず。
風姫はきっと蓮を睨んで、半ば叫ぶように答えを返す。
「…い、行く!!」
「はいはい、了解しましたお姫様」
日は高く、夏はまだ入り口で。
何もかもそう、スタートすらしていないのだ。
(夏休みカウントダウン!)
お題消化で夏休みの宿題第一弾、と称してとりあえずプールから始めてみようかな、と。
昨日ホントは一回あげたんですが、うっかり消してしまったのでもっかい。
時々風姫がどうにも単純なお馬鹿さんになりがちですが、頭は良いんですよ、と主張してみる。
相手の為の我儘が言える子です。
ちゃんと空気も読めるんだ!!
あと蓮ももうちょっと大人びてます。
デリカシーもあります。
女の子に向かって貧乳なんて言いませんよえぇ(笑)
この後風姫は蒼兄さんに泣きつきに行く、というエピソードがあったりなかったり。
なにはともあれ、夏休みが始まるよ!なお話でした。
まだまだいくよぉ!←
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