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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    ロンドン橋はどうなった?

    ※仮想世界にて。
    女装ネタとか好き勝手やっています、苦手な方はどうぞご注意を。




    「…なんか…ごめん、ひーちゃん…」
    「いえ…わたしの方こそ申し訳ない…」

    後悔先に立たず。
    藍と氷雨はその格言を身を以て理解したのだった。



    原因、というかその理由。
    みんなで有沢邸でお昼を御馳走になった。
    さすがにどれも料理はおいしくて、とても満足だったのだが。

    「「…」」

    藍と、氷雨。
    二人の皿には、嫌いなものがそれはもう丁寧に残されていた。
    互いの皿を横目で見て、咎めるように言う。

    「…食べなよ」
    「藍さんこそ」

    藍の目の前には、手つかずのピーチ・メルバ。
    隣の氷雨の皿の上には、付け合わせのグラッセ。
    食べられなければ言って下げてもらえばいいのだが、なんとなく言葉の応酬が続く。

    「…ひーちゃんはホントに偏食家だよね」
    「煩いですよ。藍さんこそ、甘いものが食べられないとバレンタインとか困りません?」
    「良いんだよ、おれは。貰っても食べないし。ひーちゃんこそ、まずいんじゃないの?社会人なんだし、一応」
    「一応ってなんですか?童顔とでもおっしゃりたいんですか」
    「そこまで言ってないよ。…それとも、自覚があった?」

    にこりと。
    互いに視線を交わして、にこやかに微笑み合う。
    ただし、その目は少しも笑っていない。

    「…召し上ったらどうです?せっかくのピーチ・メルバ、溶けてしまいますよ」
    「ひーちゃんもね。その芸術的な残し方、ある意味で称賛するけれど」

    にこにこ、にっこり。
    綺麗な顔を笑みで彩って、そのくせ声音は氷点下。
    よくもまぁそんなに器用な事が出来るものだと、斜向かいの青は不思議に思わずにはいられない。
    口を挟んだ途端に攻撃されるのは目に見えているので、もちろん突っ込んだりはしないけれど。

    「…別に、食べようと思えばば食べられますよ。そんな、子供じゃないんですから」
    「おれだって、食べられるよ。好んで食べないってだけで、嫌いとかじゃないし」

    どういうわけか、この二人は互いが絡むとどこか子供っぽくなるようだ。
    普段酷く大人びた横顔で世界を眺めている彼らにとって、それはもしかしたら良いことなのかもしれない。
    氷雨はフォークでグラッセを転がし、藍はピーチ・メルバを揺らす。

    「…本当ですよ?」
    「俺だって本当だよ」
    「じゃあ食べたら如何ですか」
    「ひーちゃんだって、食べたら?」

    もう一度、視線を交わして。
    澄ました顔を繕って、氷雨はグラッセにフォークを刺した。
    あとは口に入れるだけ、けれど一瞬躊躇うように間をおいた彼女を見て、藍が微笑む。

    「…ひーちゃん、食べないの?」
    「えぇ、良いですよ食べますよ、藍さんこそ、早くお食べなさいな」
    「分かってるよ、食べられなかったら罰ゲームでもなんでも持ってきなよ」

    売り言葉に買い言葉。
    周りの面々が面白そうに見守っているのにも気づかず、二人はさらに言い合いを過熱させていく。

    「あぁじゃあこうします?わたしがこれ食べ切れたら、馬鹿にしたお詫びってことで藍さん女装してくださいよ」
    「いーよ分かったよ、じゃあおれがこれ完食したらひーちゃん猫耳メイド着てよ!?」
    「なんでメイドなんですか!だったらふりふりロリータ服着せて差し上げます!」
    「ならひーちゃんはその恰好でゆーくんに『にゃーん』って言うんだよ!?もちろんポーズ付きでねっ」
    「分かりましたよやってあげようじゃありませんか!女に二言はありませんから!」
    「それはこっちの台詞だよ!」

    負けず嫌いの意地っ張り。
    普段は勝負事になんて興味がないくせに、どうしてこんなところで白熱してしまうのか。
    苦笑する兄弟や友人たちの前、二人はそう叫んでそれは勝気な笑みを浮かべた。
    そして次の瞬間、意を決したように二人同時に手をつける。

    無理やり流し込むようなはしたない真似は、絶対にしない。
    あくまでも優雅に、丁寧に。
    それこそきちんと味わって、グラッセとピーチ・メルバを胃に落としていく。

    「「…ごちそう、さまでした」」

    食器を置いたのはほぼ同時。
    ナプキンで口元を押さえ、軽く頭を下げた。
    勝利を確信したのはほんの一瞬、二人はすぐに先ほどの会話を反芻して、あれ?と首をかしげた。

    頭の中で巻き戻して。
    何かが可笑しいことに気付く。

    「「…ん?」」

    ちょっと待て。
    罰ゲームの条件は、何だった?

    「…わたしが食べ切れたら、藍さんが女装で?」
    「おれが食べきったら、ひーちゃんが猫耳メイド?」
    「「…あ、れ?」」

    食べきれなかったら罰ゲーム、ではなくて。
    食べ切れたら、罰ゲーム。
    これって結局――お互いが食べきってしまえば、どっちにも、利点はない。

    「「…しまった」」

    考えなしに突っ走って、可笑しなことを口走った。
    即座に代替案を出そうと口を開きかけるが、それより先ににこやかに手を上げたのは風姫だ。
    …その手には、たいそう可愛らしいヘッドドレスを持って。

    「はい、藍くん!」

    ふりふり、ひらひら。
    差し出されたのは、可憐なレースが叩きつけられた、オフホワイトのヘッドドレス。

    「…あぁ…うん…」
    「男に二言はない、そうよね?」

    確かに、可愛い。
    ただしそれを、自分が付けるのでなければと藍は遠い目をした。

    「…姫君、いったいそれどこから出したの…」
    「あ、ねぇねぇスカート小花柄とチェックとどっちが良い?」
    「えー、藍にはチェックの方が良いんじゃないの」
    「お願いだから蓮君ナチュラルにアドバイスとかしないでよ…」

    氷雨と自分だけだったら、すぐにもっと楽な代替案を出せたのに。
    風姫の笑顔には逆らえず、力ない手で藍はヘッドドレスを受け取った。
    人生は諦めが肝心だ、もう絶対に逃げられやしないことを悟った目をして。
    ゆるゆると傍らに目をやると、同じく絶望したような表情で氷雨がメイド服を受け取っている。

    「ねぇ蒼さんこれどっから…」
    「気にするなお嬢」
    「大丈夫だろ、春日なら似合うって」
    「ちっともフォローになってない慰めをありがとう、青さん」

    別にメイド服に偏見があるわけではないのだ。
    あの清楚でクラシカルな装いは、見ている分には確かに可愛いと思う。
    ただ、それはあくまでも見ている限りで在って、一応常識的な判断基準を持っていると思いたい氷雨としては猫耳メイドはちょっと恥ずかしすぎる。

    ヒートアップするとたまに暴走してしまうから、注意が必要だって思ってたのに。
    可笑しな方向に捻じ曲げた条件を出してしまった自分を、心から恨んだ。

    「…さて、とっ」

    風姫がにこりと微笑む。
    花のような、可愛らしい表情。
    けれどそれを見て、氷雨と藍の背筋は思い切り冷えた。

    「…手加減なんて、してあげると思ったら大間違いよ?」

    その言葉に深くふかく項垂れる二人が居たとかいなかったとか。

    (口は災いの角、言うでしょう?)




    第二回仮想現実ミーティングにて椎さんと話してたネタです。
    後半戦は気が向いたら書きます(笑)
    つまりは女装&メイドコスしてる最中のお話。

    ぜったい可愛いと思います、藍も氷雨も。
    きっと椎さんがイラスト描いてくれるから、みなさん要チェックですよっ☆

    くだらないネタにお付き合いいただきありがとうございました!(笑)
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    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

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