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書きたいものを、書きたいときに、書きたいだけ。お立ち寄りの際は御足下にご注意くださいませ。 はじめましての方は『はじめに』をご一読ください。
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    氷上の喜劇。

    ※仮想世界にて。
    でも「神様も知らないような世界を見つめるあの人の横顔」から繋がっています。
    ちょっと真面目に出会ってみようか、な人々です。
    改訂版。



    遠くの方で、銃声が聞こえた気がした。
    猟犬のような動きで、蓮と風姫は顔を上げる。

    「…!?」
    「なに、いまの…」

    否、銃声のような音、という方が正しいか。
    自分たちの存在の方がよほど現実味を欠いているというのに、彼らにとってそれはドラマや映画の中でしか聞いたことのない、現実感のない音だから。
    けれど徒に首筋を駆け上がる寒気が、恐怖と焦燥を誘っていく。

    「…」

    向かってくる足音は、三つ。
    扉を開けるのは、天使か悪魔か。
    それでも縋るほかないのだろう、そう思うと自然笑みがこぼれた。

    無意識に呼吸を数えて、足音が近づいてくるのを待つ。
    がこん、と一度だけ鈍い音がして、その重たげな扉がゆっくりと開いた。

    「!?」
    「あ、居たよ兄さん」

    扉の向こう。
    ひょい、と顔を覗かせたのは――少年。
    しかも、自分たちとさほど年の変わらない、まだ幼げな風貌をしている。

    思わず警戒心を解きそうになるが、よくよく考えてみたらこんなところに一般人が入れるわけがないのだ。
    思い至って、すぐに眉根を寄せる。

    「だ、れ…?」
    「あぁ、こいつらか」
    「なんだ、まだガキじゃねぇか」

    続けて顔を出したのは、長い黒髪がうつくしい青年。
    それから、鮮やかなピンク色の髪の少年だ。
    誰に警戒をしていいのかさっぱり分からず、蓮と風姫は顔を見合わせる。

    一体何が起こっているのか。
    説明してくれる人物がいるなら、是非ともお願いしたいところだ。
    青年は、気遣うように蓮たちを見る。

    「怪我はないか」
    「え、えぇ…」
    「…誰なの?貴方たちは」

    蓮の思い切り不審そうな声に、三人はくすりと笑った。
    どうしてここで笑えるのかが、蓮には理解が出来ない。
    信用に値する人物なのかも判断がつかず、ただ己の腕を強く抱いた。

    「…いや、驚かせて悪かったな。自分たちは、君ら二人を助けにきた、とでも言えばいいのかな」
    「…助けに、きた?」

    蓮はますます眉を寄せる。
    彼を助けに来るというのならば、本来であれば彼の家のSP(こう見えても富豪の大事な一人息子なのだ)が真っ先に駆け付けるだろう。
    或いは、父のツテで軍部の誰かか。
    幾人か思い浮かぶ顔はあるものの、そのどれとも三人は結びつかない。

    「…その割には、知らない顔だけど」

    異分子が紛れ込んだ時に、すぐに判断がつくように。
    蓮は自分の周りの人間のデータを、ほぼ完璧に頭に入れてある。
    何度検索しても出てこないのだ、彼らは蓮の知らない人間と判断して良いだろう。

    青年は、穏やかに微笑んでみせる。

    「さすが、有沢の御曹司様だ。ご自分の取り巻きを把握しておられるとは」
    「馬鹿にしているの?」
    「いや、褒めてるさ」
    「まぁ、実際お前ら助けに来たって言うと語弊はあるけどな」

    引き継いだのは、ピンク色の髪の彼。
    鮮やかに目を奪う春の色だと、そんな事を思える状況ではないのにそう考えた。

    彼はつかつかと蓮と風姫に歩み寄ると、抵抗する間も与えず腕を取る。
    最初から理解しているように、袖口をまくりあげた。
    そこに在るのは、彼らの力を封じている奇妙な文字。

    「なに、するの?」
    「黙ってろ」

    そう言って、彼は小さなプラスチックのボトルをポケットから取り出した。
    それを逆さにして、不可解な文字が描かれた腕に注ぐ。

    「…なに、これ?」
    「どうなってるの…」

    すると、こすったわけでもないのに、見る間に文字が消えていく。
    先ほどあれだけ爪を立てて掻き毟って、それでも掠れすらしなかった文字が。

    一本ボトルを開けるころには、二人の腕には文字の片鱗すらもう見えなくなっていた。
    驚きを以て顔を上げるが、彼は何も答えない。

    「…別にね、二人を助けに来たわけじゃないんだ」

    この場にそぐわないくらいに明るく言ったのは、末っ子と思しき少年。
    小型のノートパソコンを抱えて、にこりと笑う。
    硬質なガラスの向こう、茶色の瞳がすぅ、と細くなる。

    「おれたちの仕事はね、君たち二人を誘拐した人間の――抹殺」

    …ふ、と。
    血の匂いが香ったのは、気のせいだろうか。
    目眩すら覚えて、風姫は一度強く瞬きをする。
    それに気付いたのか、かれは ひらひら手を振った。

    「だからまぁ、君たちを助けるのは副産物?大丈夫だよー、危害は加えないから」
    「任務にないからな。安心して良い」
    「…そう言われても、ね」

    蓮はちいさく笑った。
    言われたところで、そうそう簡単に警戒心が解けるわけではない。

    知らぬ間に閉じ込められて、力すらも封じられて。
    そこに突然現れた人間を信用していいかどうか、瞬時に判断がつくものだろうか。
    ヘタを打てば、殺されるかもしれない。
    そう思わせるような何かが、彼らにはあるような気がした。

    そう、今だって。
    意識せず後ろに引いた足すら見抜かれて、惑う。

    「…(あぁ、だけど)」

    腕の文字を消したところを見ると、彼らは自分たちの『力』のことを知っているのだろう。
    神という名の化け物に愛されたが故の、異形の力。
    封じてしまえば自分たちはただの子供だ、だけどそれを敢えて解いたのだから。
    そこに意味だって、隠れているのかもしれないと。

    信用すべきか、否か。
    知らず噛んだ唇、じわりと血の味がにじむ。

    「…分かった」

    けれど、蓮よりも先に判断を下したのは風姫だった。
    彼女はふわりと両手を広げる。
    見つめた瞳は穏やかですらあって、その事は少しだけ兄弟たちをも驚かせた。

    「その口調だと、あたしたちのこと知ってるんでしょう?」

    彼女が指すのは化け物の、それ。
    凶器もなく、一瞬で世界を壊せる力のことだ。
    真っ先にあの文字を消したのだ、知らないと言えば嘘だろう。
    知っていてそれを解くというならば、それでもう十分なのではないだろうか?

    あっさりと腹をくくった彼女を、少年が笑う。

    「おねーさん、潔いね?そういうのおれ、好きだよ」
    「ふふ、ありがとう。ねぇ、それで知ってるの?」
    「ま、調べてはある…ってとこかな」
    「すごいね、最近のパソコンってそんなことも調べられちゃうの?」
    「おれのは特別なの」

    気の抜けたような会話に、蓮もひとつ息をついて。
    降参でもするように、軽く手をあげた。

    無理やり理論に感情を追いつかせた感じは、否めないけれど。
    風の女王が審判を委ねるというのなら、蓮にだって異論はない。
    実際彼らが来てくれなければ、自分たちの力だってこの身には帰ってこなかったのだろうから。

    悪魔だろうと天使だろうと、縋るよりほかにないのなら。
    その手を取ることは、間違いではないのだと思う。

    「とりあえず、お礼を言うよ」
    「副産物だけどな」
    「それでも良いよ」

    頑なに彼らを助けたわけではないのだと強調する、ピンクの髪の少年。
    それを聞いたらなんとなく頬が緩んで、ようやく蓮も笑う。

    「…ありがと、助かったよ」

    自分たちこそが異端なのだ、どうして彼らを責められよう?
    微笑んだ先に向けられた笑み。
    そこに温度が宿っていないなどとは、言わせるつもりもない。

    「…とりあえず、此処から出ないか」

    空気がほころんだことを見て取ってか。
    長男らしき青年が言う。
    その言葉に頷いて、おおよその出口の方向を組み立てた時だった。

    「!」

    カツン、と響いた足音。
    それは真っ直ぐにこちらに向かってくる。

    「…君たちの、仲間?」
    「まさか。おれたちは三人だけだよ」

    瞬時に緊張の糸を張る。
    各々の武器を確認した、その時だ。

    「手を上げてください、軍部です」

    ――かつり、と。
    一際高い靴音を立てて、『彼ら』が舞台に加わった。





    とりあえず前半戦。
    神様の子供と三兄弟の邂逅です。

    以前書いた「歯車、ひとつ」とはまったく関係ないです。
    ほんと読む人に優しくないサイトですみません…!
    しかも後半戦書いたらまた続かないっていうね。

    …時計塔の金魚姫。は書きたいものを書きたいだけ書くサイトです(開き直った!)

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    1990/10/10
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    物書き。
    自己紹介:
    動物に例えたらアルマジロ。
    答えは自分の中にしかないと思い込んでる夢見がちリアリストです。
    前向きにネガティブで基本的に自虐趣味。

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