※仮想世界より、お花見の後の話。
風邪ひき次男。
「けほっ…げほげほっ」
「あーもう、青にーさんってほーんと期待を裏切らないよねー」
「るせぇ…っごほごほ!」
「良いから大人しく寝てろ」
昨日の花見で、酔って薄着のままうとうとしていたのが悪かったらしい。
お約束に風邪を引いた青は、弟に冷えぴたを貼られ兄にベッドに押し込まれ。
つまるところ、だいぶ手荒い看病を受けていた。
「でもまぁ、これでバカじゃないって証明されて良かったんじゃないの?」
「藍…てめ、治ったら覚えてろ…?」
「うん、忘れた!」
それはもう爽やかに笑う弟。
一回殴ってやろうかとも思ったが、今の彼じゃ多分かすりもしないだろう。
ぐっと怒りを飲み込んで、不貞腐れたように青はふたりに背を向ける。
「つか、なんで俺だけ…?」
花見の席で彼と同じようにほとんど眠りかけていた氷雨は特に体調も崩さず。
それどころか、つい先ほどまで見舞いに来ていたのだから不公平だ。
彼女いわく『残念ながらわたしの恋人は過保護なので』とのことだ。
『膝かけとか、マフラーとか。持って行けって煩いんですもん。結局上着も借りてたし』
『大事に…されてるんじゃ、ない…か?』
『青さん、その微妙な顔やめて頂けません?すごく切ないです』
『えー、と…』
『…まぁ、良いですけどね』
告げる時の複雑そうな氷雨の表情がものすごく気になったのだが、突っ込める雰囲気ではなかったので。
疑問は疑問のまま、青はなんとなく不服そうな顔を隠せない。
風邪をひくと、感覚が鈍るから嫌なのだ。
一瞬の判断力が生死を分けるこの世界で、神経を研ぎ澄ませておけないのは痛手だ。
自分の身すらも守れないかもしれない不安と、焦燥。
此処は安全だと分かっているのに、すこしだけ怖くなる。
けれど、彼の心を暴くのはいつだってこの二人なのだ。
「…とりあえず、薬飲んだら少し眠れ。無理して起きてると長引くぞ」
「そうだよ、にーさん。大丈夫、なにかあったらすぐ知らせてあげるから」
「…分かってるよ、」
兄弟だから。
それは単純明快で、何より深い理由。
やっと落ち着いて呼吸を吐きだした青に、藍が華やかに笑う。
「それに、あんまりぐずってると…」
強制的に、オトす。
言外にそう告げられ、青は思わず身震いした。
…今の寒気は、熱のせいじゃない。
「あははー、冗談だって!」
「…お前が言うと冗談に聞こえないからやめてくれ」
「えー、そう?」
「藍、そろそろ寝かせてやれ」
さすがに可哀想になったらしい。
苦笑した蒼が、藍を促す。
「おやすみ、青」
「…オヤスミ」
「良い夢見れると良いねー」
「お前が邪魔しなければな」
軽い足音と、ささやかな温度が離れていく感覚。
蒼が藍の背を押して部屋を出ていく音を聞きながら、青はそっと目を閉じた。
とりあえず前半戦…?後半は後日書きます。
一応お花見の続き物のはず。
氷雨さんは優が上着とかマフラーで完全防備してたから無事だったんです。
身体弱い人ってそれなりに準備していくから意外に大丈夫だよね、って話(そうだっけ?)
最近は気温がぐらぐらしていますので、皆様体調管理はしっかりとね!
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