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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    春色ワルツ。

    ※仮想世界にて。
    次男と蓮。


    視界をかすめる、鮮やかなピンク色。
    耳を飾る、いくつものピアス。
    わざと荒くした口調、眉間に寄せたしわ。

    それらは人の目を引き、けれど彼らの心を遠ざける。
    距離を望んだのは紛れもなく自分で、慣れ合うのも寄り添うのも怖いから突き放したんだ。

    派手なピンク色の髪は、俺が造った壁だった。

    触れられるのは、怖い。
    ぬくもりはいつか冷めるし、形をもったものは壊れる。
    だったら最初から、近づかなければ良い。

    そう、思っていたのだけれど。



    「…」

    先刻から、じっと視線を注がれていることには気付いていた。
    真っ直ぐなそれは、不躾ですらある。
    本当は、もっとそつのない目の向け方だって彼には余裕でできるだろうにと思う。

    「…んだよ」

    耐えきれず顔をあげた。
    すると、蓮はにこりと微笑む。
    青の苦手な、綺麗な笑顔。
    すぐに顔をそむけて、吐き捨てるように言う。

    「用がないなら見るなよ」

    別に、本心からこんなことを言いたいわけじゃない。
    ただ、慣れていないのだ。
    傍に他人が居ること自体に。
    そしてこんな風に、穏やかに笑みを向けられることなんて、今までなかったから。

    あんまりにも不器用で上手くいかなくて、少しだけ苦しくなる。

    「んー…用なら、あるけど」
    「…なんだよ」

    蓮の声に、もう一度、おそるおそる顔をあげた。
    青の視線が自分に向くのを待っていたように蓮は笑うと、その手を真っ直ぐに青に伸ばした。

    「ちょ、蓮!?」

    わし、わしわし。
    撫でるというにはずいぶんと乱暴な手つきで、髪をかき乱された。
    鮮やかなピンク色の髪が、くしゃくしゃにほつれる。

    「おま、何する…っ」
    「…ねぇ、春は好き?」

    そうして投げかけられたのは、唐突な問い。
    思わず蓮の瞳を見つめると、何が可笑しいのかやっぱり笑みで返された。

    青の瞳と。
    ぶつかったのは、蓮の黒い瞳。
    奥でほんの一瞬、血のような赤色が翻ったような気がする。

    「僕は春が好きだよ。青は?春は好き?」
    「…まぁ、それなりに」

    繰り返されて、ちいさく頷いた。
    甘い春は、嫌いではない。
    すると蓮はもう一度、今度はゆるく髪を撫でた。

    「春は良いよね。うつくしいし、優しい。春があるから、夏も冬も秋も綺麗なんだと思うよ」

    凍てつく冬を、終わらせる軽やかな足音。
    引き連れられた命が燃えて、世界は彩られて。
    艶やかに勢いを纏って、すべてが生まれ変わる春。

    「僕は春が好きだよ」

    繰り返して、言い聞かせるように。
    そしてさらに、彼は丁寧に告げるのだ。

    「――君の髪は、春の色だね」

    遠ざけた距離を、容易く飛び越えて。
    掴んだ手は、それこそ春のようで。

    「…っ」

    はじめてだった、そんなことを言われたのは。
    世界にだって赦されたような気がして、思わず青は言葉を失う。

    なんで、どうしてそんな。
    当り前の顔をして、嗚呼。

    「悪いけど、僕はそんなんじゃ君を諦めてあげないよ」

    そう言って離れた体温。
    俯いて唇を噛んで、青は蓮が部屋を出ていくのを耳だけで追う。

    しまった扉、それを確認してようやく呼吸を取り戻した。

    「…ずりぃ」

    呟いた声は、それでも確かに春の彩りに満ちていた。




    蓮の「君の髪は――」を言わせたいがためのネタ(笑)
    ぶきっちょな青が好きです。

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    祈月 凜。
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    性別:
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    1990/10/10
    職業:
    学生。
    趣味:
    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

    HPは常に赤ラインかもしれない今日この頃。
    最近はいまいちAPにも自信がありません。
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